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GLP-1ダイエットとは?何キロ痩せる?効果と副作用・危険性|治療薬の真実
この記事でわかること
この記事は、GLP-1受容体作動薬(注射・飲み薬)について、2025年11月時点の最新の科学的根拠(エビデンス)に基づき解説します。
- GLP-1ダイエットの「定義」と本来の目的
- GLP-1が「痩せる」とされる本当の仕組み
- 臨床試験で示された「何キロ痩せるか」の具体的なデータ
- GLP-1ダイエットの「メリット」と「デメリット(危険性)」のまとめ
- 消化器症状からイレウス(腸閉塞)まで、知っておくべき副作用
- 使用中止後の「リバウンド」に関する最新のデータ
- 「GLP-1サプリ」と医薬品の決定的な違い
【はじめに】GLP-1ダイエットへの過度な期待と現実
「注射だけで楽に痩せる」「夢のダイエット薬」——。GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)について、そんな言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、結論から申し上げます。GLP-1薬は「楽して恒久的に痩せる魔法の薬」ではありません。
本来、これらの薬剤は2型糖尿病や特定の条件を満たす「肥満症」の治療薬として開発・承認されたものです。
この記事は、GLP-1薬を美容(ダイエット)目的で安易に推奨するものではありません。読者の皆様が、ご自身の健康を守るために、その本当の効果とリスクを正確に理解し、冷静な判断を下せるようになることを目的としています。
この章のポイント
- GLP-1薬は「魔法の薬」ではなく、2型糖尿病や肥満症の「治療薬」です。
- この記事は、美容目的での使用を推奨するものではありません。
- 科学的根拠に基づき、効果とリスクを正確に理解することが重要です。
GLP-1ダイエットとは? 一言でいうとこういう治療薬です
GLP-1ダイエットとは、本来は2型糖尿病や肥満症の治療薬である「GLP-1受容体作動薬」を用いて体重減量を目指す医療行為のことです。
日本では、特定の基準(BMIや併存疾患)を満たす「肥満症」患者への処方に限り、保険適用が認められています。それ以外の、美容や健康な人のダイエット目的での使用は、国の承認外である「適応外使用」(自由診療)にあたります。
この章のポイント
- GLP-1ダイエットは、「GLP-1受容体作動薬」という医薬品を使う医療行為です。
- 保険が適用されるのは、厳格な基準を満たす「肥満症」の治療のみです。
- 美容目的での使用は「適応外使用」となり、推奨されていません。
そもそもGLP-1とは? 体内で働くホルモンの正体
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とは、もともと私たちの体内に存在するホルモンの一種です。食事をして血糖値が上がると小腸から分泌され、主に以下のような働きをします。
- インスリン分泌を促す:膵臓(すいぞう)に働きかけ、血糖値を下げるインスリンの分泌を促します。
- 胃の動きを遅らせる:食べた物が胃から腸へ送られるスピードをゆっくりにします。
- 食欲を抑える:脳の視床下部にある満腹中枢に作用し、満腹感を持続させ、食欲を抑制します。
このGLP-1の働きから、俗に「痩せホルモン」と呼ばれることもありますが、GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1の作用を模倣または強化する「医薬品」です。食欲が自然と抑えられ、食事量が減ることで、結果として体重減少につながる可能性が示されています。
(コラム)マンジャロはGLP-1だけじゃない? GIPとは最近話題の薬剤「マンジャロ」(一般名:チルゼパチド)は、GLP-1だけでなくGIPという別のホルモンの受容体にも同時に作用する、世界初の「GIP/GLP-1受容体作動薬」です。GIPもGLP-1と同様にインスリン分泌を促す働きがあり、この2つが組み合わさることで、より強力な血糖改善効果や体重減少効果が期待されています[1]。
