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【科学でわかる】シンバイオティクスとは? 腸活効果・食べ物・正しい始め方を徹底解説
「腸活」が当たり前になった今、次のステップとして「シンバイオティクス」に興味を持つ方が増えています。しかし、言葉は知っていても、その正確な意味や効果、正しい実践方法まで理解している方はまだ少ないかもしれません。
この記事では、最新の科学的根拠(エビデンス)に基づき、シンバイオティクスに関するあなたの疑問に専門家が一つひとつお答えします。
この記事は2025年11月04日時点の最新情報に基づいています。
この記事でわかること
- シンバイオティクスの正確な意味と、プロバイオティクスとの明確な違い
- 科学的根拠に基づく健康効果(と限界)
- 今日から実践できる食品の組み合わせ例
- 失敗しないサプリメントの選び方と、安全のための注意点
- 「いつ飲む?」「どのくらい続ける?」といった素朴な疑問への回答
話題の「シンバイオティクス」とは?プロバイオティクスとの違い
シンバイオティクスを正しく理解するために、まずは基本となる2つのキーワードから簡単に説明します。
基本の知識:「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」
私たちの腸内には多種多様な細菌が暮らしており、そのバランスが健康を左右します。このバランスを整える上で重要な役割を果たすのが、以下の2つです。
プロバイオティクス (Probiotics)
役割
十分な量を摂取したときに、宿主(人)に健康上の利益をもたらす生きた微生物のことです[1, 2]。
ポイント
「適切な菌株が・十分な量・生きた状態で含まれ、健康効果が示されていること」が科学的な定義のポイントです。単なる発酵食品(ヨーグルト、キムチ、味噌など)が、必ずしもプロバイオティクスとイコールではない点に注意が必要です[8]。
プレバイオティクス (Prebiotics)
役割
腸内にいる善玉菌(プロバイオティクス)の「エサ」となる食品成分[4]。主にオリゴ糖や水溶性食物繊維がこれにあたります。
ポイント
有益な菌を選択的に増やし、その働きをサポートします。
比喩で言うなら、プロバイオティクスが腸内に派遣する「応援部隊」、プレバイオティクスはその部隊が活動するための「食料」です。
シンバイオティクスは「合わせ技」で効果を狙う考え方
そして、本題のシンバイオティクス (Synbiotics)です。
これは、プロバイオティクス(応援部隊)と、そのエサとなるプレバイオティクス(食料)を一緒に摂取するという考え方、またはその組み合わせ自体を指します[5]。
この2つを同時に摂ることで、プロバイオティクスがプレバイオティクスを栄養源として利用し、腸内で一時的に増え、その働きを後押しすることが期待されています[6]。まさに「合わせ技」で、より効率的な腸活を目指す戦略なのです。
【一歩進んだ知識】「相補的」と「相乗的」の違い
国際プロバイオティクス・プレバイオティクス科学協会(ISAPP)は、シンバイオティクスをさらに2種類に分類しています[5, 6]。
相補的(コンプリメンタリー)シンバイオティクス
プロバイオティクスとプレバイオティクスが、それぞれ独立して体に良い効果をもたらすことを期待した組み合わせ。現在市販されている製品の多くはこちらに該当します。
相乗的(シナジスティック)シンバイオティクス
特定のプロバイオティクス(菌)が選択的に利用するよう設計されたプレバイオティクス(基質)を組み合わせたもので、それによる健康上の利益が証明されたものです[5]。
この章のポイント
- プロバイオティクスは「有益な生きた菌」、プレバイオティクスは「その菌のエサ」。発酵食品≠プロバイオティクスである。
- シンバイオティクスは、この2つを同時に摂ることで腸内での働きをサポートする「合わせ技」の考え方。
- 単なる組み合わせ(相補的)と、特定の菌とエサが設計されたもの(相乗的)がある。
シンバイオティクスに期待される効果は?科学的根拠をチェック
