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乳酸菌の効果を科学的に解説|ストレス・睡眠・腸活と賢い選び方

この記事は2025年11月時点の最新情報に基づいています。

「なんとなく体に良さそう」という理由で、ヨーグルトや乳酸菌飲料を選んでいませんか? 便秘や腸内環境の改善、免疫サポート、肌荒れへの期待に加え、最近では「日々のストレス」や「睡眠の質」への影響も話題になっています。

しかし、乳酸菌に期待できる効果は、摂取する「菌の種類(菌株)」や「その人の体質」によって大きく異なります。

この記事では、乳酸菌に関する科学的な研究結果(エビデンス)に基づき、「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を整理し、読者の皆さんが自分に合った賢い付き合い方を見つけるための情報を提供します。

この記事でわかること

  • 乳酸菌、プロバイオティクス、ビフィズス菌の基本的な違い
  • お通じ、ストレス・睡眠、免疫、美肌に関する科学的根拠(エビデンス)の強さ
  • 【重要】ストレスや睡眠への効果が「特定の菌株」でのみ研究されている理由
  • 「生菌」と「死菌(ポストバイオティクス)」の違いと、それぞれの役割
  • 自分の目的に合った乳酸菌の「賢い選び方」と「摂り方」

そもそも乳酸菌とは?プロバイオティクスやビフィズス菌との違い

「乳酸菌」とは、特定の一つの菌の名前ではありません。糖を分解して「乳酸」を作り出す細菌の“総称”(ニックネーム)です [1]。専門的にはLactobacillus属(2020年に再分類されました[2])やLactococcus属などが含まれます。

「プロバイオティクス」は、国際的な定義で「適切な量を摂取したときに、宿主(私たち)に健康上の利益をもたらす生きた微生物」とされています [1]。乳酸菌の中には、このプロバイオティクスとして働くものが多く含まれます。

よく一緒に語られる「ビフィズス菌」は、厳密には乳酸菌とは異なる系統の菌ですが、腸内で乳酸や「酢酸」といった有益な物質を作るため、プロバイオティクスの文脈では近い仲間として扱われます [1]。

腸内での主な働き

乳酸菌やビフィズス菌は、腸内で以下のような働きをしていると考えられています [4-7]。

  • 腸内環境のバランス維持: 乳酸や酢酸を産生し、腸内を弱酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を抑えます。
  • バリア機能のサポート: 腸の粘膜を守るバリア機能を助ける可能性が報告されています。
  • 免疫細胞への働きかけ: 腸には全身の免疫細胞の多くが集まっており、乳酸菌がそれらの細胞に間接的に働きかけることが研究されています。
  • 他の善玉菌のエサ作り: 乳酸菌が作った乳酸が、今度は「酪酸(らくさん)」を作る別の善玉菌のエサとなり、腸内環境全体の維持に貢献します(クロスフィーディングと呼ばれる、善玉菌同士が連携して働く仕組みです)[6, 7]。

この章のポイント

  • 乳酸菌は「乳酸を作る菌」の総称で、ビフィズス菌とは厳密には異なるが近い仲間。
  • 「プロバイオティクス」とは、健康に良い影響を与える「生きた微生物」を指す。
  • 腸内を弱酸性に保ち、他の善玉菌と協力して腸内環境のバランス維持をサポートする。

乳酸菌の効果まとめ|便通・ストレス・睡眠・免疫・美肌のエビデンス

乳酸菌(プロバイオティクス)は様々な健康効果が研究されていますが、その「証拠の強さ」は目的によって異なります。

【ひと目でわかる】乳酸菌に期待される効果とエビデンスの目安

目的代表する分野エビデンスの強さの目安備考・注意点(※)
お通じ(便秘・下痢)消化管・腸内環境中〜やや強い菌株により効果や程度が異なる
ストレス・睡眠脳腸相関限定的(特定菌株のみ)シロタ株・CP2305株など、菌株依存
免疫サポート風邪・上気道感染症など中程度・結果は混在「風邪をひかなくなる」とは言えない
美肌・スキンケア腸肌相関まだ弱い〜研究段階治療目的ではなく“サポート”レベル

※目安としての効果量: 複数の研究報告をまとめると、便秘改善(排便回数が週に+0.3〜0.7回程度)[8]、抗生物質による下痢予防(リスクが約4割減少)[10]、風邪などの上気道感染症予防(リスクが約2割減少)[27]といった数値が示されていますが、これらはあくまで平均値であり、菌株や個人差が大きいです。

乳酸菌で便秘・下痢(お通じ)はどこまで改善できる?

