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ギンナン(銀杏)は何個まで?1日の目安と子供・大人の安全ライン、中毒症状と対処法

秋の味覚、ギンナン(銀杏)。その独特のもちもちとした食感とほろ苦さは、茶碗蒸しや炊き込みご飯、お酒のおつまみに欠かせない存在です。

しかし、美味しい一方で「ぎんなんは食べ過ぎると危ない」と聞いたことはありませんか?

この記事は、そんなギンナンの安全性に関する疑問に答えるために書かれました。ギンナンには「ギンコトキシン」という特有の成分が含まれており、摂取する量によっては中毒を引き起こす可能性が科学的に確立されています。

この記事では、2025年11月時点の最新の研究報告に基づき、「大人は何個まで?」「子供は何歳から?」「1日何個まで?」という具体的な疑問に対し、安全な摂取量の目安と中毒のメカニズム、そして伝統的に言われる効能の真偽まで、分かりやすく解説します。

秋の楽しみをあきらめる必要はありません。正しい知識を身につけ、安全に旬の味覚を楽しみましょう。

この記事でわかること

  • ギンナンの「食べ過ぎ」が危険な理由(ギンコトキシン)
  • 【一覧表】子供と大人、それぞれの「安全な摂取目安」(一度にの目安)
  • 何個から「食べ過ぎ」? 中毒が報告されているライン
  • ギンナンの生食・生焼けのリスク
  • 食べ過ぎた場合の中毒症状、発症までの時間、対処法
  • ペット(犬・猫)に与えるリスクと、安全な下処理・保存方法

結論:ギンナン(銀杏)は何個まで?年齢・対象別の安全目安

まず結論からお伝えします。ギンナンの摂取目安について、「何個までなら絶対安全」という公式な耐容上限量は設定されていません。これは中毒発症に大きな個人差があるためです [4]。

ただし、国内外の症例報告や公的機関の注意喚起から、「実務的な指針」を導き出すことは可能です。特にスマホでこの記事を読まれている方のために、「ひと目でわかる摂取目安の表」を作成しました。

【一覧表】ギンナンの年齢・対象別 摂取目安(一度にの目安。1日あたりの公的上限設定なし)

対象目安・基本方針補足メモ
5歳未満の子供与えない(推奨)中毒リスクに加え、誤嚥・窒息のリスクが非常に高いため [5, 15]。
学童〜思春期味見程度(数粒以下「おかわりしない」をルールに。大人の管理下で。
健康な成人一度に二桁にならない“数粒を時々”(同日内に複数回食べる場合も合計で“数粒”を目安に)[1, 4, 6]連日の常食は避ける。
妊婦・授乳中の方避けるか、ごく少量(1〜2粒)まで胎児・乳児への安全性が不確実なため、慎重な判断を。
高齢者・既往歴のある方少量(数粒)を意識する特に「てんかん」の既往がある方、栄養状態が良くない方は注意。

この表のどこに自分や家族が当てはまるかをチェックしてから、“今日はここまで”という量を決めておくと安心です。

ギンナンは何個から“食べ過ぎ”?避けたいラインの考え方

「数粒を時々」という目安の背景には、実際の急性中毒の報告があります。

巷で「大人は10粒まで」といった情報を見かけることがありますが、これは公的な根拠として確認されたものではありません。むしろ、香港衛生当局の公表情報では、調理済みギンナンを成人が一度に10〜50個摂取して急性中毒を起こした可能性が報告されています [1, 6]。

また、国内の症例報告では、成人が約50個のギンナンと飲酒をし、約9.5時間後に痙攣を起こしたケースが報告されています [2]。

子供の場合はさらに深刻で、少量を摂取しただけでも中毒を起こした事例 [5] や、2歳児が50〜60粒を摂取し7〜9時間後に痙攣を起こした症例報告 [3] もあります。

公式上限がない以上 [4]、症例報告のある「10個以上」の領域には入らないことを強く推奨します [1][6]。同日に複数回食べる場合も、合計が“二桁未満の数粒”に収まるよう管理しましょう。

居酒屋などで串にたくさん刺さって出てくる場合は、家族や友人とシェアして、一人分が“数粒”に収まるようにするのがおすすめです。

なぜ危ない? ギンナン中毒の原因「ギンコトキシン」とは

なぜ、ぎんなんを食べ過ぎると危険なのでしょうか。原因物質は、「ギンコトキシン(Ginkgotoxin)」、別名「4′-O-メチルピリドキシン(MPN)」と呼ばれる成分です [1, 2]。