では、シンバイオティクスの摂取によって、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。科学的な研究報告を見ていきましょう。
期待される効果:便通改善と腸内環境の正常化
- 便通の改善: プロバイオティクスを含む製品(一部にシンバイオティクス製品も含む)の摂取が、便通改善に役立つ可能性が複数の研究で示唆されています。あるメタ分析では、便秘傾向のある人がプロバイオティクス含有製品を摂取したところ、プラセボ(偽薬)と比較して排便回数が週に約0.93回増加し、便の形状スコアも改善したと報告されています[9]。
- 効果と限界: ただし、シンバイオティクスに限定した別のメタ分析でも便通改善の可能性は示されているものの[10]、その効果の大きさは小〜中等度であり、個人差が大きいことも理解しておく必要があります。また、これらの研究は、使用される菌株・量・期間がそれぞれ異なるため、結果の一般化には注意が必要です。
特定の疾患への効果は?(IBS・アトピー)
- 過敏性腸症候群(IBS): IBSの症状改善に対するシンバイオティクスの有効性は、現時点では確立されていません[13]。米国の主要な消化器病学会(AGA, ACG)のガイドラインでも、IBS症状の改善目的でのプロバイオティクス(シンバイオティクス含む)の使用は、現時点では推奨されていません[14, 15]。
- アトピー性皮膚炎: 小児のアトピー性皮膚炎に対しては、特に妊娠中や授乳中の母親、または乳児が摂取することでの「発症予防」に関する有効性の報告が比較的多い一方で、「発症後の治療」効果については、まだ見解が一致していません[16]。
【注意】「がんにも効く」は本当?
2025年11月現在、シンバイオティクスの摂取が、がんの発生を予防したり、がんそのものを治療したりするという質の高い科学的根拠はありません。
ただし、がん治療の領域では、大腸がん患者さんが手術の前後に摂取することで、術後の感染症などの合併症リスクを低減させたという補助的なアプローチの研究報告があります[17, 18]。
この章のポイント
- シンバイオティクスには、便通を改善する可能性が示されているが、効果は穏やかで個人差が大きい(例:排便回数が週1回弱増加)。
- IBSやアトピー性皮膚炎への効果は、まだ研究段階であり確立されていない。
- がんを「治療・予防」する効果はなく、あくまで治療の補助的な文脈で研究されている段階。
今日からできる!シンバイオティクスの具体的な摂り方
シンバイオティクスは、特別なことではなく、日々の食事の工夫で実践できます。
食品での上手な組み合わせ例
- ヨーグルト(発酵食品/一部はプロバイオティクス) + バナナ(プレバイオティクス)
- 納豆(発酵食品/プロバイオティクス) + めかぶ(プレバイオティクス)
- お味噌汁(発酵食品) + ごぼう・わかめ(プレバイオティクス)
- 味噌のコツ: 味噌の菌は加熱に弱いですが、後述のコラムで触れる「ポストバイオティクス(死菌やその成分)」としての効果も期待できます。
市販の発酵食品を選ぶ際の注意点ヨーグルトやキムチ、味噌などの発酵食品は有益ですが、「発酵食品」と「プロバイオティクス食品」はイコールではありません[8]。プロバイオティクスとして摂取したい場合は、製品に「生きて腸まで届く」「(特定の菌株名)使用」などの表示があり、生きた菌が含まれているかを確かめましょう。
プレバイオティクスが豊富な食品リスト
- 野菜・きのこ類: ごぼう、玉ねぎ、にんにく、アスパラガス、ねぎ、きのこ類
- 果物: バナナ、りんご、キウイフルーツ
- 豆類・穀類: 大豆・納豆、ひよこ豆、全粒小麦、大麦
市販の製品やサプリメントの選び方:購入前チェックリスト
- [ ] 菌とエサの種類: どんな「菌株名」と「プレバイオティクス」が入っているか?
- [ ] 菌数と保証: 「適切な菌株が・十分な量」(CFU)含まれているか。「製造時」だけでなく「賞味期限まで」の菌数が保証されているか確認。
- [ ] 表示の確認: 「機能性表示食品」か?届け出内容は何か?
- [ ] 保存方法: 「要冷蔵」など、記載された保存温度を守れるか?
