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高血圧、撃退!DASH食ダイエットの健康効果と仕組みを徹底解説

2025年10月28日

高血圧は、放置すると脳卒中や心臓病などのリスクを高める、怖い病気です。

しかし、食事の内容を見直すことで、血圧をコントロールできる可能性があることをご存知ですか?

世界中で注目されている「DASH食」は、高血圧の予防・改善に効果が期待できる食事法です。

この記事では、DASH食の効果やメカニズム、そして最新の研究結果を、科学的な根拠に基づいて分かりやすく解説していきます。

DASH食で、健康的な毎日を手に入れましょう!

DASH食ダイエットとは?

DASH食とは、「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、日本語では「高血圧を止めるための食事療法」という意味です。その名の通り、高血圧の治療を主目的として、アメリカ国立心肺血液研究所(NHLBI)によって開発されました [1, 15]。

DASH食は、果物、野菜、全粒穀物、低脂肪乳製品を豊富に摂取し、飽和脂肪酸、コレステロール、ナトリウムを制限する食事パターンです。

従来の減塩食に加えて、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを積極的に摂取することが特徴です。

この食事パターンは、高血圧の改善だけでなく、心血管疾患、脳卒中、糖尿病、腎臓病、そして一部のがんのリスクを減らす可能性についても研究されています [2]。

DASH食ダイエットで期待できる効果

DASH食ダイエットは、様々な健康効果が期待できます。

高血圧への効果

DASH食は、血圧を下げる効果が非常に高いことが、信頼性の高い複数の研究(ランダム化比較試験)で示されています。

代表的な「DASH試験」では、高血圧の参加者が8週間DASH食を継続した結果、収縮期血圧(上の血圧)が平均11.4 mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が平均5.5 mmHg低下しました [1]。

近年のメタ解析(複数の研究を統合した分析)でも、DASH食による降圧効果が確認されています(例:収縮期血圧 約-3.2 mmHg、拡張期血圧 約-2.5 mmHg)[5]。

さらに、「DASH-Sodium試験」では、DASH食と減塩を組み合わせることで、血圧がさらに強力に下がる(相加効果)ことが示されています [3]。

減量効果について

DASH食は、体重減少を主目的とした食事法ではありません。DASH食の基本研究では、体重を一定に保つようにカロリーが調整されていたため、DASH食単独での体重変化は小さいか、ほぼ認められませんでした [1]。

ただし、「ENCORE試験」のように、エネルギー制限(カロリー制限)や運動を組み合わせることで、DASH食は健康的な体重減少を強力にサポートします [4]。DASH食は食物繊維が豊富で満腹感を得やすいため、結果としてカロリー摂取が減り、体重管理に役立つ可能性はあります。

その他の健康効果

DASH食の遵守は、以下のような様々な疾患のリスク低下と関連している可能性が、主に観察研究によって示唆されています。

  • 心臓病・脳卒中予防の可能性: DASH食の遵守度が高い群では、低い群に比べて心血管疾患や脳卒中の発症リスクが低いという関連が報告されています(例:リスク約19-29%低下)[7, 8]。
  • 糖尿病予防の可能性: 2型糖尿病の発症リスクが低いことと関連している可能性が示唆されています(例:リスク約18%低下)[9]。
  • 腎臓病予防の可能性: CKD(慢性腎臓病)の発症リスク低下との関連が報告されています [10]。ただし、既存の腎機能低下を改善する効果については、現時点では明確ではありません [11]。
  • がん予防の可能性: 一部のがん(例:大腸癌など)のリスク低下と関連する可能性が示されています [12]。

※これらは主に観察研究による関連性を示したものであり、DASH食がこれらの病気を直接「予防」するという因果関係を断定するものではありません。

DASH食ダイエットのメカニズム

DASH食ダイエットが、なぜこれほど多くの健康効果をもたらすのでしょうか?

そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。

ミネラルの働き

DASH食で積極的に摂取するカリウム、カルシウム、マグネシウムは、体内の水分バランスを調整し、血圧を下げるのに重要な役割を果たします。

  • カリウムは、ナトリウムを体外に排出する働きがあり、血圧を下げる効果が期待できます。
  • カルシウムは、血管の収縮を抑制し、血圧を安定させる効果があります。
  • マグネシウムは、血管を拡張させ、血流を改善する効果があります。

食物繊維の力

DASH食で多く摂取する果物、野菜、全粒穀物には、食物繊維が豊富に含まれています。

  • 食物繊維は、腸内環境を整え、コレステロール値を下げる効果があります。
  • また、血糖値の上昇を抑制し、糖尿病予防にも役立ちます。
  • さらに、満腹感をもたらしやすく、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。

脂肪酸とコレステロール

DASH食では、飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、ラードなどに多い)の摂取を控え、それを不飽和脂肪酸(魚油、オリーブオイル、ナッツ類など)や食物繊維に置き換えることを重視します。

食事性コレステロールの摂取制限も含まれますが、近年のガイダンスでは飽和脂肪酸の低減と置き換えがより重要視されています。DASH食による脂質(悪玉コレステロールなど)の改善効果は、小〜中程度であることが報告されています [6]。

ナトリウムの制限

DASH食では、ナトリウム(塩分)の摂取を制限します。ナトリウムは、体内の水分を保持し、血圧を上昇させるため、高血圧の人は特に摂取量を控える必要があります。

日本高血圧学会は、高血圧患者に対し1日6g未満の食塩摂取を強く推奨しています [13]。DASH食とこの減塩目標を組み合わせることが、降圧において非常に効果的です [3]。

DASH食ダイエットの安全性

DASH食ダイエットは、一般的に安全な食事療法と考えられていますが、いくつか注意点があります [14]。

  • 腎臓病の人: 腎臓病(特にCKD)の人は、カリウムの排泄能力が低下しているため、DASH食で推奨されるカリウム(野菜や果物に多い)の摂取量が多いと、高カリウム血症(不整脈などを引き起こす危険な状態)になる可能性があります。
  • 薬との相互作用: 一部の降圧薬(例えば、ACE阻害薬、ARB、利尿剤の一部)は、血中のカリウム値を上昇させる作用があります [14]。これらの薬を服用している人がDASH食を併用すると、高カリウム血症のリスクが高まる可能性があります。
  • アレルギー: DASH食で推奨される食品(ナッツ類、乳製品、特定の果物など)の中に、アレルギーを引き起こす可能性のあるものもあります。

腎臓病と診断されている方、薬を服用中の方、食物アレルギーがある方は、DASH食を自己判断で開始せず、必ず医師や管理栄養士に相談の上、指導に従うようにしましょう。

DASH食ダイエットに関するよくある質問(FAQ)

DASH食ダイエットは誰でもできますか?

健康な成人であれば基本的に誰でも行うことができますが、上記「安全性」の項目で述べた通り、腎臓病の方や特定の薬を服用中の方は、高カリウム血症のリスクがあるため、必ず医師への相談が必要です。

DASH食ダイエットは、妊娠中でも大丈夫ですか?

DASH食のような野菜や果物が豊富な健康的な食事パターンは妊娠中も推奨されます。しかし、妊娠高血圧症候群(旧:妊娠中毒症)の予防を目的とした積極的な塩分制限は、現時点では強く推奨されていません [16, 17]。※妊娠中は、必要な栄養素や塩分のバランスが通常と異なるため、食事については必ず主治医に相談してください。

DASH食ダイエットは、お金がかかりますか?

いいえ、DASH食ダイエットは、必ずしもお金がかかるわけではありません。スーパーマーケットで手に入る旬の野菜や果物、全粒穀物(玄米や全粒粉パンなど)を中心に献立を工夫することで、経済的にDASH食ダイエットを行うことができます。

