PriGym | 【池袋】パーソナルジム
「デトックスダイエット」の神話と真実。本当に意味ある?あなたの“毒”はどこへ行く?
この記事でわかること
この記事は、2025年11月時点の最新情報と科学的根拠(エビデンス)に基づいています。
- 医学的な「解毒」と、一般的な「デトックス」の決定的な違い
- 「宿便」や「汗から出る毒素」に関する科学的な見解
- なぜ「デトックスダイエット」は科学的に疑わしいとされるのか
- 多くの人が「デトックス効果」を感じる、本当の理由
- 科学が推奨する、本当の意味での「デトックス」(=体を健やかに保つ)習慣の具体例
デトックスダイエットの結論:科学的根拠は乏しく、場合によっては危険も
まず結論からお伝えします。「デトックスダイエット」について検索されている方が最も知りたいであろう点について、科学的な立場からまとめます。
- ① 科学的根拠は乏しい: 特定の食品やサプリ、ジュースクレンズが、体に備わっている以上の「毒素排出」効果を持つことを示す、信頼できる科学的根拠(エビデンス)は乏しいのが現状です。[1, 12]
- ②「効果」の正体は別にある: 体重減少やスッキリ感は、「毒素」が抜けたからではなく、「カロリー制限」や「アルコール・加工食品を控えること」による結果である可能性が極めて高いです。
- ③ 危険性も指摘されている: 自己流の極端な断食やサプリメントの乱用は、栄養失調や筋肉量の減少、あるいは肝臓・腎臓に負担をかける危険性も指摘されています。[12]
- ④ 本当の解決策は「生活習慣」: 科学的に推奨されるのは、魔法のような方法ではなく、「肝臓・腎臓・腸」という私たちの体にもともと備わっている解毒・排泄システムをいたわる健康的な生活習慣です。
この記事では、これらの理由について詳しく解説していきます。
導入:なぜ私たちは「デトックス」に惹かれるのか?
「最近、体がだるい」「ダイエットがうまくいかない…もしかして毒素が溜まっているせい?」
そう感じたとき、「デトックス」という言葉は非常に魅力的に響きます。ジュースクレンズ、ファスティング、デトックススープ…。「体に溜まった悪いものを出して、スッキリしたい」と考えるのは、自然なことかもしれません。
しかし、その「デトックス法」、本当に科学的根拠(エビデンス)はあるのでしょうか?
この記事では「デトックスダイエット」に関する科学的な真実と誤解を解き明かし、私たちが本当に目指すべき「体の内側からスッキリする」ための方法を、分かりやすく解説します。
この章のポイント
- 多くの人が、体調不良や体重増加の原因を「毒素」と考え、「デトックス」に期待を寄せます。
- しかし、一般的に語られる「デトックス法」の多くは、科学的な裏付けが不十分な場合があります。
- この記事では、科学的根拠に基づき、デトックスの真実と、本当に健康的な体の整え方を解説します。
そもそも「デトックス」とは?医学と美容、2つの意味
私たちが使う「デトックス」という言葉には、実は2つの異なる意味が混在しています。この違いを理解することが、誤解を解く第一歩です。
医学的な「解毒 (Detoxification)」
医学や生理学の世界で「解毒(Detoxification)」という言葉が使われる場合、それは主に以下の2つの高度な生体機能を指します。
- 体内の自動洗浄システム(代謝・排泄)
- 肝臓: 体外から入った薬物、アルコール、環境化学物質や、体内で生じた代謝産物(アンモニアなど)を、化学反応(酸化・還元・抱合など)によって無毒化、または排泄しやすい形に変える「化学工場」です。
- 腎臓: 血液をろ過し、尿素やクレアチニン、余分な塩分、水溶性の毒性物質などを尿として体外に排出する「精密フィルター」です。
- 臨床現場での「解毒治療」
- 薬物依存やアルコール依存の離脱治療、あるいは急性中毒(薬物、重金属など)に対する解毒剤の投与や血液透析などを指します。
これらは、健康な人であれば24時間365日、自動的に働いている生命維持に不可欠なシステムです。
一般的な(マーケティング的な)「デトックス」
一方、美容やダイエットの文脈で使われる「デトックス」は、
- 「体内に溜まった毒素・老廃物を排出する」
- 「肝臓の解毒力を高める」
- 「宿便や脂肪を一気に流す」
といった、やや曖昧な概念を指すことが多いです。
多くの場合、何を「毒素」とし、どの経路(汗、足裏、便など)から、どれだけ排出されるのか、その科学的な定義や検証は明確にされていません。[1]
コラム:「宿便」は存在するの?