この章のポイント
- GLP-1は、食後に分泌されインスリン分泌を促し、食欲を抑える体内ホルモンです。
- GLP-1薬は、このホルモンの作用を模倣する「医薬品」です。
- マンジャロは、GLP-1とGIPの2つのホルモンに作用する新しいタイプの薬剤です[1]。
2種類のGLP-1:「治療薬」と「美容目的(自由診療)」
GLP-1薬と一口に言っても、その目的によって大きく2つに分けられます。それが「治療薬」としての使用(保険適用)と、「美容目的」での使用(自由診療)です。
本来の用途①:2型糖尿病の治療薬(保険適用)
GLP-1薬は、まず「2型糖尿病」の治療薬として開発されました。血糖値が高い時だけインスリン分泌を促すため、単独使用では低血糖を起こしにくいという利点があります。
- 主な薬剤:オゼンピック(注射)、リベルサス(飲み薬)、マンジャロ(注射)など
本来の用途②:肥満症の治療薬(保険適用)
高い体重減少効果が認められたことから、一部の薬剤は「肥満症」の治療薬としても承認されています。
- 主な薬剤:ウゴービ(注射)、ゼップバウンド(注射 ※マンジャロと同一成分)
ただし、日本で「肥満症」治療として保険適用で処方されるには、非常に厳格な条件があります。
【重要】肥満症での保険適用の条件以下のすべてを満たす必要があります[3][4]。
- 食事・運動療法を行っても効果が不十分であること。
- 以下のいずれかに該当すること。
- BMI 27以上で、肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病など)を2つ以上有する
- BMI 35以上
- 薬剤ごとに定められたルール(例:ウゴービの最大投与期間は68週間まで[3])を守る必要があります。
(※ご自身のBMIがわからない方は、FAQ「Q. 自分が“肥満症の治療対象”かチェックする方法は?」もご参照ください。)
「美容目的で少し痩せたい」という理由では、保険適用には絶対になりません。
読者の関心事:美容ダイエット目的の使用(自由診療)
一方で、一部のクリニックでは、上記の保険適用の条件を満たす人(=肥満症の診断基準を満たす人)に対し、美容やダイエット目的でGLP-1薬を処方しています。これが「自由診療」です。
自由診療は全額自己負担となるだけでなく、「適応外使用」にあたります。
「適応外使用」とは?かんたんに言うと、「国が認めた目的(この場合は糖尿病や肥満症の治療)以外で、お薬をダイエット目的に流用している状態」です。
厚生労働省や関連学会は、美容・痩身目的での適応外使用について、有効性・安全性が確認されていないとして、強く注意喚起を行っています[2][5]。
保険適用と自由診療の違い(比較表)
この2つの違いを、以下の表にまとめます。
| 比較項目 | 保険診療(治療目的) | 自由診療(美容目的) |
|---|---|---|
| 目的 | 2型糖尿病、または肥満症の治療 | ダイエット、痩身 |
| 対象者 | 診断基準(BMI・併存症など)を満たす患者 | 基準を満たすか不明な、痩せたい人 |
| 費用 | 保険適用(例:3割負担) | 全額自己負担(高額) |
| 国の承認 | 承認された範囲内での使用 | 適応外使用 |
| リスク | 副作用(管理下) | 副作用+救済制度の対象外リスク[2] |
この章のポイント
- GLP-1薬は、本来「2型糖尿病」または「肥満症」の治療薬です。
- 保険適用となるにはBMI等の厳格な条件があり、ウゴービは最大68週というルールもあります[3]。
- 美容目的の「自由診療」は国の承認外(適応外使用)であり、公的機関は推奨していません[2]。
GLP-1ダイエットで何キロ痩せる?臨床試験データ(2025年最新)
GLP-1薬が「治療薬」として承認されているのは、臨床試験で明確な有効性が示されているためです。「何キロ痩せるか」についての、代表的な臨床試験(ランダム化比較試験、以下RCT)の結果を紹介します。
- チルゼパチド(ゼップバウンド):