これは、乳酸菌の研究分野で最も証拠が蓄積されている分野の一つです。

便秘に悩む成人を対象とした複数の臨床研究をまとめた分析(メタアナリシスと呼ばれる、複数の研究結果を統計的に統合した分析手法)では、プロバイオティクスの摂取が、便通の頻度や便が腸を通過する時間を、小~中程度改善する可能性が示されています [8, 9]。

また、抗生物質を服用した際に起こりやすい下痢(抗菌薬関連下痢症)の予防については、特定の菌株(Lactobacillus rhamnosus GG (LGG) や S. boulardii など)において、質の高い研究のまとめ(Cochraneレビューと呼ばれる、信頼度の高いまとめ論文)でも予防効果が繰り返し報告されています [10, 11, 12]。

乳酸菌はストレス・睡眠に本当に効く?(シロタ株・CP2305株の研究)

【最重要】これは乳酸菌「全般」に期待できる効果ではありません。

近年、「脳腸相関」(腸と脳が互いに影響し合う仕組み)が注目され、腸内細菌がストレスや精神状態に与える影響(サイコバイオティクス)が活発に研究されています。簡単に言うと、「腸を整えて、心と睡眠のコンディションもサポートしよう」という考え方です。

しかし、現時点で「ストレス緩和」や「睡眠の質向上」に関する具体的なデータが報告されているのは、ごく一部の「特定の菌株」に限られます。

  • Lactobacillus casei Shirota株(シロタ株):
    ストレスのかかる試験期間中の医学生を対象とした研究(RCT)で、この株を含む飲料を飲んだグループは、飲んでいないグループに比べ、睡眠の深さ(深いノンレム睡眠)の維持や、寝つきの悪化が抑制されたと報告されています [19]。
  • Lactobacillus gasseri CP2305株:
    高ストレス状態の健常な若年者を対象とした複数の研究(RCT)で、この株(多くは加熱殺菌された“死菌”として)を摂取することで、睡眠の質(PSQIという睡眠の質を点数化した質問票)が改善し、寝つきの時間が短縮した(特に男性で顕著)といった結果が報告されています [20, 21]。これらの研究をまとめた分析でも、睡眠の質を改善する可能性が示唆されています [22]。

重要なのは、これらの結果が「特定の菌株」を「高ストレス下などの特定の集団」でテストした結果であるという点です。他の乳酸菌で同じ効果が得られるかは不明であり、過度な一般化はできません。

乳酸菌と免疫力(風邪予防のエビデンスと限界)

「乳酸菌で免疫力アップ」という表現をよく見かけますが、これは期待が大きい一方で誤解も多いテーマです。

乳酸菌が腸の免疫細胞に働きかける可能性は広く研究されています [4, 5]。風邪など(上気道感染症)の発症リスクや罹患日数を減らす可能性を示唆する研究報告もあります [10, 11, 23, 27]。

しかし、菌株や対象者(小児、高齢者など)によって結果に差があり、証拠の質も中程度と評価されることが多いです [27]。米国のNIH(国立衛生研究所)も、「一部の集団で有益な可能性がある」としつつも、「証拠は混在している」と慎重な見解を示しています [24]。

「乳酸菌を摂れば必ず免疫力が上がる」「風邪をひかなくなる」といった断定は、現在の科学的根拠からは言えません。

腸と肌の関係(腸肌相関)|ニキビ・アトピーは良くなる?