- [ ] 添加物: 糖質や人工甘味料などが気になる場合はチェック。
- [ ] 始め方のコツ: お腹が張りやすい方は、記載量の半分など少量から開始し、2〜4週間を目安に様子を見る。
この章のポイント
- シンバイオティクスは、身近な食品の組み合わせで手軽に実践できる。
- 市販品を選ぶ際は、「発酵食品」と「プロバイオティクス食品」の違いを理解し、生菌の有無や成分表示を確認することが重要。
- サプリメントは、菌株・菌数・保証内容などをチェックリストで確認すると失敗しにくい。
よくある質問(FAQ)と安全のための注意点
Q. どのくらいの期間続ければいい?毎日飲むべき?
A. ほとんどのプロバイオティクスは腸に永続的に住みつくわけではないため、毎日コツコツと続けることが鍵です。まずは2〜4週間を目安に、ご自身の体調の変化(排便日誌やブリストル便形状スケールでの記録もおすすめ)を観察してみましょう。
Q. 抗菌薬(抗生物質)と一緒に飲んでも良いですか?
A. 抗菌薬は善玉菌にも影響を与えうるため、プロバイオティクスを摂取する場合は、抗菌薬の服用から2〜3時間ほどずらすのが一般的です。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、厳密な科学的根拠(高品質なRCT)は限定的です。必ず主治医や薬剤師の指示を優先してください。
Q. シンバイオティクスに副作用や注意点はありますか?
A. 基本的に健康な人にとっては安全ですが、体質によってお腹の張りやガスなどを感じることがあります。特に、免疫機能が低下している方、重い病気で入院中の方、中心静脈カテーテルを使用している方は、自己判断での摂取は絶対に避け、必ず医師の指示に従ってください(ごく稀ですが、菌血症や真菌血症などの報告があるため[21, 22])。
COLUMN:注目の「ポストバイオティクス」とは?
最近では、体に良い効果をもたらす死菌(不活化菌)やその菌体成分、代謝産物を指す「ポストバイオティクス」という考え方も注目されています[7]。熱に弱いとされる味噌なども、加熱後はこのポストバイオティクスとしての効果が期待できるとされ、腸活の新たな可能性として研究が進んでいます。
この章のポイント
- シンバイオティクスは、毎日続けることが効果を実感する鍵。
- 抗菌薬との併用や、持病がある場合の摂取は、必ず専門家に相談する。
- 安全性が高いとされるが、ハイリスク群は特に注意が必要。
まとめ:シンバイオティクスと賢く付き合うために
シンバイオティクスは、腸内環境を整えるための有効な選択肢の一つですが、万能薬ではありません。この記事で紹介した知識を活用し、ご自身の体と相談しながら、賢く日々の生活に取り入れていきましょう。
してはいけないことリスト
- 過度な期待をすること: 「これを摂れば病気が治る」といった魔法の効果はありません。
- 一つの食品やサプリに頼ること: 多様な食品で腸内細菌の多様性を育むのが基本です。
- 体調の不安を自己判断すること: 気になる症状は専門家に相談しましょう。
代わりに心がけたいこと
- 色々な組み合わせを楽しむ: 自分なりの「シンバイオティクス」レシピを見つけましょう。
- 自分の体と対話する: まずは2〜4週間を目安に体調の変化を丁寧に観察してみましょう。
- 困ったときは専門家を頼る: 医師や管理栄養士はあなたの心強い味方です。
【補足】日本におけるシンバイオティクスの位置づけ
現時点で、日本の厚生労働省などから「シンバイオティクス」という特定のカテゴリーに対する公的なガイドラインは見当たりません。そのため、個別の製品が「機能性表示食品」として届け出ている内容や、成分の安全性(米国のGRAS認証[19]や欧州のEFSAの評価[20]など)を確認することが、製品を選ぶ上での現実的な拠り所となります。
免責事項
この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方は、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。
参考文献
[1] Hill C, Guarner F, Reid G, Gibson GR, Merenstein DJ, Pot B, et al. Expert consensus document: The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2014;11(8):506–514. https://doi.org/10.1038/nrgastro.2014.66
[2] FAO/WHO. Joint FAO/WHO Working Group Report on Drafting Guidelines for the Evaluation of Probiotics in Food. London, Ontario; 2002. https://openknowledge.fao.org/handle/20.500.14283/521f7b75-8f3a-47aa-9442-346fd6e3b11e
[3] 厚生労働省. e-ヘルスネット:プロバイオティクス. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-007.html (2025-11-04アクセス)
[4] Gibson GR, Hutkins R, Sanders ME, Reimer RA, Salminen SJ, Scott K, et al. The ISAPP consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2017;14(8):491–502. https://doi.org/10.1038/nrgastro.2017.75
[5] Swanson KS, Gibson GR, Hutkins R, Reimer RA, Reid G, Verbeke K, et al. The ISAPP consensus statement on the definition and scope of synbiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2020;17(11):687–701. https://doi.org/10.1038/s41575-020-0344-2