具体的なレシピや献立例については、こちらの記事をご覧ください。

参考文献

  1. Appel LJ, Moore TJ, Obarzanek E, et al. A clinical trial of the effects of dietary patterns on blood pressure. N Engl J Med. 1997;336(16):1117-1124. (DOI: 10.1056/NEJM199704173361601)
  2. Svetkey LP, Simons-Morton D, Vollmer WM, Appel LJ, Conlin PR, Ryan DH, et al. Effects of dietary patterns on blood pressure: subgroup analysis of the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) randomized clinical trial. Arch Intern Med. 1999;159(3):285-293. (DOI: 10.1001/archinte.159.3.285)
  3. Sacks FM, Svetkey LP, Vollmer WM, et al. (DASH-Sodium Collaborative Research Group). Effects on blood pressure of reduced dietary sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet. N Engl J Med. 2001;344(1):3-10. (DOI: 10.1056/NEJM200101043440101)
  4. Blumenthal JA, Babyak MA, Hinderliter A, Watkins LL, Craighead L, Lin P-H, et al. (ENCORE Study). Effects of the DASH diet alone and in combination with exercise and weight loss on blood pressure and cardiovascular biomarkers in men and women with high blood pressure: the ENCORE study. Arch Intern Med. 2010;170(2):126-135. (DOI: 10.1001/archinternmed.2009.470)
  5. Filippou CD, Tsioufis CP, Thomopoulos CG, et al. Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) Diet and Blood Pressure Reduction in Adults with and without Hypertension: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Adv Nutr. 2020;11(5):1150-1160. (DOI: 10.1093/advances/nmaa041)
  6. Zare P, Bideshki MV, Sohrabi Z, Behzadi M, Mohammadi Sartang M. Effect of Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet on lipid profile in individuals with overweight/obesity: a GRADE-assessed systematic review and meta-analysis of clinical trials. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025;35(9):104057. (DOI: 10.1016/j.numecd.2025.104057)
  7. Salehi-Abargouei A, Maghsoudi Z, Shirani F, Sajjadi L. Effects of Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH)-like diets on cardiovascular diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2013;23(11):1097-1104. (DOI: 10.1016/j.numecd.2012.12.004)
  8. Feng J, Liu X, Wang H, et al. Adherence to the DASH diet and the risk of stroke: A meta-analysis of prospective cohort studies. Medicine (Baltimore). 2018;97(52):e14124. (DOI: 10.1097/MD.0000000000014124)
  9. Quan S, Wu J, Zhang H, et al. Adherence to the dietary approaches to stop hypertension (DASH) diet and the risk of type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. Front Nutr. 2024;11:1403970. (DOI: 10.3389/fnut.2024.1403970)
  10. Mozaffari H, Rafaiee M, Siassi F, et al. Adherence to the DASH-style diet and risk of chronic kidney disease: A systematic review and meta-analysis of observational cohort studies. Clin Nutr. 2020;39(6):1663-1671. (DOI: 10.1016/j.clnu.2019.10.017)
  11. Aderoju YBG, Sodehinde O, Fashanu A, et al. Exploring the application of DASH in the management of patients with chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis. Clin Nutr ESPEN. 2025;69:711-721. (DOI: 10.1016/j.clnesp.2025.08.030)
  12. Abbasi M, Khosravi M, Qorbani M, et al. Adherence to the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet and risk of colorectal cancer: a systematic review and meta-analysis of 23 observational studies. BMC Gastroenterol. 2025. (DOI: 10.1186/s12876-025-03859-2)
  13. Tsuchihashi T. Dietary salt intake in Japan. Hypertens Res. 2022;45(5):748-757. (DOI: 10.1038/s41440-022-00888-2)
  14. Challa HJ, Ameer MA, Uppaluri KR. DASH Diet (Dietary Approaches to Stop Hypertension). In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-. (URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482514/)
  15. National Heart, Lung, and Blood Institute. DASH eating plan. (URL: https://www.nhlbi.nih.gov/education/dash-eating-plan)
  16. ACOG Practice Bulletin No. 222: Gestational Hypertension and Preeclampsia. Obstet Gynecol. 2020;135(6):e237-e260. (DOI: 10.1097/AOG.0000000000003891)
  17. Asayama K, Watanabe H, Ohkubo T, et al. Dietary sodium restriction in pregnancy: a review and perspectives. Hypertens Res. 2018;41(1):1-8. (DOI: 10.1038/hr.2017.90)
末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。