- 72週間の使用(最大用量)で、平均約15%〜21%の体重減少が認められました[6]。
- さらに、3年間の長期追跡研究(SURMOUNT-1 3年)では、減量効果が持続するだけでなく、糖尿病発症リスクを大幅に抑制する可能性も示唆されています[7]。
- セマグルチド(ウゴービ):
- 68週間の使用で、平均約15%の体重減少が認められました[8]。
これらの数値は非常に大きいものですが、絶対に忘れてはならない前提条件があります。それは、これらの試験が「食事・運動療法との併用」で行われていることです。薬剤だけで達成された結果ではない点に、十分な注意が必要です。
具体例でイメージ:例えば、体重80kgの人が15%の体重減少を達成した場合、約12kgの減少(80kg → 68kg)に相当します。※これはあくまで臨床試験の平均値に基づく一例であり、治療薬として適切に使用した場合の目安です。効果には大きな個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。
(コラム)体重減少以外の効果(心血管イベントの抑制)2023年に発表された大規模試験(SELECT試験)では、肥満(BMI 27以上)で心血管疾患の既往がある人(糖尿病ではない)において、セマグルチド(ウゴービ)の使用が心筋梗塞や脳卒中などの発症を20%抑制したと報告されました[9]。これは、GLP-1薬が単に体重を減らすだけでなく、心臓や血管を守る効果も持つ可能性を示す重要なデータです。
この章のポイント
- 肥満症の治療において、GLP-1薬は平均15%〜21%という高い体重減少効果が報告されています[6][8]。
- これらの結果は、あくまで「食事・運動療法との併用」が前提です。
- 体重減少に加え、糖尿病発症予防[7]や心血管イベント抑制[9]といった健康上の利点も報告されています。
【最重要】GLP-1ダイエットの危険性と主な副作用
高い効果が期待できる一方で、医薬品である以上、必ず副作用のリスクが伴います。特に適応外使用では、そのリスク管理がより重要になります。
よくある副作用:消化器症状
最も多く報告されるのは、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状です[2]。これらは使用開始時や増量時に出やすく、多くは時間とともに軽減するとされていますが、日常生活に支障をきたす場合もあります。
重大な副作用(頻度は稀だが注意)
頻度は稀ですが、以下のような重篤な副作用も報告されており、添付文書で警告されています[2][5]。
- 低血糖:特に他の糖尿病治療薬(SU薬やインスリン)と併用した場合に、深刻な低血糖(冷や汗、動悸、意識障害など)を引き起こすリスクがあります。
- 急性膵炎:激しい腹痛や背中の痛みを伴う急性膵炎の報告があります[11]。ただし、その絶対的な頻度は非常に稀(まれ)であるとされ、GLP-1薬との明確な因果関係については現在も検証が続けられています。
- 胆嚢・胆石関連:複数の研究を解析した結果(メタ解析)、GLP-1薬の使用は胆嚢炎や胆石症といった胆嚢・胆道疾患のリスクを有意に増加させる可能性が指摘されています[10]。
- イレウス(腸閉塞):
- 2025年7月、国内のGLP-1薬の添付文書に「重大な副作用」としてイレウス(腸閉塞)が追記されました[5]。
- 高度な便秘、お腹の張り(腹部膨満)、持続する腹痛、嘔吐などの症状が現れた場合は、腸閉塞の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。
- 甲状腺C細胞腫瘍とその他のがん:動物実験(げっ歯類)で甲状腺の腫瘍リスクが示されました。ヒトでの因果関係は未確立ですが、甲状腺髄様がんの既往歴がある人などについては、安全性が確立しておらず、原則として慎重な投与が求められます。なお、膵がんなどの他のがんのリスクについては、現時点(2025年)の大規模な観察研究では明確なリスク上昇は示されていません[12]が、引き続き慎重な評価が必要です。
安易な個人輸入やオンライン診療の危険性
適応外使用を公的機関が懸念する最大の理由の一つが、健康被害のリスクです。