デトックスと関連して語られる「宿便(しゅくべん)」。「腸壁に何年もこびりついた古い便が、毒素を出している」といったイメージで語られがちです。
しかし、現代医学において、そのような「腸壁にこびりついた古い便」の存在は、解剖学的にも画像的にも確認されていません。[8]
実際には、医学用語として「宿便」が使われる場合、それは主に「糞便塞栓(fecal impaction)」という、重度の便秘によって硬くなった便が直腸や結腸に詰まってしまった状態を指すことがほとんどです。[9] 「日本消化器病学会 慢性便秘ガイドライン2023」(英語版)[14]においても、この糞便塞栓は重症便秘の合併症として扱われており、腸壁にこびりつく「毒の塊」とは異なります。
つまり、一般的にイメージされる「長年こびりついた毒の塊」ではなく、「重度の便秘」の問題として捉えるのが医学的には正確です。
この章のポイント
- 医学的な「解毒」とは、主に肝臓と腎臓が自動的に行う、生命維持に不可欠な代謝・排泄システムを指します。
- 美容的な「デトックス」は、「毒素」や「排出経路」の定義が曖昧なことが多いです。
- 「宿便」は、腸壁にこびりついた古い便ではなく、医学的には「重度の便秘(糞便塞栓)」に近い状態を指す用語として使われます。
「デトックスダイエット」は本当に効果がある?(科学的根拠の深掘り)
冒頭の結論で「科学的根拠は乏しい」と述べましたが、ここではその理由をもう少し詳しく見ていきましょう。
反論①:主要な保健機関は「デトックスダイエット」を推奨していない
NIH(米国国立衛生研究所)のNCCIH(国立補完統合衛生センター)は、「“Detoxes” and “Cleanses”」(デトックスとクレンズ)に関するファクトシート(2025年3月更新情報)で、「(デトックス法が)体重減少や健康改善に有効であるというエビデンスは限定的である」と指摘しています。[12]
むしろ、極端なジュースクレンズやサプリメントの過剰摂取は、電解質異常や腎障害、肝障害などを引き起こす危険性があると警告しており、特に持病のある人や妊娠中の人は注意が必要としています。[12]
反論②:「特定の食品が解毒能力を高める」質の高い証拠は乏しい
2015年の批判的レビュー(複数の研究をまとめて科学的に評価する方法)[1]や、その後の小規模な研究[2, 3]を見ても、以下のような限界が指摘されています。
- 研究の質の問題: 参加者数が少ない、対照群(比較対象)がない、期間が短いなど、方法論的に弱い研究がほとんどです。
- 「毒素」の測定が不明確: そもそも何を「毒素」として測定し、それが「デトックス」によってどれだけ減ったかを明確に示した質の高い研究は、見当たりません。
結論として、「市販のデトックスダイエットが毒素除去に有効であると示す、信頼できるエビデンスは見当たらない」というのが、現時点での科学的な見解です。[1]
反論③:「汗」や「足裏」からの毒素排出は限定的
- 汗: サウナや運動で大量に汗をかくと「毒素が排出できた」と感じるかもしれません。確かに汗にはごく微量の重金属などが含まれるという報告はあります。[6] しかし、汗腺の生理機能に関する包括的なレビューでは、汗による老廃物・毒性物質の排泄量は、腎臓や消化管(便)に比べてごくわずかであり、汗腺が「解毒」を目的に排泄量を増やす証拠は乏しいと結論づけられています。[5]
- 【重要】 たとえ汗の中にごく微量の有害物質が「観測」されたとしても、それが体全体の毒素負荷(body burden)を意義のあるレベルで低下させるかを示す、質の高い臨床エビデンスは乏しい、という点も重要です。
- 足裏シート: 「足裏に貼るとシートが黒くなり、毒素が出た証拠」と謳う商品もありますが、米連邦取引委員会(FTC)は、科学的根拠の欠如を理由に、過去に同様の製品の販売を禁止しています。[13] シートの変色は、汗(水分)とシートの成分が反応した結果である可能性が指摘されています。
この章のポイント
- 既に結論で述べた通り、NIHなどの主要な公的機関は、健康増進目的の「デトックスダイエット」を推奨しておらず、むしろ危険性に言及しています。
- 特定の食品やプログラムが「解毒能力を高める」ことを強く支持する、質の高い科学的根拠は乏しいのが現状です。
- 汗や足裏から「毒素がどんどん出る」という考えは、生理学的には誇張であり、誤解を招く可能性があります。
なぜデトックスで「効果」を感じる?本当の理由と“スッキリ感”の正体
エビデンスが乏しいにもかかわらず、なぜ「ジュースクレンズで痩せた」「デトックススープで体がスッキリした」といった効果を感じる人がいるのでしょうか?
