「アルギニンを飲めば、もっと筋肉がつく?」
「最近、元気が出ないけどアルギニンは試す価値ある?」
SNSや広告で目にするアルギニン。試してみたいけど、実際の効果や副作用がわからず、不安に感じていませんか。
この記事では、そんなあなたの疑問や不安をすべて解消します。
この記事のまとめ
- アルギニン単体での筋トレ効果は小さめで、優先度は低い。
- 軽度のEDなど、一部の血流改善には役立つ可能性もある。
- 副作用として胃腸症状や頭痛、低血圧のリスクがあり、薬との飲み合わせやヘルペス持ちの方は特に注意が必要。
- 試すなら1回1〜2gを分割し、運動30〜60分前などに少量から始めましょう。
- 最も重要なのは、食事・トレーニング・睡眠の土台。
この記事は、こんな人におすすめです
- ✅ 筋トレ前にアルギニンを飲むべきか、科学的な答えが知りたい方
- ✅ 元気や活力のためにサプリを検討しているが、安全性が心配な方
- ✅ ヘルペスの既往があり、アルギニンを飲んでいいか不安な方
- ✅ シトルリンとの違いや、どちらを選ぶべきか知りたい方
- ✅ 副作用や正しい飲み方をしっかり理解してから始めたい方
第1章:そもそもアルギニンとは?体の基本を支えるアミノ酸
まずは基本から解説します。アルギニンは、私たちの体の中で3つの重要な働きをしています。
- めぐりを良くする:体内で「一酸化窒素(NO)」という物質に変わり、血管を広げて血流をサポートします[2]。
- 体をクリーンに保つ:体内で発生する有毒なアンモニアを分解する手助けをします[1, 3]。
- 体の材料になる:筋肉や皮膚、髪などを作るタンパク質の一部です[1]。
普段は体内で作られます。しかし、大きな怪我をした時など、体に強いストレスがかかると不足しがちになります。そのため、「条件付き必須アミノ酸」と呼ばれています。
第2章:アルギニンの効果は本当?期待と科学的な結論
運動パフォーマンスに関するサプリメントを検討する前に、知っておくべき大原則があります。多くの研究は小規模・短期間などの限界があり、効果は個人の条件で大きく変動します。何よりも、バランスの取れた食事と十分な水分補給が全ての基本です。サプリメントはそれを補うもの、というのが専門機関の一致した見解です[16]。
2-1. 筋トレには効く?→結論:単体では効果は小さく、優先度は低め
トレーニーなら一番気になるこの効果でしょう。しかし結論から言うと、アルギニン単体のサプリで筋肉が著しく増えるという期待はしない方が良いです。
- 期待される理屈:成長ホルモンを増やしたり、血流を良くしたりして筋肉に効く、という説があります。
- 科学的な現在地:サプリで飲む程度の量では、成長ホルモンへの影響はほぼありません。研究によっては逆に運動時の反応を鈍らせるという報告さえあります[4]。血流改善によるパフォーマンス向上効果も、研究結果がばらばらです(専門用語で異質性が高い、と言います)。「効く人もいれば、実感が乏しい人も多い」のが現状です[5, 6]。
あなたにとっては…
筋肥大や記録更新が目的なら、まずはクレアチンや十分な炭水化物などを優先しましょう。アルギニンは「余力があれば試す程度」の位置づけが現実的です。
2-2. 活力・めぐり(EDなど)は?→結論:軽症で改善例あり。ただし自己判断より受診優先