- 偽造薬のリスク:個人輸入や非正規のルートでは、偽造薬が紛れ込んでいる危険性があります[13]。有効成分が含まれていなかったり、不純物が混入していたりする可能性があり、重篤な健康被害につながりかねません。
- 不適切な指導:医師の十分な診察や指導なしに処方されると、副作用が出た時の対応が遅れたり、そもそも使用すべきでない人(例:膵炎の既往がある人)に使用されたりする危険があります。
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性:国の公的な救済制度(入院費などを補償する制度)は、「適正な使用」が前提です。美容目的での適応外使用や、医師の指示を守らない不適切な使用によって重大な健康被害が生じた場合、「適正な使用」とは認められず、救済の対象外となる可能性が非常に高いです[2][5]。
【読者の皆様へ】行動のヒントもし使用を迷った場合は、まず“美容クリニック”に相談する前に、ご自身の健康状態をよく知るかかりつけ医や、糖尿病・肥満症を専門に診ている医療機関(FAQ参照)で相談することをおすすめします。
この章のポイント
- 吐き気や下痢などの消化器症状は、比較的よく見られる副作用です。
- 稀ですが、急性膵炎[11]、胆嚢疾患[10]、そしてイレウス(腸閉塞)[5]などの重大な副作用のリスクもあります。
- 個人輸入や安易な自由診療は、偽造薬や不適切な管理、救済制度の対象外となる危険性を伴います[2][13]。
GLP-1ダイエットの「落とし穴」:リバウンドと費用
仮にGLP-1薬で体重が減ったとしても、2つの大きな「落とし穴」が待っています。
やめたらどうなる? 使用中止後のリバウンド問題
最も重要な点の一つが、使用をやめると体重が戻りやすい(リバウンドする)ことです。
- セマグルチド(ウゴービ)の試験:
68週間使用して体重が減少した人が、その後使用を中止した研究(STEP1延長試験)があります。その結果、中止後1年で、減少した体重の約3分の2が元に戻ってしまった(平均11.6%ポイントの体重再増加)ことが報告されています[14]。 - チルゼパチド(マンジャロ)の試験:
36週間使用して体重が減少した人が、その後「使用継続群」と「中止群(偽薬)」に分かれた試験(SURMOUNT-4)があります。1年後、継続群はさらに体重が減少したのに対し、中止群は平均14%の体重再増加(リバウンド)が認められました[15]。
これは、GLP-1薬が「体質を改善する薬」ではなく、あくまで「慢性疾患治療薬」であることを意味します。
「慢性疾患治療薬」とは?つまり、高血圧の薬と同じように、「薬でコントロールし続ける」ことを前提とした薬、というイメージです。
実際に、セマグルチド(ウゴービ)を2年間継続使用した試験(STEP-5)では、その減量効果が維持されたことも報告されています[16]。薬の効果が切れれば、食欲は元に戻り、生活習慣(食事・運動)が改善されていなければ、体重も元に戻りやすいのです。
費用はいくら? 保険適用と自由診療の圧倒的な価格差
費用も大きな問題です。
- 保険適用(3割負担)の場合:
肥満症や糖尿病の「治療」として処方される場合。薬剤の種類や用量にもよりますが、自己負担額は月額数千円〜2万円程度(※薬剤費のみ)が目安です。 - 自由診療(全額自己負担)の場合:
美容目的の「適応外使用」の場合。クリニックが自由に価格を設定できるため、非常に高額になります。月額で数万円から、十数万円かかるケースも珍しくありません。
【読者の皆様へ】行動のヒントもし自由診療を検討するなら、「1ヶ月だけ」でなく、「1年後、3年後も、リバウンドを防ぐためにこの金額を払い続けられるか?」を一度紙に書き出してシミュレーションしてみることをお勧めします。
この章のポイント
- GLP-1薬は「体質改善」ではなく、使用中の食欲を抑える「慢性疾患治療薬」です。
- 使用を中止すると、1年で大幅にリバウンドしたという複数の臨床データがあります[14][15]。
- 継続すれば効果は維持される報告[16]もありますが、自由診療では月額数万〜十数万円と非常に高額です。
