近年、グルテンフリーダイエットが注目を集めていますが、本当にグルテンは私たちが避けるべき悪者なのでしょうか? [1, 2]
もしかしたら、不調の原因はグルテンではなく、別のものかもしれません。
- 注記: このブログ記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスではありません。具体的な食事療法については、医師または栄養士にご相談ください。
グルテンと非セリアックグルテン過敏症
グルテンは小麦などに含まれるタンパク質です。セリアック病の方は、グルテンを摂取すると体に悪影響があるため、グルテンフリーダイエットが必要です。[8]
しかし、セリアック病ではないのに、パンやパスタなどを食べるとお腹の調子が悪くなる方がいます。これは「非セリアックグルテン過敏症(NCGS)」と呼ばれるものです。[6]
2011年の研究 [4] では、NCGSの方を対象に、グルテンあり・なしのグループに分けて比較した結果、グルテンありグループの方が消化器系の症状が強く出て、NCGSの存在が証明されたかと思われました。
しかし、同じ研究チームが追跡調査 [5] を行ったところ、グルテンの摂取量と症状に関連性は見られなかったのです。
真犯人は「FODMAP」?
実は、症状に影響を与えていたのは「FODMAP」と呼ばれる、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵する糖質でした。[7]
FODMAPは、様々な食品に含まれています。ほんの一例を上げると
- 果物: リンゴ、ナシ、スイカ、マンゴーなど
- 野菜: 玉ねぎ、ニンニク、キャベツ、ブロッコリーなど
- 豆類: レンズ豆、ひよこ豆、大豆など
- 穀物: 小麦、ライ麦、大麦など
- 乳製品: 牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど
- 甘味料: 果糖、蜂蜜、高果糖コーンシロップなど
に多く含まれています。
FODMAPを摂取することで、
- お腹の張り
- ガス
- 腹痛
- 下痢
- 便秘
といった症状が現れることがあります。これらの症状は、過敏性腸症候群 (IBS) の症状と似ています。FODMAPはIBSの症状を悪化させる可能性がある [9]ため、IBSの方はFODMAPの摂取量を制限することが推奨されています。
つまり、グルテン過敏症だと思われていた方の中には、実はFODMAPに反応していた可能性があるということです。[3]
グルテンフリーダイエットは必要?
セリアック病と診断された場合は、グルテンフリーダイエットは必須です。しかし、そうでない場合は、FODMAPを少し減らすだけで症状が改善する可能性があります。
FODMAPはグルテンよりも避けるのが難しいのが現実です。ほとんどの方は、FODMAPを完全に排除するのではなく、少し減らすだけで症状が改善する可能性があります。
グルテンは体にとって必須の栄養素ではないため、グルテンフリーにしても問題はありません。しかし、グルテンフリーにすることで、食事が制限され、食費がかさみ、外食がしにくくなる可能性もあります。
もし、グルテン過敏症かもしれないと思ったら、自己判断でグルテンフリーにするのではなく、まずは医師に相談することをおすすめします。医師の指導のもと、適切な検査を行い、自分に合った食事療法を見つけることが大切です。
まとめ
- グルテン過敏症のような症状でも、原因は「FODMAP」の可能性があります。
- FODMAPは、野菜や果物など、様々な食品に含まれています。
- グルテンフリーダイエットは、セリアック病の方には必須ですが、そうでない場合は必ずしも必要ではありません。
- FODMAPはIBSの症状を悪化させる可能性があります。
- 不調を感じたら、自己判断せず、まずは医師に相談しましょう。
参考資料
[1] Kim HS, Patel KG, Orosz E et al.: Time Trends in the Prevalence of Celiac Disease and Gluten-Free Diet in the US Population: Results From the National Health and Nutrition Examination Surveys 2009-2014. JAMA Intern Med. 2016;176(11):1716-7.
[2] Lebwohl B, Cao Y, Zong G et al.: Long term gluten consumption in adults without celiac disease and risk of coronary heart disease: prospective cohort study. BMJ. 2017;357:j1892.
[3] Miller D: Maybe It’s Not the Gluten. JAMA Intern Med. 2016;176(11):1717-8.
[4] Biesiekierski JR, Newnham ED, Irving PM et al.: Gluten causes gastrointestinal symptoms in subjects without celiac disease: a double-blind randomized placebo-controlled trial. Am J Gastroenterol. 2011;106(3):508-14; quiz 15.
[5] Biesiekierski JR, Peters SL, Newnham ED et al.: No effects of gluten in patients with self-reported non-celiac gluten sensitivity after dietary reduction of fermentable, poorly absorbed, short-chain carbohydrates. Gastroenterology. 2013;145(2):320-8 e1-3.
[6] Biesiekierski JR, Newnham ED, Shepherd SJ et al.: Characterization of Adults With a Self-Diagnosis of Nonceliac Gluten Sensitivity. Nutr Clin Pract. 2014;29(4):504-9.
[7] Skodje GI, Sarna VK, Minelle IH et al.: Fructan, Rather Than Gluten, Induces Symptoms in Patients With Self-Reported Non-Celiac Gluten Sensitivity. Gastroenterology. 2018;154(3):529-39 e2.
[8] Ludvigsson JF, Rubio-Tapia A, van Dyke CT, et al.: Increasing incidence of celiac disease in North American population. American Journal of Gastroenterology. 2013;108:818-824.
[9] Halmos EP, Power VA, Shepherd SJ, et al.: A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome. 2014;146(1):67-75.