- 期待される理屈:アルギニンから作られるNOの血管拡張作用が、男性の勃起不全(ED)など、血流に関わる悩みに役立つのではないかと考えられています[7]。
- 科学的な現在地:軽度から中等度のEDを持つ男性で、有効成分を含まない偽薬(プラセボ)と比較して症状が改善した、という複数の研究をまとめた報告があります[7]。
- 注意点:ただし、研究の規模が小さかったり、期間が短かったりします。そのため、効果の大きさを断言するのはまだ早計です。何より、EDは心血管疾患のサインかもしれません。
あなたにとっては…
もしEDでお悩みなら、安易にサプリに頼る前に、まずは泌尿器科や循環器科を受診してください。根本的な原因を調べることが、あなたの将来の健康を守る最も確実な一歩です。
2-3. 美容(肌・髪)は?→結論:健康な人の美容目的は根拠不足
- 期待される理屈:コラーゲンの材料になったり、頭皮の血流を良くしたりするため、美肌や育毛に繋がるのでは、という期待です。
- 科学的な現在地:健康な人が美容目的でアルギニンを飲んだ場合の効果を証明した、信頼できる研究は現時点で見当たりません。
あなたにとっては…
美肌や育毛を考えるなら、サプリに期待するより、日々の生活習慣を見直す方が、はるかに確実で効果的です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適切なスキンケア・ヘアケアを心がけましょう。
第3章:アルギニンの賢い使い方|量・タイミング・選び方
もしあなたがアルギニンを試すなら、どう使えば良いのでしょうか。食事からの摂取を基本に、サプリの使い方を解説します。
3-1. 食事で摂るなら?アルギニンが豊富な食品リスト
基本は食事からです。これらの食品に豊富に含まれています。
食品例(100gあたり) | アルギニン含有量の目安 |
---|---|
鶏むね肉(皮なし) | 約 1.5 – 1.7g |
豚ロース(赤身) | 約 1.3 – 1.5g |
アーモンド(いり) | 約 2.4 – 2.6g |
ピーナッツ(いり) | 約 3.0g |
ごま(いり) | 約 3.0g |
3-2. サプリはどれくらい・いつ飲む?→結論:1回1〜2gを分けて。運動30〜60分前は「試す価値あり」程度
【早わかり】飲むタイミングの結論
- 筋トレ目的:運動の30〜60分前に1〜2g。ただし体感は小さい可能性が高いです。
- 日中のめぐりサポート:1gを朝・昼など空腹時に試す。胃が不快なら食後に切り替えます。
- 就寝前:明確なメリットは不明です。無理に飲む必要はありません。
サプリで試す場合は、安全性を最優先してください。
安全な「始め方」プロトコル
- 【最初の3日間】:まず1回1g (1,000mg) を食後に1日1回だけ試します。胃腸に問題がなければ、1日2回に増やしてみます。
- 【4〜7日目】:問題なければ、運動30〜60分前に1〜2g (1,000〜2,000mg) を試します。体調の変化をメモしておきましょう。
- 【2週間で判断】:体感が全くない、または副作用が出たら中止します。少し良い感じがすれば、もう2週間続けて最終判断します。長期の漫然とした使用は避けましょう。
3-3. アルギニン vs シトルリン、どっちがいい?
【早わかり】どっちを選ぶ?