このギンコトキシンは、私たちの体内で重要な働きをする「ビタミンB6」と非常によく似た構造をしています。そのため、体内に取り込まれるとビタミンB6の働きを妨害(阻害)してしまいます [2, 3]。

特に問題となるのが、脳内の神経伝達物質「GABA(ギャバ)」の合成です。GABAはビタミンB6の助けを借りて作られますが、ギンコトキシンがB6の邪魔をすることでGABAが不足します。GABAは脳の興奮を鎮めるブレーキ役であるため、これが不足すると脳が過剰に興奮し、痙攣(けいれん)などの深刻な神経症状を引き起こすのです [2]。

【注意】加熱しても毒性は消えない?

「しっかり火を通せば毒は消えるのでは?」と考える方も多いでしょう。

しかし、ギンコトキシンに関する公的資料では「熱に強く、煮ても焼いても消滅しない」と注意喚起されています [5]。

一方で、実験室レベルの研究では、高温・長時間の処理(例:90〜150℃で最大60分)によってギンコトキシンが有意に減少したという報告もあります [8]。

これをどう解釈すべきでしょうか?結論は、「家庭での一般的な調理(塩煎り、炊き込みご飯など)レベルでは、安全なレベルまで無毒化される保証はない」ということです。

したがって、加熱の有無にかかわらず、「量で管理する」(=食べ過ぎない)ことが、ギンナンのリスクを管理する唯一確実な方法です。

もし食べ過ぎたら? 中毒症状と対処法

万が一、ギンナンを食べた後に(特に子供が)痙攣、繰り返す嘔吐、めまいなどの症状を示した場合は、直ちに医療機関を受診してください。

その際、以下の情報を医師に伝えると診断がスムーズです。

  • いつ、どれくらいの量(個数)を食べたか
  • どのような調理法(生か加熱か)で食べたか
  • 症状が出始めた時間
  • 食べた人の年齢、既往歴(特にてんかんなど)、内服中の薬
  • 飲酒の有無(アルコールが発症に関与した可能性が示唆される症例報告があります [2])

家庭で慌てないために、症状の目安と対応をまとめます。

症状の例どうする?(対応の目安)
何となく元気がない、少し気持ち悪そう経過を注意深く観察する。追加で食べさせない。
繰り返す嘔吐、めまい、ふらつき医療機関(かかりつけ医など)に相談・受診を検討。
痙攣(けいれん)、意識がはっきりしないただちに救急要請(119番)または夜間救急を受診。

幸いなことに、ギンナン中毒のメカニズム(ビタミンB6欠乏)が分かっているため、治療法は確立しています。医療機関では、原因(ギンコトキシン)によって妨害されたビタミンB6(ピリドキサールリン酸/ピリドキシン)を投与することで、症状が速やかに改善したというヒトでの症例報告が一貫して認められています [2, 3, 7]。

この章のポイント

  • 「何個まで安全」という公式な上限値はなく、一覧表の「目安」を参考にしてください [4]。
  • 成人でも10〜50個での急性中毒報告があり、「数粒を時々」が安全ラインです [1, 6]。
  • 中毒の原因は「ギンコトキシン」で、ビタミンB6の働きを阻害し痙攣などを引き起こします。
  • 痙攣や繰り返す嘔吐が見られたら、食べた量や時間をメモして直ちに医療機関を受診してください。

ギンナン中毒のよくある疑問(発症時間・生食・何歳から?)

安全目安とあわせて、中毒に関する特に多い疑問について深掘りします。

中毒症状はいつ(何時間後)出る?