それらの「効果」は、「毒素が抜けたから」ではなく、以下のような別のメカニズムで説明できる可能性が高いです。
- 単純なカロリー制限による体重減少
ファスティング(断食)やジュースクレンズ、特定のスープのみで数日間過ごせば、当然ながら摂取カロリーは大幅に減少します。体重が減るのは、「毒素」が抜けたからではなく、単純なカロリー制限の結果である可能性が極めて高いです。[2] - 加工食品やアルコールの排除による体調改善
「デトックス期間中」は、多くの場合、アルコール、高脂肪なジャンクフード、お菓子などの加工食品を避けることになります。これらを一時的にやめるだけでも、胃腸の調子が整ったり、むくみが取れたり、肌のコンディションが改善したりすることは十分に考えられます。 - 水分・食物繊維摂取の変化
デトックスウォーターや野菜スープを多く摂ることで、水分摂取量が増え、一時的に利尿作用や便通が改善することがあります。これが「スッキリ感」につながっている可能性があります。 - プラセボ効果
「体に良いことをしている」という意識(プラセボ効果)も、体調の自己評価に影響を与える可能性があります。
この章のポイント
- 「デトックス」で感じる体重減少やスッキリ感は、「毒素の排出」によるものではない可能性が高いです。
- 主な要因は、カロリー制限、アルコールや加工食品を避けることによる食生活の改善、そしてプラセボ効果と考えられます。
科学が推奨する、本当の「デトックス習慣」とは?
特定の食品や短期間のプログラムで「毒素を排出する」という魔法のようなやり方は、残念ながら科学的には期待できません。
では、私たちはどうすれば良いのでしょうか?
科学が推奨する本当の「デトックス」とは、「私たちの体に元々備わっている解毒工場(肝臓・腎臓)や排出経路(腸)が、スムーズに働ける環境を整えること」に他なりません。
体の「自動洗浄システム」をサポートする3つの柱
私たちの体には、以下の3つの主要な「デトックス」システムが備わっています。これらを健康に保つことが何より重要です。
| 臓器 | 主な役割(=デトックス) | サポートする行動(OK) | 負担になる行動(NG) |
|---|---|---|---|
| 肝臓 | アルコール、薬物、代謝産物の化学的処理(無毒化) | バランスの良い食事、休肝日、適正体重の維持 | アルコールの過剰摂取、高脂肪・高糖質な食事 |
| 腎臓 | 血液をろ過し、老廃物や余分な塩分・水分を尿として排出 | 適度な水分補給、塩分を控える、血圧管理 | 水分不足、塩分の過剰摂取、高血圧の放置 |
| 腸 | 消化吸収の残りカスや代謝産物を便として排出 | 食物繊維・発酵食品の摂取、十分な水分 | 食物繊維の不足、偏った食事、水分不足 |
① 肝臓サポート:化学工場をいたわる
肝臓は、アルコールや薬物、脂肪の代謝に日々追われています。肝臓をサポートするとは、余計な負担をかけないことです。
- アルコールの適量化: 最も直接的な肝臓の負担源です。休肝日を設け、適量を守りましょう。
- バランスの良い食事: 高脂肪食や糖分の過剰摂取は脂肪肝のリスクを高めます。
- サプリメントの乱用を避ける: 「肝臓に良い」とされるサプリメントでも、過剰摂取や体質に合わない場合は、逆に肝臓に負担をかける可能性があります。[12]
② 腎臓サポート:フィルターを詰まらせない
腎臓は、血液をろ過して老廃物を排出します。腎臓の負担を減らすことが重要です。
- 適切な水分補給: 水分が不足すると尿が濃くなり、腎臓に負担がかかります。喉が渇く前にこまめに水分を摂りましょう。
- 塩分の管理: 塩分(ナトリウム)の過剰摂取は高血圧を招き、長期的には腎機能に悪影響を与えます。加工食品や外食の塩分に注意しましょう。
③ 腸内環境(最大の排出経路):スムーズな「出口」を作る
便は、体にとって不要になった物質(食物繊維の残りカス、腸内細菌の死骸、胆汁経由で排泄された代謝産物など)をまとめて体外に出す、最も重要な排出経路です。
- 食物繊維の積極的な摂取: 食物繊維は便のカサを増やし、腸の動きを活発にします。「デトックススープ」を「毒素を出すスープ」としてではなく、「食物繊維を手軽に摂れる健康的な野菜スープ」として捉え直すのは非常に良いアプローチです。
- 発酵食品と水分: 腸内環境を整える発酵食品や、便を柔らかくする十分な水分も大切です。
読者実践編:今日から始める「本当のデトックス習慣」1日のモデルケース
「具体的にどうすれば?」という方のために、平日を想定した行動イメージをご紹介します。
- 朝 ☀️
- まずコップ1杯の水: 寝ている間に失われた水分を補給し、腸を優しく刺激します。
- 朝食を抜かない: 食物繊維(例:オートミール、全粒粉パン、バナナ、きのこ入りの味噌汁)を意識して摂り、腸の「お掃除」をスタートさせましょう。
- 昼 🕛
