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CLA(共役リノール酸)サプリは本当に痩せる?最新エビデンスが示す効果の真相と安全な向き合い方

「飲むだけで体脂肪が減る」——そんな夢のようなサプリがあったら、誰もが試したくなるでしょう。CLA(共役リノール酸)サプリメントは、まさにそうした期待を背負って市場に登場し、今もなお多くのダイエッターの関心を集めています。

しかしその一方で、「効果がない」「かえって健康に悪いのでは?」といった不安の声も聞こえてきます。この記事では、科学の世界で今わかっている「光(期待される効果)」と「影(不確実性とリスク)」の両方を、公平な視点で徹底的に解説します。

CLAサプリの結論:30秒でわかる要点まとめ

  • 効果はごくわずか: 最新の研究でも体重減少は平均0.35kg程度。特に質の高い研究に限ると、体脂肪を減らす効果は支持されていません。
  • 潜在リスクあり: 脂質(中性脂肪など)や血糖値への影響は一貫せず、安全とは言い切れません。自己判断での長期使用は非推奨です。
  • 試すなら超慎重に: 臨床試験で多い「1日3g・最長3ヶ月」を目安とし、開始前と8〜12週後の血液検査で安全性を確認することが必須です。
  • 王道に勝るものなし: 結局、最も確実で安全なのは、食事・運動・睡眠という生活習慣の基本を整えることです。

この記事は2025年10月21日時点の最新情報に基づいています。

この記事を読めば、あなたはどう変わる?

  • 「自分は試すべきか?」を3分で判断できるチェックリストが手に入ります。
  • もし試す場合に、製品選びから安全なやめどきまで具体的なステップがわかります。
  • サプリを買う前に、その“費用対効果”を冷静に見極められるようになります。
  • 広告や口コミに惑わされず、自分にとって本当に健康的な選択ができるようになります。

そもそもCLA(共役リノール酸)とは?

CLA(Conjugated Linoleic Acid)は、日本語で「共役リノール酸」と呼ばれる不飽和脂肪酸の一種です。これは必須脂肪酸であるリノール酸の構造が少しだけ変化した「異性体(形違いの兄弟分のようなもの)」の集まりです。

自然界では、主に牛や羊といった反芻動物の肉や乳製品に、天然の形で(主にc9,t11異性体として)含まれています[1, 2]。しかし、食品に含まれる量はごくわずかです。そこで、ベニバナ油などを原料にCLAを抽出し、高濃度で摂取できるようにしたのが「CLAサプリメント」です[2]。

この章のポイント

  • CLA(共役リノール酸)は、牛肉や乳製品に微量に含まれる天然の脂肪酸。
  • サプリメントは、植物油を原料に特定のCLA異性体を高濃度で摂取できるよう作られている。
  • 体脂肪への影響は、主に「t10,c12 CLA」という異性体によるものと考えられている。

CLAサプリの効果は本当?科学が示す「ごくわずか」な現実

結論から言うと、科学的な答えは「統計的にはごくわずかな効果が認められるが、多くの人が期待するほどの臨床的に意味のある効果とは考えにくい」というものです。

質の高い研究(メタ分析)が示す「効果の大きさ」

複数の信頼できる研究結果を統合して分析する「メタ分析」という手法で、その効果の大きさが示されています。

2007年のメタ分析では、CLA摂取により半年で約1.2kgの体脂肪が減少すると報告され、この数値がしばしば引用されます[4]。しかし、より新しく大規模な2024年のメタ分析(70件の研究、4159人対象)では、体重減少は平均で-0.35kg、体脂肪減少は-0.44kgと、さらに小さな効果であることが示されました。特に重要なのは、研究の質が高いものだけを解析すると、体脂肪を減少させる統計的な効果は見られなかったと結論付けられている点です[5]。

これらの結果は、CLAに期待できる平均的な効果が、日常的な体重の“誤差”に紛れてしまうほど小さく、見た目の変化として体感するのは極めて難しいことを示唆しています。

この章のポイント

  • CLAの体脂肪減少効果は、最新の大規模な研究統合の結果、「統計的にごくわずか」と結論付けられている。
  • 特に、質の高い研究では体脂肪を減らす効果は支持されていない。
  • 多くの人が期待する「痩せた」と実感できるほどの効果は、科学的には示されていない。

CLAサプリの副作用と安全性は?特に注意すべき人と検査の目安

たとえ効果が小さくても、安全なら試したいと思うかもしれません。しかし、CLAサプリメントには、事前に知っておくべき副作用と潜在的なリスクが存在します。

一般的な副作用と「隠れたリスク」

下痢や腹部不快感といった消化器症状が最もよく報告されます[6]。しかし、本当に注意すべきなのは、体の内部での変化です。

  • 脂質への影響: 複数のメタ解析を総合すると、脂質プロファイルへの影響は一貫していません。中性脂肪(TG)が上昇する可能性、総コレステロール(TC)がわずかに低下する可能性などが報告されていますが、HDL(善玉)コレステロールを含め、指標によって相反する結果が出ています[7, 8]。この不一致は、研究で使われた油の種類や期間の違いなどが原因と考えられており、脂質への影響は「予測が難しい」のが現状です。
  • 血糖への影響: インスリン抵抗性(血糖を下げるホルモンが効きにくくなる状態)の悪化も懸念されています[9]。