「腸肌相関」という言葉の通り、腸内環境が皮膚の状態に影響するという考え方に基づき、アトピー性皮膚炎やニキビに対するプロバイオティクスの研究も行われています [15, 16, 17, 18]。

しかし、現時点では「腸内環境が整うことによる間接的な影響」が期待されている段階であり、特定の疾患に対する治療法として推奨できるほどの、一貫した強いエビデンスは限定的です [15, 16]。アトピー性皮膚炎の「治療」に関しては、Cochraneレビュー(信頼度の高いまとめ論文, 2018年)で「効果はほとんどないか不確実」と総括されています [13]。

この章のポイント

  • 便通改善(便秘・下痢予防)は、乳酸菌の機能として比較的エビデンスが強い分野。
  • ストレス・睡眠への効果は、「シロタ株」や「CP2305株」など特定の菌株で報告されている限定的な機能であり、すべての乳酸菌に当てはまらない。
  • 免疫への影響は「証拠は混在」しており、期待しすぎないバランスが大切。
  • 美肌への影響は「腸肌相関」として研究中だが、確立度はまだ高くない。

「死菌」は意味がない?生菌・ポストバイオティクスとの違い

「生きて腸まで届く」という言葉が有名ですが、一方で「死菌(加熱殺菌された菌)」を使った製品もあります。死菌は意味がないのでしょうか?

結論から言えば、死菌にも役割が期待されています。

  • 生菌(プロバイオティクス):
    生きたまま腸に届き、腸内で乳酸などを作ったり、定着して(一時的であっても)腸内環境に直接働きかけることが期待されます [1]。
  • 死菌(ポストバイオティクス、パラプロバイオティクス):
    国際的な定義では、ポストバイオティクスとは「不活化(死菌を含む)微生物調製物/またはその構成要素で健康利益を与えるもの」とされています [3]。
    パラプロバイオティクス(加熱殺菌された死菌など)もこの概念に含まれ、死菌やその菌体成分(細胞の壁など)が、腸の免疫細胞に直接働きかけるなど、生菌とは異なるメカニズムで体に良い影響を与える可能性が研究されています [3]。

先ほど紹介した「Lactobacillus gasseri CP2305株」の睡眠に関する研究も、多くは加熱殺菌された死菌(パラプロバイオティクス)を用いて行われています [20, 21, 22]。

「生菌」と「死菌」は、どちらが優れているかではなく、期待される作用のメカニズムが異なると理解するのが適切です。

この章のポイント

  • 「生菌」は生きて届き、腸内で活動することが期待される(プロバイオティクス)。
  • 「死菌」も、その菌体成分が免疫系に働きかけるなど、異なるメカニズムでの効果が研究されている(ポストバイオティクス)。
  • どちらも目的に応じて利用されており、死菌だから無意味というわけではない。

乳酸菌の賢い選び方|目的別の菌株・機能性表示食品の見分け方

では、私たちはどのように乳酸菌と付き合っていけばよいのでしょうか。重要なのは「流行」や「イメージ」ではなく、「目的」と「科学的根拠」に基づいて選ぶことです。

ステップ1:まずは「目的」を明確にする

最も重要なのは、「何のために乳酸菌を摂りたいのか?」をはっきりさせることです。

  • 「お通じの改善」が目的なのか?
  • 「ストレス緩和・睡眠の質」が目的なのか?

前述の通り、ストレスや睡眠への効果は、特定の菌株(シロタ株、CP2305株など)でしか確認されていません。便通改善が目的の人が、これらの菌株を摂っても期待通りの効果が得られない可能性もありますし、その逆も同様です。

目的によって選ぶべき「菌株」が異なることを、まず理解しましょう。

ステップ2:「機能性表示食品」の表示をチェック

特定の健康目的で製品を選ぶ場合、「機能性表示食品」が手がかりになります。

機能性表示食品とは?事業者の責任において、科学的根拠に基づいた「機能性(例:『睡眠の質を高める』『お通じを改善する』)」を表示したものとして、消費者庁に届け出られた食品です [25]。

注意点:この制度は、国が個別に有効性や安全性を審査・保証するものではありません [25]。あくまで「事業者が届け出た科学的根拠に基づき、その機能性を表示することが許可されている」という意味です。

しかし、消費者にとっては「どのような科学的根拠に基づいて」「どの菌株が」「どのような機能性をうたっているのか」を知るための重要な情報源となります。

【選び方の例】

  • 目的: 睡眠の質(ストレス緩和)
  • 確認: パッケージに「睡眠の質を高める機能があることが報告されています」といった表示があるか。
  • 確認: 機能性関与成分として「Lactobacillus casei Shirota株」や「Lactobacillus gasseri CP2305株」など、目的の菌株名が明記されているか。

ステップ3:ヨーグルトとサプリ、どちらでとるべき?