GLP-1ダイエットのメリット・デメリットまとめ
ここまで解説してきたGLP-1ダイエットの主なメリット(利点)とデメリット(欠点・リスク)を一覧にまとめます。
主なメリット(利点)
- 高い体重減少効果:適切な使用(治療目的・生活習慣改善併用)により、平均15%前後、薬剤によっては20%を超える体重減少が臨床試験で報告されています[6][8]。
- 食欲の自然な抑制:満腹感を持続させ、空腹感を減らす作用があるため、食事制限のストレスが比較的少ないとされます。
- 体重以外の健康メリット:2型糖尿病の発症予防[7]や、特定の集団(心血管既往のある肥満者)における心筋梗塞・脳卒中のリスク低下[9]が報告されています。
主なデメリット(欠点・リスク)
- 副作用のリスク:吐き気・下痢などの消化器症状が比較的多く見られます。
- 重大な副作用のリスク:頻度は稀ですが、イレウス(腸閉塞)[5]、急性膵炎[11]、胆嚢疾患[10]などの重篤な副作用が報告されています。
- リバウンドの問題:使用を中止すると、食欲が元に戻り、高い確率で体重がリバウンド(再増加)することが示されています[14][15]。
- 高額な費用(自由診療):美容目的の適応外使用は全額自己負担となり、月額数万〜十数万円の費用が継続的にかかります。
- 適応外使用のリスク:自由診療(適応外使用)で重い副作用が出た場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性があります[2]。
この章のポイント
- メリットは高い減量効果と食欲抑制、健康上の副次効果が期待できる点です。
- デメリットは副作用(特にイレウス)、中止後のリバウンド、自由診療での高額な費用です。
- 「治療薬」であることのリスクとベネフィットを天秤にかける必要があります。
よくある質問(FAQ)
医薬品とは全くの別物です。「GLP-1分泌促進」などを謳うサプリメント(健康食品)がありますが、これらは医薬品のGLP-1薬(マンジャロやウゴービなど)とは全く異なります。
医薬品のGLP-1薬は、体内で分解されにくいように化学構造が設計され、注射や特殊な経口製剤[17]によって体内に吸収されます。
2025年11月時点で、サプリメントが医薬品と同等の体重減少効果(例:15%減)を示すことを証明した、質の高い臨床研究(RCT)は確認されていません。また、海外では偽装成分を含むサプリメントの健康被害も報告されています[18]。
まずはご自身のBMIを計算してみてください。BMIは「体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)」で計算できます。(例:身長160cm、体重70kgなら、70 ÷ 1.6 ÷ 1.6 ≒ 27.3)日本肥満学会の基準ではBMI 25以上が「肥満」です。ただし、GLP-1薬の保険適用となるのは、原則として「BMI 35以上」または「BMI 27以上で、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のうち2つ以上の健康障害がある」場合です[4]。詳しくは本編の「保険適用の条件」の項をご覧ください。
個人差が非常に大きいですが、食欲の低下は比較的早期に感じられることが多いようです。体重減少の効果が明確に現れるまでには数週間〜数ヶ月かかるとされます。治療(保険適用)の場合、医師が効果や副作用を見ながら判断しますが、肥満症治療薬のウゴービは国内ルールで「最大68週(約1年半)」が投与期間の上限とされています[3]。自由診療の場合は明確なルールはありませんが、前述の通り、中止後のリバウンドが大きな課題となります。
有効成分と投与方法が違います。現在(2025年11月時点)、飲み薬(経口薬)として承認されているのは「リベルサス」(一般名:経口セマグルチド)で、これは2型糖尿病の治療薬です。
注射薬(オゼンピック、マンジャロなど)と同じGLP-1受容体作動薬ですが、吸収を助けるための特殊な技術(SNAC配合)が使われています[17]。効果や副作用の出方には個人差があります。