- 効率よく体内のアルギニン量を増やしたいなら → シトルリンが有利な可能性があります。
- 胃腸が弱い → どちらの場合も少量から分割して試すことが重要です。
- 結論:価格や入手しやすさで選び、体感で切り替えるのも一つの手です。
シトルリンは、体内でアルギニンに変わるアミノ酸です。人で飲んだ場合の「体内での動き」を調べた研究(薬物動態研究)でも、同じ量ならアルギニンよりシトルリンのほうが、血液中のアルギニンを長く高めやすいと示されています[13]。
これは、アルギニンが飲むと最初に肝臓で分解されやすい(初回通過効果)のに対し、シトルリンはその影響を受けにくいためです。
第4章:【最重要】副作用と安全のための注意点
アルギニンを安全に使うための知識です。必ず目を通してください。
4-1. 副作用は?→結論:胃腸症状、頭痛、低血圧に注意
一度に多量(特に9g以上)を摂取すると、副作用のリスクが高まります。
- よくある症状:吐き気、腹痛、下痢、頭痛
- その他:胃食道逆流の悪化、血圧の低下
4-2. 薬との飲み合わせは?→結論:血圧や血液の薬を服用中なら【自己判断は絶対NG】
以下の薬を飲んでいる方は、自己判断での併用は絶対に避けてください。
- 血圧を下げる薬(降圧薬、硝酸薬など)
- ED治療薬(シルデナフィルなど)
- 血液をサラサラにする薬(アスピリン、ワルファリンなど)
必ず、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
4-3. ヘルペス持ちは?→結論:再発リスクを考慮し、避けるのが無難
ヘルペスの症状が出やすい方は、サプリでのアルギニン摂取は避けることを強く推奨します。
- 理由:アルギニンがヘルペスウイルスの「エサ」になり、増殖を助ける可能性がある、という仮説があるためです[14]。ヒトでの因果関係は未確定ですが[15]、リスクを冒す必要はありません。
- 食事は?:通常の食事に含まれるナッツなどを過度に恐れる必要はありません。しかし、症状が出やすい方は量や頻度に注意し、主治医に相談すると安心です。
4-4. 他に注意が必要な人は?→結論:心臓・腎臓・肝臓に持病がある方、子供や妊婦はNG
以下に当てはまる方は、サプリでの使用を避けてください。
- 心臓・腎臓・肝臓に持病がある方(特に心筋梗塞の既往がある方[19])
- 低血圧の傾向がある方
- 小児・思春期の子供(成長目的での使用は根拠がありません)
- 妊娠中・授乳中の方
【重要】こんな症状が出たら即中止!受診の目安
サプリ摂取後に以下の症状が出た場合は、すぐに中止し、医療機関の受診を検討してください。
- 強い動悸、胸の痛み
- 気が遠くなる感じ、強いめまい、冷や汗
- これまでにない激しい頭痛、視覚の異常
- 発疹、じんましん、呼吸困難
第5章:よくある質問(FAQ)
- Qアルギニンはプロテインやクレアチンと一緒に飲んでいい?
- A
原則として問題ありません。ただし、一度に多くのサプリを飲むと胃腸に負担がかかることがあります。胃腸が弱い方は時間を空けるのが無難です。筋トレ効果の優先度で言えば、一般的に「クレアチン > プロテイン > アルギニン」と考えられます。
- Q朝と夜、飲むならどっちがいい?
- A
目的によります。運動パフォーマンスへのわずかな効果を期待するなら「運動前」。血流サポートなら日中の空腹時が良いでしょう。成長ホルモン目的での「就寝前」摂取に、明確なメリットは示されていません。
- Qどれくらい続ければ効果がわかる?
- A
上記の「試し方プロトコル」を参考に、まずは2週間試して判断するのが一つの目安です。2週間で何もポジティブな体感がなければ、一旦中止して食事やトレーニング内容を見直すことをお勧めします。
まとめ:アルギニンと賢く付き合うために
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 筋トレ効果は小さめ。過度な期待はせず、基本の食事・トレーニング・睡眠を最優先しましょう。
- 一部の血流改善には役立つ可能性があります。しかし、まずは医療機関への相談が鉄則です。
- 安全性がいちばん大事です。副作用、薬との飲み合わせ、ヘルペスなど、注意点を必ず守りましょう。
もし試すなら、1回1gの少量から、自分の体と対話するように慎重に始めてみてください。この記事が、あなたの賢明な判断の一助となれば幸いです。
【免責事項】
この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方は、サプリメントなどを利用する前に、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。
【参考文献】
[1] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所. 「健康食品」の安全性・有効性情報 アルギニン. https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail17.html (2025年8月13日閲覧).
[2] Wu G, Morris SM Jr. Arginine metabolism: nitric oxide and beyond. Biochem J. 1998;336(Pt 1):1-17. doi:10.1042/bj3360001
[3] 厚生労働省. e-ヘルスネット 尿素回路. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html (2025年8月13日閲覧).