これらの「隠れたリスク」は自覚症状が出にくいため、特に注意が必要です。

もし試すなら?安全な始め方からやめどきまでの4ステップ

【まずご確認ください】次の方は使用を避けるか、必ず主治医にご相談ください:糖尿病やその予備群、脂質異常症、妊娠・授乳中、未成年の方、定期的な血液検査が難しい方。

リスクを理解した上で試す場合でも、以下のステップを必ず守り、安全を最優先してください。ここに示す「1日3g・最長3ヶ月」という目安は公式ガイドラインではなく、多くの臨床試験で採用されている一般的な期間と量に基づいた、保守的な運用案です。

ステップ0:製品選びのポイント

  • 純CLA量と粒数を計算: 「必要粒数=目標摂取量3,000mg ÷ 1粒中の純CLA量(mg)」で1日の目安を計算しましょう。
  • 品質表示を確認: 健康補助食品GMPやISO等の適正製造基準に準拠した工場で製造されているか、第三者による品質検査(重金属・酸化・異性体比など)の有無を確認しましょう。

ステップ1:開始前の状態を記録する(ベースライン)

可能であれば、直近の健康診断の結果を手元に用意し、以下の数値を記録しておきましょう。

  • 体重、ウエスト周囲径
  • 空腹時血糖値HbA1c
  • 脂質データ(中性脂肪(TG), HDLコレステロール, LDLコレステロール)

ステップ2:摂取量と飲み方を守る

  • 1日3gを目安に開始します(製品の指示に従ってください)。
  • 胃腸症状が出やすい人は、数回に分けて食後に飲むと良いでしょう。

ステップ3:体の変化を観察する(モニタリング)

  • 2週間ごとに体重とウエストを測定します。
  • 摂取開始から8〜12週後を目安に必ず血液検査を受け、ベースラインの数値(特に血糖・脂質関連)が悪化していないか確認してください。これは安全な継続可否を判断する上で極めて重要です。

ステップ4:「やめどき」を判断する

以下のいずれかに当てはまる場合は、サプリメントへの投資を中止するのが賢明です。

  • 8〜12週後の血液検査で、ベースラインと比較して数値が明らかに悪化した。
  • 12週続けても、体重や体脂肪に全く変化を感じられない。

この章のポイント

  • 血糖値や脂質プロファイルへの影響が不確実なため、安易な摂取は非推奨。
  • 試す場合は「開始前と8〜12週後の血液検査」が必須であり、数値の悪化が見られたら直ちに中止すべき。
  • 特に糖尿病・脂質異常症・妊娠/授乳中の方、未成年者は安全性が確立していないため使用を避けるべき。

結論:CLAサプリとどう向き合うべきか?

【費用対効果の目安】

  • 錠数の計算例: 純CLA 800mg/粒の製品なら、3g/日には約4粒/日が必要。30日で約120粒。
  • 費用の目安: 120粒で約3,500円〜7,000円。1ヶ月あたり同程度の費用がかかります。
  • 期待できる効果: 最新知見では平均0.4kg前後の体重・体脂肪減少。高品質研究では効果は支持されない。
  • 判断: この投資と、血糖・脂質への潜在リスクを天秤にかけましょう。

米国国立衛生研究所(NIH)の体重減少サプリに関する総説でも、基本は生活習慣の見直しであり、サプリメントは効果や安全性に不確実性が大きいとされています[3]。欧州食品安全機関(EFSA)もCLAと効果の因果関係は確立されていないと結論付けています[11]。

CLAサプリの前に試したい「1日の実践プラン」

サプリにかかる費用を、より確実な健康投資に回してみませんか?例えば、同じ予算を高たんぱく質な食材(鶏胸肉、魚、豆腐など)や、ウォーキングシューズの購入に充てた方が、再現性の高い効果が期待できます。

  • : オートミール+無糖ヨーグルト+冷凍ベリー、ゆで卵1個
  • : 鶏胸肉やサバ缶を使ったサラダ(ドレッシングはオリーブオイル+塩胡椒)と、玄米おにぎり
  • : 焼き魚(サバ、鮭など)を中心に、温野菜と具沢山の味噌汁
  • 運動: 通勤時に一駅手前で降りて20分早歩きなど、合計30分の「アクティブな時間」を作る
  • 睡眠: 就寝1時間前にはスマートフォンをオフに。毎日同じ時間にベッドに入る

この章のポイント

  • 主要機関はCLAの効果に否定的・慎重であり、費用対効果も高いとは言えない。
  • 結論として、CLAはダイエットの主役ではなく、リスク管理が必須の研究段階の成分。
  • サプリを検討する前に、食事・運動・睡眠の基本を見直すことが最も確実で安全な近道。

CLAサプリに関するよくある質問

CLAサプリを飲むおすすめのタイミングは?食後や運動前?