「乳酸菌 ヨーグルト どっち」と悩む方も多いでしょう。それぞれにメリットがあり、優劣はありません。

  • ヨーグルトや乳酸菌飲料(食品)のメリット:
    • 続けやすさ: 日常の食生活に「食品」として取り入れやすい。
    • 他の栄養素: タンパク質やカルシウムなども一緒に摂れることが多い。
    • 多様性: 味や食感が多様で、飽きにくい。
  • サプリメントのメリット:
    • 菌株と量の明確さ: 「特定の菌株」を「決められた量」で確実に摂取しやすい。
    • 手軽さ: 水で飲むだけで、場所を選ばない。
    • カロリー: 糖分や脂質を気にする場合に選びやすい。

「睡眠」など特定の機能性を狙うならサプリや機能性表示食品が選びやすく、「腸活」として食生活全体を整えたいならヨーグルトや発酵食品が取り入れやすい、といった形で目的に合わせて使い分けるのが賢明です。

ステップ4:摂り方のヒント(エサも一緒に)

乳酸菌(プロバイオティクス)を摂るだけでなく、そのエサとなる「プレバイオティクス」(食物繊維やオリゴ糖など)も一緒に摂ることは、腸内環境にとって合理的と考えられています(この両方を一緒に摂る考え方をシンバイオティクスと呼びます)[4, 28]。

野菜、果物、海藻、きのこ類、豆類など、バランスの良い食事を心がけることが、結果として乳酸菌が働きやすい環境をサポートします。

この章のポイント

  • 乳酸菌選びで最も重要なのは「目的」を明確にすること。効果は「菌株」によって異なる。
  • 「睡眠」や「ストレス」が目的なら、その機能性が表示された製品で「菌株名」を確認する。
  • 「ヨーグルト」と「サプリ」は一長一短。機能性を明確に狙うならサプリ、食生活の一環なら食品、と使い分けるのがおすすめ。
  • 乳酸菌のエサとなる食物繊維なども一緒に摂る(シンバイオティクス)と、より効果的。

乳酸菌で効果を感じるまでの期間と、合う・合わないの見極め方

乳酸菌は薬ではないため、飲んですぐに劇的な変化が起こることは稀です。

もし特定の目的(便通、睡眠など)で乳酸菌製品を試す場合は、まずは2週間~4週間程度、同じ製品を毎日継続してみることをお勧めします。

その上で、ご自身の体調に変化があるか、あるいは特に変化がないかを見極めてみてください。

「自分に合うか」が最も重要です。「Aさんには効果があったが、Bさんにはなかった」ということは、乳酸菌の世界ではごく普通に起こります。

【セルフチェック表(例)】自分の変化を客観的に見るために、簡単な記録をつけてみるのも良い方法です。

チェック項目(例)開始前2週間後4週間後
お通じの回数週〇回週〇回週〇回
便の硬さ・すっきり感△/○/◎△/○/◎△/○/◎
朝の目覚めのスッキリ感△/○/◎△/○/◎△/○/◎

この章のポイント

  • 乳酸菌は薬ではなく、即効性を期待するものではない。
  • まずは「2週間~4週間」同じ製品を継続し、自分の体調との相性を見る。
  • 効果には個人差が大きいため、簡単な記録をつけて「自分に合うか」を見極めるのが重要。