症状は、ギンナンを摂取してから1時間〜12時間後に現れるのが典型的と報告されています [1]。

ただし、個人差が大きく、食べた量や体調、飲酒の有無[2]などによって、もっと遅く(例えば翌日)に症状が出る可能性もゼロではありません。

お子さんが銀杏を食べた日は、少なくとも当日の夜〜翌朝までは、体調に変わったところがないか(特に神経症状)を注意深く見守るようにしてください。

ギンナンは生で食べても大丈夫?生焼けのリスク

「加熱しても毒は消えない」と解説しましたが、「では生食は?」という疑問も生じます。

生食・生焼けは避ける/加熱しても完全無毒化は保証されない(耐熱性のため) [1][5]。加熱で減る可能性は示唆されますが残存します [8]。

結論から言えば、ギンナンの生食は絶対に避けるべきです。生のギンナンは、そのギンコトキシンが全く減少していない状態であり、加熱したものより中毒のリスクが格段に高いと考えられます [1, 4, 5, 8]。「生焼け」も同様に危険です。公的資料でも「加熱しても毒性は消えない」とされており [1, 5]、家庭調理レベルで安全を保証することはできません [8]。

したがって、「生・生焼けは避け、しっかり火を通す」こと、そして「火を通しても、食べるのは少量(数粒)にとどめる」こと、この2点が重要です。

子供は「何歳から」食べられる?

前述の一覧表の通り、5歳未満の子供には与えないことを強く推奨します [5, 15]。

これには2つの大きな理由があります。

  1. 中毒のリスク: 子供は体が小さく、ギンコトキシンへの感受性が大人より高いと考えられています [4]。過去には少量を摂取しただけでも中毒を起こした子供の事例が報告されています [5]。また、2歳の小児が50〜60粒を摂取し、7〜9時間後に痙攣を起こした症例報告もあります [3]。
  2. 誤嚥・窒息のリスク: ギンナンは豆やナッツ類と同様、丸く、硬さがあるため、噛む力や飲み込む力が未発達な子供は、喉や気管に詰まらせる「誤嚥・窒息」のリスクが非常に高いです。消費者庁も「硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで」と一般的に注意喚起しています [15]。

この章のポイント

  • 中毒症状は食べてから1〜12時間後に出ることが多いですが、個人差があります [1]。
  • 生食・生焼けはリスクが高いため絶対に避け、必ず加熱してください [1, 4, 5, 8]。
  • 5歳未満の子供は「中毒」と「誤嚥・窒息」のダブルリスクがあるため、与えないでください [5, 15]。

ギンナンの栄養と、気になる「効能」のウソ?ホント?

ギンナンは、危険な側面だけでなく、もちろん栄養価も持っています。そして、「咳止めに効く」といった伝統的な効能も耳にします。ここでは、その栄養と効能について科学的に見ていきましょう。

ギンナンに含まれる主な栄養素

ギンナン(生、100gあたり)には、以下のような栄養素が含まれています [11, 12]。

  • エネルギー: 168 kcal
  • たんぱく質: 4.7 g
  • 脂質: 1.6 g
  • β-カロテン(ビタミンA): 体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持を助けます。
  • ビタミンC: 抗酸化作用を持ち、免疫機能の維持に関わります。
  • カリウム: 体内の塩分(ナトリウム)の排出を助けます。

このように、ギンナンは種実類の中では比較的低脂質・高炭水化物で、ビタミン類も含む食品です。ただし、これらの栄養素を期待してギンナンを「たくさん食べる」ことは、前述の中毒リスクを考えると絶対に推奨されません。

【科学的視点】「咳止め」「頻尿改善」は本当か?

ギンナンは漢方の世界では「白果(はくか)」と呼ばれ、古くから咳止めや頻尿・夜尿症の改善に使われてきた歴史があります。

では、この伝統的な効能は、現代の科学(医学)でどの程度証明されているのでしょうか?

結論から言うと、「ギンナンの実(種子)」を摂取することによる咳止めや頻尿改善の効果について、ヒトを対象とした信頼性の高い臨床研究(質の高いRCTやメタ分析)は、2025年11月13日時点で見当たりません [9]。

【注意】「イチョウ葉エキス」との混同健康食品などで見かける「イチョウ葉エキス」は、ギンナンの「葉」から抽出したもので、「実(種子)」とは全くの別物です。イチョウ葉エキスは主に血液循環の改善(認知機能など)に関する研究が行われていますが [9]、ギンナンの実(白果)の効能とは関係ありません。