極めて危険であり、絶対に推奨されません。厚生労働省も警告している通り[13]、個人輸入される医薬品には偽造薬が紛れているリスクが非常に高いです。有効成分が全く入っていない、あるいは有害な不純物が混入している可能性があり、重篤な健康被害につながる恐れがあります。また、万が一健康被害が起きても、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
まずは、かかりつけの内科医にご相談ください。もし専門の医療機関をお探しの場合は、「糖尿病・内分泌内科」や「肥満症外来」などを標榜している病院やクリニックが相談先となります。美容クリニック(自由診療)に行く前に、まずはご自身の健康状態が治療(保険適用)の対象となるかを、これらの医療機関で相談することをお勧めします。
すぐに処方を受けた医師に相談してください。特に、我慢できないほどの吐き気、激しい腹痛や背中の痛み、高度な便秘やお腹の張り、冷や汗を伴う低血糖症状など、いつもと違う異常を感じた場合は、直ちに医療機関を受診してください。自己判断で量を調整したり、我慢したりするのは危険です。
必ず処方した医師と相談してください。自己判断で急に中止すると、リバウンドのリスクが極めて高まります[14][15]。治療目的の場合、目標体重への到達度や生活習慣の定着度合いを見ながら、医師が中止または減量を判断します。自由診療の場合でも、中止の際は必ず医師の管理下で行うべきです。
誰でも使えるわけではありません。GLP-1薬は、妊娠中・授乳中の人、小児などには使用できない場合があります。また、甲状腺髄様がんの既往のある方、重篤な胃腸障害(イレウスの既往など)のある方、膵炎の既往のある方、高齢者などは、安全性が確立していなかったり、副作用のリスクが高まったりする可能性があるため、原則として慎重な投与が必要とされています[2][5]。必ず医師の診断のもと、適切に処方される必要があります。
まとめ:GLP-1とどう向き合うべきか
GLP-1薬は、2型糖尿病や肥満症の治療において、画期的な進歩をもたらした「治療薬」です。しかし、それは「楽痩せ」を叶える魔法の薬ではありません。
美容目的での使用は、以下の点を冷静に評価する必要があります。
- 「適応外使用」であり、有効性・安全性が確立していないこと。
- 副作用のリスク(特に胆嚢疾患[10]やイレウス[5])があり、万が一の際に公的救済の対象外になり得ること[2]。
- 使用を中止すれば、リバウンドする可能性が極めて高いこと[14][15]。
- 自由診療では、非常に高額な費用がかかり続けること。
これらのリスクとコストを負ってでも使用すべきか、今一度立ち止まって考えることが賢明です。
代わりに心がけたいこと
もし、あなたがご自身の体重や健康に悩んでいるのであれば、まず取り組むべきは、GLP-1薬を探すことではなく、日々の生活習慣の見直しです。
- 食事の見直し:極端な制限ではなく、バランスの取れた食事を腹八分目で摂る。
- 活動量の増加:エレベーターを階段にする、一駅分歩くなど、日常の中で体を動かす機会を増やす。
- 質の良い睡眠:十分な睡眠は、食欲をコントロールするホルモンバランスを整えます。
健康的な体重管理の「王道」は、地道ですが、最も安全で持続可能な方法です。もしご自身での管理が難しい場合は、医師や管理栄養士といった専門家に相談することから始めてみてください。
【免責事項】この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。この記事は2025年11月時点の情報に基づいています。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方、あるいはGLP-1受容体作動薬の使用を検討されている方は、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。適応外使用(美容目的の自由診療)のリスクについて十分理解し、ご自身の責任において判断してください。
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