[4] Kanaley JA. Growth hormone, arginine and exercise. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2008;11(1):50-4. doi:10.1097/MCO.0b013e3282f2b0ad
[5] Viribay A, Burgos J, Fernández-Landa J, Seco-Calvo J, Mielgo-Ayuso J. Effects of Arginine Supplementation on Athletic Performance Based on Energy Metabolism: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2020;12(5):1300. doi:10.3390/nu12051300
[6] Pahlavani N, Entezari MH, Nasiri M, Miri A, Ghaffari MA, Ghorbani Z, et al. The effect of l-arginine supplementation on athletic performance: a systematic review of randomized clinical trials. J Funct Morphol Kinesiol. 2022;7(2):33. doi:10.3390/jfmk7020033
[7] Rhim HC, Kim MS, Park YJ, Choi JH, Park JK, Choi HK, et al. The Potential Role of Arginine Supplements on Erectile Dysfunction: A Systemic Review and Meta-Analysis. J Sex Med. 2019;16(2):223-34. doi:10.1016/j.jsxm.2018.12.002
[8] Stanislavov R, Nikolova V. Treatment of erectile dysfunction with pycnogenol and L-arginine. J Sex Marital Ther. 2003;29(3):207-13. doi:10.1080/00926230390155104
[9] Ellinger S. Micronutrients, Arginine, and Glutamine: Does Supplementation Provide Any Benefit in Wound Healing?. Adv Wound Care (New Rochelle). 2014;3(11):691-707. doi:10.1089/wound.2013.0522
[10] LTLファーマ株式会社. 医薬品インタビューフォーム アルギメート顆粒2.5g. 2019年9月改訂(第7版). (注:元リンクは2025年8月時点で閲覧できないため、最新の情報は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療用医薬品情報検索等でご確認ください)
[11] 文部科学省. 日本食品標準成分表2020年版(八訂). https://fooddb.mext.go.jp/ (2025年8月13日閲覧).
[12] Agarwal U, Didelija IC, Yuan Y, Wang X, Marini JC. Supplemental citrulline is more efficient than supplemental arginine in increasing systemic arginine availability in mice. J Nutr. 2017;147(4):596-602. doi:10.3945/jn.116.240382
[13] Schwedhelm E, Maas R, Freese R, et al. Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism. Br J Clin Pharmacol. 2008;65(1):51-59. doi:10.1111/j.1365-2125.2007.02990.x
[14] Griffith RS, DeLong DC, Nelson RL. Relation of arginine-lysine antagonism to herpes simplex growth in tissue culture. Chemotherapy. 1981;27(3):209-13. doi:10.1159/000237973
[15] Mailoo VJ, Rampes S. Lysine for Herpes Simplex Prophylaxis: A Review of the Evidence. Integr Med (Encinitas). 2017;16(3):42-6.
[16] National Institutes of Health. Office of Dietary Supplements. Dietary Supplements for Exercise and Athletic Performance. https://ods.od.nih.gov/factsheets/ExerciseAndAthleticPerformance-HealthProfessional/ (2025年8月13日閲覧).
[17] EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on the substantiation of a health claim related to L-arginine and maintenance of normal heart function pursuant to Article 14 of Regulation (EC) No 1924/2006. EFSA Journal. 2011;9(4):2051. doi:10.2903/j.efsa.2011.2051
[18] Morris SM Jr. Arginine: beyond protein. Am J Clin Nutr. 2006;83(2):508S-512S. doi:10.1093/ajcn/83.2.508S
[19] Schulman SP, Becker LC, Kass DA, Champion HC, Terrin ML, Forman S, et al. L-arginine therapy in acute myocardial infarction: the Vascular Interaction With Age in Myocardial Infarction (VINTAGE MI) randomized clinical trial. JAMA. 2006;295(1):58-64. doi:10.1001/jama.295.1.58
[20] Liu TH, Wu CL, Chiang CW, Lo YW, Tseng HF, Chang CK. No effect of short-term arginine supplementation on nitric oxide production, metabolism and performance in intermittent exercise in athletes. J Nutr Biochem. 2009;20(6):462-8. doi:10.1016/j.jnutbio.2008.05.005