現時点では、動物実験や細胞レベルの研究報告は散見されますが、それがそのままヒトでの有効性を意味するわけではありません。

むしろ、漢方の世界でも「白果」は副作用(中毒)の報告が多い生薬の一つとして認識されています [16]。

したがって、咳や頻尿といった症状の改善を期待してギンナンを食べることは、科学的根拠が不十分であり、中毒のリスクが有効性を上回る可能性があるため推奨できません。

この章のポイント

  • ぎんなんにはβ-カロテンやビタミンCなどの栄養素も含まれますが、栄養補給目的で多く食べるべきではありません。
  • 伝統的に言われる「咳止め」「頻尿改善」の効能は、現在のところヒトでの信頼できる科学的証拠(エビデンス)が不足しています [9]。
  • 効能を期待して食べ過ぎることは、深刻な中毒リスクを伴うため避けるべきです。

これで完璧! ギンナンの美味しい食べ方と下処理・保存法

中毒のリスクと効能の限界を理解した上で、次は「安全な量」でギンナンを美味しく楽しむための実用的な方法をご紹介します。

旬と選び方、下処理の注意点

  • 旬: ギンナンの旬はです。イチョウの木から実が落ちる頃(9月〜11月頃)が収穫期です [10]。
  • 選び方: 殻が固く、白くきれいなものを選びましょう。
  • 下処理の注意:
    • 臭い: 銀杏特有の強い臭いは、可食部(実)ではなく、外側の柔らかい果肉(外種皮)が原因です。この臭いは中毒成分とは無関係です [5]。
    • 皮膚炎: この外果肉には、ウルシオールに似た皮膚刺激成分が含まれるため、素手で触るとかぶれることがあります [5]。下処理の際はゴム手袋などを着用することをお勧めします。

簡単・安全な下処理(殻割り&薄皮むき)

  1. 殻割り(ペンチ):
    • ギンナンの殻の「つなぎ目」の部分をペンチやギンナン専用の殻割り器で挟み、少し力を入れて「パキッ」と音
      がするまで割れ目を入れます。中の実を潰さないよう注意してください。
  2. 殻割り(封筒+電子レンジ):
    • ギンナン10〜15個ほどを紙封筒(茶封筒など)に入れます。
    • 封筒の口を2〜3回しっかり折ります。
    • 電子レンジ(600W)で30秒〜1分ほど加熱します。「パンッ」という音が数回したら止めます。
    • ※加熱しすぎると実が固くなるので注意。また、破裂音が大きいことがあるので最初は短時間から試してください。
  3. 薄皮むき:
    • 殻から取り出したギンナンを、熱湯に1〜2分つけます。
    • 冷水に取り、指でこすると薄皮がツルンとむけやすくなります。

旬を味わう簡単レシピ3選

  1. 定番「塩煎りギンナン」
    • 殻を割ったギンナン(薄皮はあってもOK)をフライパンに入れ、中火で乾煎りします。
    • 時々フライパンを揺すりながら、ギンナンの表面に焼き色がつき、鮮やかな緑色になるまで煎ります。
    • 火を止め、熱いうちに塩を振って全体にまぶします。
  2. 「ギンナンとキノコの炊き込みご飯」
    • 米を研ぎ、通常の水加減に合わせます。
    • そこから大さじ2杯ほどの水を減らし、醤油・酒・みりん(各小さじ2程度)、和風だしを加えます。
    • 下処理したギンナン、ほぐしたシメジやマイタケ、細切りにした油揚げを乗せて炊き込みます。
  3. 郷土料理「のっぺ」(新潟県)や「大山おこわ」(鳥取県)
    • 日本の多くの郷土料理でも、ギンナンは彩りや食感のアクセントとして使われています [13, 14]。里芋やニンジン、鶏肉などと一緒に煮物に加えるのもおすすめです。

長持ちさせる保存方法

ギンナンは常温で放置するとカビが生えたり乾燥したりします。

  • 冷蔵保存(殻付きのまま / 短期):
    • 殻付きのままのギンナンをビニール袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。1〜2週間程度が目安です。
  • 冷凍保存(殻をむいて / 長期):
    • 最もおすすめの方法です。殻と薄皮をすべてむき、茹でるか煎るかして火を通します。
    • 粗熱が取れたら、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。
    • 冷凍用の保存袋に平らにして入れ、冷凍庫で保存します(約1ヶ月程度)。使うときは凍ったまま調理できます。

この章のポイント

  • ギンナンの臭いは外果肉が原因で、皮膚がかぶれることがあるため手袋を推奨します [5]。
  • 殻割りはペンチや電子レンジで安全に行えます。
  • 保存は、殻付きなら冷蔵、長期保存なら殻と薄皮をむいて加熱し「冷凍」がおすすめです。

【FAQ】ギンナン(銀杏)に関するその他の疑問

最後に、ギンナンに関してよく寄せられる質問に、科学的根拠に基づいてお答えします。

「1日何個まで?」という質問も多いですが、銀杏を何個食べたら“食べ過ぎ”になりますか?