- 賢いコンビニ選択: 「おにぎり+野菜たっぷりスープ+サラダチキン」や「蕎麦+ゆで卵+ほうれん草のおひたし」など、炭水化物+タンパク質+野菜(食物繊維)の組み合わせを意識します。
- 「デトックスウォーター」より「水」か「お茶」: 糖分の入った飲み物より、シンプルな水分補給を心がけましょう。
- 夜 🌙
- 塩分を意識する: 特に外食や加工食品は塩分が高くなりがちです。野菜や海藻、カリウムを多く含む食品(例:ほうれん草、アボカド)を足して、バランスを取りましょう。
野菜や果物(カリウム)の摂取は多くの人に推奨されますが、慢性腎臓病(CKD)などで医師からカリウム制限の指導を受けている方は、自己判断での摂取は危険な場合があります。必ず主治医や管理栄養士にご相談ください。- アルコールとの付き合い方: 飲む日は量を決める(例:ビール1缶、ワイン2杯まで)。飲まない日(休肝日)を週2日以上作る。
この章のポイント
- 本当の「デトックス」とは、特別な方法ではなく、肝臓、腎臓、腸という本来の解毒・排泄システムをサポートする生活習慣のことです。
- 具体的には、アルコールや塩分の管理、適切な水分補給、そして食物繊維の豊富な食事が鍵となります。
- 「1日のモデルケース」を参考に、小さな習慣から変えていくことが大切です。(腎機能に不安のある方はカリウム摂取にご注意ください)
FAQ:「デトックスダイエット」の危険性とよくある疑問
読者の皆さまから寄せられそうな、よくある疑問にお答えします。
結論:「毒素を排出する」という意味では、科学的根拠が乏しく「意味がない」可能性が高いです。
冒頭の結論でも述べた通り、「特定の食品で毒素を排出する」という点でのエビデンスは乏しいです。ただし、もし「デトックスダイエット」をきっかけに、「アルコールを控える」「加工食品を減らし、野菜を多く摂る」といった行動につながるのであれば、それは「食生活改善のきっかけ」として意味があるかもしれません。目的と手段を混同しないことが重要です。
結論:自己流の極端な断食やサプリ多用は、臓器に負担がかかる可能性が高くおすすめできません。
最も注意すべきなのは、極端なカロリー制限(ジュースクレンズやファスティング)や、特定のサプリメントの乱用です。
- 栄養失調と筋肉の減少: 極端な食事制限は、必要な栄養素が不足し、体力を支える筋肉を減らしてしまう可能性があります。
- 臓器への負担: 特定の成分(例:ハーブ、高濃度ビタミン)の過剰摂取や、極端な断食は、かえって肝臓や腎臓に負担をかけることが報告されています。[12]
- 持病の悪化: 糖尿病、腎臓病、肝臓病などの持病がある方、妊娠中・授乳中の方が自己流で行うのは非常に危険です。必ず医師に相談してください。
怖がりすぎて怯える必要はありませんが、「極端・急激・自己流」な方法だけは避ける、という意識を持っていただければと思います。
結論:「飲むだけで」「宿便がごっそり」「毒素排出」といった言葉には、科学的根拠がない場合があります。
読者自身が情報を見極めるために、以下のような表現には特に注意が必要です。
- 「飲むだけで」「奇跡の」「〇〇kg痩せた」:簡単な方法で大きな効果を謳うものは、根拠が誇張されているか、単なるカロリー制限の結果である可能性が高いです。
- 「宿便がごっそり」「腸の汚れを剥がす」:前述の通り、医学的な「宿便」のイメージとは異なります。
- 「医師も絶賛」「芸能人愛用」:個人の感想や推薦であり、科学的な有効性を示すものではありません。
- 「毒素・老廃物を排出」:何を「毒素」とし、どう「排出」するのかが科学的に示されていないことが多いです。
結論:極端な方法(=急激なカロリー制限)ほど、リバウンドのリスクは高くなります。
ジュースクレンズや断食などで一時的に体重が落ちても、その多くは水分や筋肉の減少であり、食事を戻せばすぐに元に戻る(リバウンドする)可能性が高いです。この記事で紹介したような「肝臓・腎臓・腸をいたわる生活習慣」は、急激な体重減少をもたらすものではありません。その代わり、リバウンドを繰り返すのではなく、健康的な状態を「定着」させることを目的としています。
結論:気分的なスッキリは◎ですが、毒素排出としてのデトックス効果は限定的です。
「スッキリする」という体感は得られますが、それは主に体温調節や血行促進によるものです。「毒素の排出」という点では、汗から排出される老廃物の量は、尿と比べてごくわずかです。[5] サウナの主なデトックス効果は「汗からの毒素排出」ではなく、リフレッシュ効果や血行改善と考えるのが妥当です。水分の補給は忘れずに行ってください。
結論:「デトックス」目的とは言えませんが、別のメカニズムで研究が進んでいます。ただし自己流は危険です。