現時点では、「このタイミングがベスト」という科学的根拠は確立されていません。胃腸への負担を考慮し、食後に摂ることを推奨する製品が多いです。

CLAサプリと薬の飲み合わせで注意すべき点は?

血糖値を下げる薬の効果や検査値に影響する可能性があるため、糖尿病治療中の方は自己判断で併用せず、必ず医師に相談してください。脂質異常症の薬を服用中の方も同様です。

筋トレ中にCLAサプリを飲むと筋肉は増える?

CLAが筋肉量を増やすという報告もありますが、結果は一貫しておらず[10]、体感できるほどの大きな効果は期待しにくいのが現状です。十分なタンパク質摂取と適切なトレーニングの方がはるかに重要です。

CLAはサプリではなく食品(牛乳や牛肉)から摂取できる?

いいえ、難しいです。通常の食事から摂取できるCLAは1日数100mg程度とされ、研究で用いられる1日3g(3,000mg)といった量には全く及びません。

CLAサプリで「痩せた」という口コミは信じてもいい?

個人の体験談は、その人の食事や運動の変化、プラセボ効果(思い込みによる効果)など、様々な要因が影響するため、科学的な参考にするのは難しいでしょう。科学的な根拠とご自身の検査数値で冷静に判断することをおすすめします。

CLAサプリを飲み忘れた場合の対処法は?

1日飲み忘れても大きな影響はありません。翌日に2倍量を飲むようなことはせず、また通常通りの量を再開してください。

CLAサプリは未成年(中学生・高校生)が飲んでも安全?

未成年者を対象とした安全性に関する十分なデータがないため、摂取は推奨されません。

CLAサプリはどのくらい続けると効果が頭打ちになりますか

平均的な研究では8〜12週程度で変化が緩やかになりがちです。検査値の悪化や効果の実感が乏しい状態が続く場合は、それ以上の継続は推奨しません。

免責事項

この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方は、サプリメントの使用に関して、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。

参考文献

[1] 公益社団法人 日本薬学会. 共役リノール酸. 薬学用語解説. https://www.pharm.or.jp/words/word00591.html

[2] den Hartigh LJ. Conjugated Linoleic Acid Effects on Cancer, Obesity, and Atherosclerosis: A Review of Pre-Clinical and Human Trials with Current Perspectives. Nutrients. 2019;11(2):370. https://doi.org/10.3390/nu11020370

[3] National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Dietary Supplements for Weight Loss: Fact Sheet for Health Professionals. https://ods.od.nih.gov/factsheets/WeightLoss-HealthProfessional/

[4] Whigham LD, Watras AC, Schoeller DA. Efficacy of conjugated linoleic acid for reducing fat mass: a meta-analysis in humans. American Journal of Clinical Nutrition. 2007;85(5):1203–1211. https://doi.org/10.1093/ajcn/85.5.1203

[5] Asbaghi O, Shimi G, Hosseini Oskouie F, Naseri K, Bagheri R, Ashtary-Larky D, et al. The effects of conjugated linoleic acid supplementation on anthropometrics and body composition indices in adults: a systematic review and dose–response meta-analysis. British Journal of Nutrition. 2024;131(3). https://doi.org/10.1017/S0007114523001861

[6] Onakpoya IJ, Posadzki PP, Watson LK, Davies LA, Ernst E. The efficacy of long-term conjugated linoleic acid (CLA) supplementation on body composition in overweight and obese individuals: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. European Journal of Nutrition. 2012;51(2):127–134. https://doi.org/10.1007/s00394-011-0253-9

[7] Akhgarjand C, Tavakoli A, Samavat S, Bagheri A, Anoushirvani A, Mirzababaei A, et al. The effect of conjugated linoleic acid supplementation in comparison with omega-6 and omega-9 on lipid profile: a graded, dose-response systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Frontiers in Nutrition. 2024;11:1336889. https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1336889

[8] Asbaghi O, Shimi G, Djafarian K, Shab-Bidar S. The effects of conjugated linoleic acid supplementation on lipid profile in adults: A systematic review and dose–response meta-analysis. Frontiers in Nutrition. 2022;9:953012. https://doi.org/10.3389/fnut.2022.953012

[9] Brown JM, Boysen MS, Chung S, Fabiyi O, Morrison RF, Mandrup S, et al. Conjugated linoleic acid induces human adipocyte delipidation: autocrine/paracrine regulation of MEK/ERK signaling by adipocytokines. Journal of Biological Chemistry. 2004;279(25):26735–26747. https://doi.org/10.1074/jbc.M401766200

[10] Schoeller DA, Watras AC, Whigham LD. A meta-analysis of the effects of conjugated linoleic acid on fat-free mass in humans. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. 2009;34(5):975–978. https://doi.org/10.1139/H09-080

[11] EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on the substantiation of a health claim related to an equimolar mixture of the CLA isomers c9,t11 and t10,c12 (marketed as Clarinol® and Tonalin®) and “contributes to a reduction in body fat mass”. EFSA Journal. 2015;13(1):3953. https://doi.org/10.2903/j.efsa.2015.3953

末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。