最も多い質問ですが、「1日何個」や「何個から」という明確なラインはありません [4]。ただし、成人が10〜50個の摂取で急性中毒を起こしたという報告があります [1, 6]。この記事では、これらの症例報告に基づき、安全をみて「二桁に達しない数粒(例:片手のひらに軽く乗る程度)」を時々楽しむ程度に留めることを推奨しています。

妊婦や授乳中でも食べられますか?

一覧表の通り、避けるか、ごく少量(例:1〜2粒を味見する程度)に留めることを推奨します。ギンナンの摂取に関する公式な評価や耐容量は妊婦・授乳婦に対しても設定されていません。胎児・乳児への安全性が不確実であるため、リスクを優先して慎重に判断してください。

ギンナンは毎日食べても大丈夫ですか?

ヒトでギンコトキシンが慢性的に蓄積することを示す明確なエビデンスは限定的です。 一方、リスク評価の主軸は単回多量摂取による急性中毒の症例であり [1, 6]、反復摂取は個人のB6充足や体調次第で閾値を下げ得るという合理的懸念があります(推論レベル)。ギンナンは「秋の味覚として、時々、少量を楽しむ」食品と心得てください。「毎日少しずつ」ではなく、「シーズン中にときどき少量」が安全な付き合い方です。

臭いギンナンと中毒は関係ありますか?

関係ありません。特有の臭いは外側の果肉部分のもので、中毒成分(ギンコトキシン)は中の「実(種子)」に含まれています [5]。ただし、外果肉には皮膚を刺激する成分が含まれるため、取り扱いには注意が必要です。

特に中毒に注意すべき人はいますか?

はい。「子供」や「妊婦・授乳婦」に加え、以下に該当する方は摂取に注意が必要です。

  • てんかんの既往歴がある方: ギンコトキシンは脳の興奮を抑えるGABAの生成を阻害するため、発作を誘発する懸念があります。
  • ビタミンB6が不足しがちな方: 栄養状態が良くない場合、もともとのビタミンB6が少ないため、中毒の閾値が下がる可能性があります。
  • 飲酒と併用する方: 成人の中毒症例には、飲酒を伴うケースが報告されており [2]、アルコールが発症に何らかの影響を与えている可能性が指摘されています。お酒のおつまみとして楽しむ際は、特に量(数粒程度)を厳守してください。

犬や猫(ペット)に銀杏を与えてもいいですか?

絶対に与えないでください。 人間よりも体が小さい犬や猫にとって、ギンコトキシンは非常に危険です。犬が銀杏の種子を誤食し、嘔吐や痙攣などの神経症状を示した症例が報告されています [17]。また、ASPCA(米国動物虐待防止協会)も、イチョウの種子(ギンナン)はペットに毒性があると注意喚起しています [18]。少量でも重篤な中毒を引き起こす危険性があるため、絶対に与えないでください。また、加熱前の生の状態や、落ちている銀杏を散歩中に誤食しないよう、飼い主が厳重に注意する必要があります。万が一食べてしまった場合は、すぐに動物病院に連絡してください。

最終確認:ギンナンの安全ルール迷ったときは、「片手のひらに軽く乗るくらいまで」を目安にしましょう。

  • 5歳未満ペットには出さない(中毒と誤嚥のリスク)。
  • 大人も「数粒を時々」。おつまみでの食べ過ぎはNG。
  • 痙攣や繰り返す嘔吐が出たら、食べた量をメモしてすぐ受診

まとめ:ギンナンは「安全な量」を守って楽しむ秋の味覚

この記事では、ギンナンの安全性と効能について、科学的な根拠(エビデンス)に基づいて解説しました。

  • ギンナン中毒は「ギンコトキシン」によるもので、科学的に確立された事実です。
  • 「何個まで安全」という明確な基準はなく [4]、「5歳未満の子供には与えない」(中毒と誤嚥の両リスク)[5, 15]、「健康な成人でも数粒を時々」 [1, 6] が安全な目安です。
  • 生食・生焼けは絶対に避け、必ず加熱してください [1, 4, 5, 8]。
  • 「咳止め」などの伝統的効能は、ヒトでの科学的根拠が不足しており、効能を期待して食べることは推奨されません [9]。
  • ペット(犬・猫)にとっては非常に危険なため、絶対に与えないでください [17, 18]。