ファスティング(特に間欠的断食)が健康に与える影響については、現在も多くの研究が行われています。しかし、それは「毒素を排出するため」というより、「細胞の修復機能(オートファジー)の活性化」や「インスリン感受性の改善」といった別のメカニズムが注目されています。自己流の長期間のファスティングは前述の危険性を伴うため、健康目的であっても、専門家の指導のもとで行うか、まずは「夕食を早めに済ませて、翌朝まで12〜14時間程度食べない」といった負担の少ない方法から試すのが賢明です。
結論:「飲むだけで毒素排出」を謳う製品の科学的根拠は不明瞭なものが多く、注意が必要です。
成分によりますが、「飲むだけで毒素を排出する」といった宣伝文句の製品は、その科学的根拠が不明瞭なものがほとんどです。むしろ、複数のハーブや高濃度の成分が、予期せぬ肝障害や薬物との相互作用を引き起こすリスクも報告されています。[12] 基本的には、サプリメントで「解毒」を試みるより、食事のバランスを整える方が安全かつ確実です。
結論:「毒素排出」目的では疑問ですが、「野菜や果物を手軽に摂る」手段としては非常に優れています。
「毒素排出」を目的とするならば、その効果は科学的に証明されていません。しかし、「野菜や果物を手軽に、美味しく摂取する手段」としては非常に優れています。ただし、ジュースクレンズのように野菜や果物をジュース(液体)だけで摂ろうとすると、食物繊維が取り除かれてしまったり、果物の糖分を過剰に摂取してしまったりする可能性があるので注意が必要です。
まとめ:魔法の「デトックス」を探すより、肝臓と腎臓をいたわる生活を。
「デトックスダイエット」という言葉には、体内の「毒素」を排出し、短期間で健康やスリムな体型が手に入るかのような魅力があります。
しかし、科学的に見れば、「特定の食品や方法で、体に備わった解毒システム(肝臓・腎臓)の能力を上回るデトックスができる」という確かなエビデンスは、現時点ではありません。
私たちが「デトックス効果」として感じているものの多くは、カロリー制限や、アルコール・加工食品を控えることによる食生活の改善の結果である可能性が高いのです。
本当に必要なのは、魔法のような「デトックス法」を探すことではありません。
私たちの体内で毎日黙々と働き続けてくれている肝臓と腎臓をいたわり、最大の排出経路である腸の環境を整えること。
デトックスとは“出す魔法”ではなく、“働き者の臓器をいたわる習慣”です。
バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、アルコールや塩分の管理といった、地道で健康的な生活習慣そのものが、科学に基づいた最も安全で確実な、本当の「デトックス」と言えるでしょう。
すべてを一度に完璧に変える必要はありません。今日からできそうなことを1つだけ選んで、「自分なりの本当のデトックス習慣」を育てていきましょう。
【免責事項】
この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方は、サプリメントの摂取や食事法(ダイエット法)の変更を行う前に、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。
【参考文献リスト】
- Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675–686. https://doi.org/10.1111/jhn.12286
- Jung SJ, Kim WL, Park BH, Lee SO, Chae SW. Effect of toxic trace element detoxification, body fat reduction following four-week intake of the Wellnessup diet: a three-arm, randomized clinical trial. Nutrition & Metabolism. 2020;17:47. https://doi.org/10.1186/s12986-020-00465-9
- Kim JA, Kim JY, Kang SW. Effects of the dietary detoxification program on serum γ-glutamyltransferase, anthropometric data and metabolic biomarkers in adults. Journal of Lifestyle Medicine. 2016;6(2):49–57. https://doi.org/10.15280/jlm.2016.6.2.49
- Acosta RD, Cash BD. Clinical effects of colonic cleansing for general health promotion: a systematic review. American Journal of Gastroenterology. 2009;104(11):2830–2836. https://doi.org/10.1038/ajg.2009.494