[6] Gomez Quintero DF, Kok CR, Hutkins R. The Future of Synbiotics: Rational Formulation and Design. Frontiers in Microbiology. 2022;13:919725. https://doi.org/10.3389/fmicb.2022.919725
[7] Salminen S, Collado MC, Endo A, Hill C, Lebeer S, Quigley EMM, et al. The ISAPP consensus statement on the definition and scope of postbiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2021;18(9):649–667. https://doi.org/10.1038/s41575-021-00440-6
[8] Marco ML, Sanders ME, Gänzle M, Arrieta MC, Cotter PD, De Vuyst L, et al. The ISAPP consensus statement on fermented foods. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2021;18(4):196–208. https://doi.org/10.1038/s41575-020-00390-5
[9] Ding F, Hu M, Ding Y, Meng Y, Zhao Y. Efficacy in bowel movement and change of gut microbiota on adult functional constipation patients treated with probiotics-containing products: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open. 2024;14(1):e074557. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2023-074557
[10] van der Schoot A, Drysdale C, Whelan K, Hoad C, Marciani L, Stephen S, et al. The effect of pro- and synbiotics on gut parameters in patients with chronic constipation: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Clinical Nutrition. 2022;41(12):2704–2717. https://doi.org/10.1016/j.clnu.2022.10.015
[11] Li X, Wang G, Zhang Z, Zhang H, Yu J, Chen F, et al. Effect of synbiotic supplementation on immune parameters and gut microbiota in healthy adults: a double-blind randomized controlled trial. Gut Microbes. 2023;15(2):2247025. https://doi.org/10.1080/19490976.2023.2247025
[12] Lin Y. Letter regarding “Effect of synbiotic supplementation on immune parameters and gut microbiota in healthy adults: a double-blind randomized controlled trial”. Gut Microbes. 2023;15(2):2262618. https://doi.org/10.1080/19490976.2023.2262618
[13] Xu C, Wang Y, Wang S, Long Y, Guo J, Li X, et al. The efficacy of probiotics, prebiotics, synbiotics, and fecal microbiota transplantation in irritable bowel syndrome: a systematic review and network meta-analysis. Nutrients. 2024;16(13):2114. https://doi.org/10.3390/nu16132114
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[19] U.S. Food and Drug Administration. GRAS Notice Inventory. https://www.fda.gov/food/generally-recognized-safe-gras/gras-notice-inventory (2025-11-04アクセス)
[20] European Food Safety Authority (EFSA). Nutrition and health claims. https://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/nutrition-and-health-claims (2025-11-04アクセス)
[21] Wombwell E, Clark L, Ghassemi E, et al. Saccharomyces cerevisiae fungemia: Incidence, risk factors, and outcomes in a single center. Mycoses. 2021;64(11):1373–1379. https://doi.org/10.1111/myc.13375
[22] Merenstein D, Gokhale R, Pot B, et al. Safety of probiotics and ‘biotics’. Annals of the New York Academy of Sciences. 2023;1526(1):5–19. https://doi.org/10.1111/nyas.14979