ギンナンは、リスクを正しく理解し、「安全な量」を守ってこそ楽しめる秋の特別な味覚です。この記事の情報を参考に、賢く、安全に、旬の味を楽しんでいただければ幸いです。

【免責事項】

この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。この記事は2025年11月時点の最新情報に基づいています。持病のある方(特にてんかんなど)、妊娠中・授乳中の方、その他健康に不安のある方は、ギンナンの摂取に関して必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。

【参考文献リスト】

[1] 国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)安全情報部. 食品安全情報(化学物質)No.17/2023. 2023-08-16. (香港CFSのギンナン中毒注意喚起の要点を抄訳紹介). https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202317c.pdf

[2] Azuma F, Nokura K, Kako T, Kobayashi D, Yoshimura T, Wada K. An Adult Case of Generalized Convulsions Caused by the Ingestion of Ginkgo biloba Seeds with Alcohol. Internal Medicine. 2020;59(12):1555–1558. https://doi.org/10.2169/internalmedicine.4196-19

[3] Kajiyama Y, Fujii K, Takeuchi H, Manabe Y. Ginkgo seed poisoning. Pediatrics. 2002;109(2):325–327. https://doi.org/10.1542/peds.109.2.325

[4] 公益財団法人日本中毒情報センター(JPIC). 情報提供資料:ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう. 作成 2020-10-13/更新 2023-09-29. https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/ginkgo20230929-2.pdf

[5] 東京都保健医療局 健康安全研究センター. 「食品衛生の窓」ギンナン(イチョウの実). https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/dokusou/18.html

[6] 内閣府 食品安全委員会. 食品安全関係情報:香港衛生当局によるギンナン中毒事例の公表(注意喚起). 2018-11-06(syu05040710360); 2023-06-13(syu06080410360). https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05040710360 ; https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu06080410360

[7] Kosaki Y, et al. Epileptic Seizure from Ginkgo Nut Intoxication in an Adult. Cureus. 2020;12(2):e7031. https://doi.org/10.7759/cureus.7031

[8] Lim HB, Kim DH. Effect of heat treatment on 4′-O-methylpyridoxine content in Ginkgo biloba seed extract. J Sci Food Agric. 2018;98(13):5153–5156. https://doi.org/10.1002/jsfa.9017

[9] 厚生労働省 e-JIM. イチョウ[ハーブ—医療者向け](葉エキスの概説・種子の臨床推奨なしを含む). https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/25.html

[10] 農林水産省. 食べ物と日本の四季:ギンナンは秋(こどもナビ). https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/learn/seasons2.html

[11] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(総合トップ). https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html

[12] 文部科学省 食品成分データベース. 「種実類/ぎんなん/生」一般成分ほか. https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05008_7

[13] 農林水産省. うちの郷土料理:のっぺ(新潟)(材料にぎんなん). https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokuhinbunka/k_ryouri/search_menu/menu/noppe_niigata.html

[14] 農林水産省. うちの郷土料理:大山おこわ(鳥取)(季節の具材としてぎんなん). https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokuhinbunka/k_ryouri/search_menu/menu/daisen_okowa_tottori.html

[15] 消費者庁. Vol.580:硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで! 2022-01-28. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20220128/

[16] J-GLOBAL(科学技術振興機構). 食薬両用漢方薬による副作用の文献分析(白果は副作用報告が多い生薬の一つとして集計). https://jglobal.jst.go.jp/public/201902268102961774

[17] 藤 将大, 有田汐紗, 太田貴子, 冨永博英, 平川 篤, 杉山伸樹. 犬におけるイチョウ種子(銀杏)誤食が疑われた中毒の1例. 日本獣医師会雑誌. 2023;76(11):e304–e308. https://doi.org/10.12935/jvma.76.e304

[18] ASPCA(米国動物虐待防止協会)Animal Poison Control. Fall Plants: Hazardous or Harmless?(ギンコの雌株の種子はginkgotoxinを含み有毒と注意喚起). 2022-10-19 ほか季節記事. https://www.aspca.org/news/fall-plants-hazardous-or-harmless

末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。