- Baker LB. Physiology of sweat gland function: the roles of sweating and sweat composition in human health. Temperature. 2019;6(3):211–259. https://doi.org/10.1080/23328940.2019.1632145
- Kuan WH, Chen YL, Liu CL. Excretion of Ni, Pb, Cu, As, and Hg in sweat under two sweating conditions. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19(7):4323. https://doi.org/10.3390/ijerph19074323
- Agency for Toxic Substances and Disease Registry. Toxicology Curriculum for Communities: Trainer’s Manual. Module 2: Routes of Exposure. Atlanta (GA): ATSDR; 2015. Available from: https://archive.cdc.gov/www_atsdr_cdc_gov/training/toxmanual/module2/index.html
- 寺澤捷年, 土佐寛順, 平崎能郎, 小林亨, 地野充時. 宿便についての一考察. 日本東洋医学雑誌. 2014;65(4):309–312. https://doi.org/10.3937/kampomed.65.309
- 安達亙, 塩澤秀樹, 小松修. 外来を受診したfecal impaction症例の臨床像. 日本大腸肛門病学会誌. 2022;75(7):327–332. https://doi.org/10.3862/jcoloproctology.75.327
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Your Kidneys & How They Work. Bethesda (MD): NIDDK. Available from: https://www.niddk.nih.gov/health-information/kidney-disease/kidneys-how-they-work
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Liver Disease – Health Information. Bethesda (MD): NIDDK. Available from: https://www.niddk.nih.gov/health-information/liver-disease
- National Center for Complementary and Integrative Health. “Detoxes” and “Cleanses”: What You Need To Know. Bethesda (MD): NCCIH; 2025. Available from: https://www.nccih.nih.gov/health/detoxes-and-cleanses-what-you-need-to-know
- Federal Trade Commission. At FTC’s Request, Judge Imposes Ban on Marketers of Detox Foot Pads. Press release. Washington (DC): Federal Trade Commission; 2010 Nov 4. Available from: https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2010/11/ftcs-request-judge-imposes-ban-marketers-detox-foot-pads
- Ihara E, Miyoshi J, Serikawa M, Fujiya M, Nakamura S, Sakamoto K, et al. Evidence-based clinical guidelines for chronic constipation 2023. Digestion. 2025;106(1):62–89. https://doi.org/10.1159/000540912