まとめ:乳酸菌は万能薬ではない。バランスの良い食生活を

乳酸菌やプロバイオティクスは、私たちの健康維持をサポートする可能性を秘めた食品成分ですが、決して「万能薬」ではありません。

「どの乳酸菌が一番良いか」という問いに、万人共通の答えはありません。なぜなら、乳酸菌の効果は「菌株特異性」(菌株による違い)と「個人差」(その人の腸内環境や体質)に大きく左右されるからです。

期待しすぎず、“プラスアルファ”として取り入れるのがちょうど良いバランスです。

そして何よりも、乳酸菌への過度な期待に依存するのではなく、バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動といった、日々の生活習慣が健康の土台であることを忘れないでください。

FAQ:乳酸菌に関するよくある疑問と誤解

読者の皆さまが抱きがちな疑問や誤解について、科学的な視点からお答えします。

乳酸菌を摂りすぎると害はありますか?

健康な人がヨーグルトやサプリメントなど、通常の食品として摂取する範囲であれば、安全性は概して良好とされています [24, 26]。ただし、重篤な基礎疾患をお持ちの方や、免疫機能が極端に低下している方(免疫抑制剤を使用中など)は、生菌の摂取が予期せぬ感染症のリスクになる可能性もゼロではないため、必ず事前に主治医に相談してください [24]。

特定の乳酸菌飲料(睡眠への効果が話題のものなど)を飲めば、“必ず”ストレスが減って眠れるようになりますか?

「必ず」とは言えません。前述の通り、これらの研究 [19-22] は特定の条件下で行われたものであり、効果には個人差があります。その製品に含まれる菌株があなたの体に合う可能性もありますが、すべての人に同じ効果を保証するものではありません。あくまで「選択肢の一つ」として試してみるのが良いでしょう。

アレルギー体質(花粉症やアトピー)は“治り”ますか?

治るという証拠は確立されていません。アレルギー性鼻炎(花粉症含む)については、症状やQOL(生活の質)をわずかに改善する可能性を示した研究もありますが、研究間のバラツキが大きく、推奨できる段階ではありません [14]。アトピー性皮膚炎の「治療」に関しては、質の高い研究のまとめ(Cochraneレビュー)で「効果は小さいか不確実」と結論付けられています [13]。アレルギー治療の基本は、専門医の診断と指導に従うことです。

高いサプリメントほど効果がありますか?

価格と効果は必ずしも比例しません。重要なのは、価格ではなく「自分の目的に合った菌株が」「十分な量(研究で使われた量など)」含まれているか、そしてそれを継続できるかです。

ヨーグルトは「同じものを続けた方がいい」?「色々試した方がいい」?

まずは「合う・合わない」を見極めるために、「2~4週間は同じ製品を続けて様子を見る」ことをお勧めします。そこで特に変化を感じなければ、菌株が異なる別の製品に変えて、再度試してみるのが合理的です。

乳酸菌はどの時間帯に飲むと効果的ですか?

厳密なルールはありませんが、「毎日続けやすいタイミングで飲む」ことが最も重要です。胃酸の影響を気にする説もありますが、食後であれば胃酸は薄まっています。睡眠の質が目的なら、習慣化のために「夕食後」や「寝る前」に統一するのも良いでしょう。

「機能性表示食品」の乳酸菌と、「普通のヨーグルト」は何が違いますか?

一番の違いは、「特定の機能性(例:睡眠の質を高める)を表示できるか」どうかです。機能性表示食品は、その機能性に関する科学的根拠を消費者庁に届け出ています [25]。一方、普通のヨーグルトも優れた発酵食品ですが、特定の機能性を表示することはできません。

「便通」と「睡眠」など、複数の目的がある場合はどう選べばいいですか?

一度にすべての悩みを解決しようとするより、「今、一番気になっている悩み」を一つ選び、その目的に合った菌株から試すのがお勧めです。例えば、「まずはお通じを集中ケア」と決め、2~4週間試してみる。変化がなければ、次は睡眠の質をサポートする菌株を試してみる、というように優先順位をつけると迷いにくくなります。

免責事項

この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方(特に免疫機能に問題がある方)が特定のサプリメントや食品を習慣的に摂取する場合は、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。

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末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。