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ラクツロースと便秘｜今日から使えるやさしいガイド
結論
- 食品としては「1回10 g」で腸の通過を速めることが公的に認められています（EUヘルスクレーム）。[3,4]
- 少量→10 g一回まで増量し、2〜4週間は回数と便のかたさ（便の状態）で評価。
- つらい下痢や腹痛が出たら中止。医薬品量の自己判断での継続はNG。[6]
ラクツロースとは？（別名・基本）
公用名
ラクツロース（英: Lactulose）
別名
ラクチュロース
特徴
人工（合成）のオリゴ糖。乳糖（ラクトース）由来で、ガラクトース＋フルクトースの二糖です。[1]
用途
食品（一般利用）と医薬品（治療）の両方で使われます（目的・用量が異なります）。
消化吸収
小腸ではほぼ吸収されず大腸へ到達。腸内細菌に発酵されて短鎖脂肪酸（腸の動きを助ける酸）が産生→腸管運動を促進。さらに浸透圧（水分を集める力）で水分を引き込み、便をやわらかくします。[1]
用語の注意
乳果オリゴ糖はラクトスクロース（lactosucrose）の和名で、乳糖＋ショ糖由来の三糖です。ラクツロース（lactulose）（ガラクトース＋フルクトースの二糖）とは別成分です。
本当に効くの？（人でのデータ）
慢性便秘の成人で有効
日本の信頼性の高い試験（2週間、13/26/39 g/日）では、26 g/日前後で排便回数・便のかたさが効果のない成分（プラセボ）より改善。39 g/日では下痢など副作用が増加しました。[2]
食品としての公的根拠
EUは「ラクツロースは腸の通過を速める」表示を1回10 gの摂取条件で許可（一般成人）。[3,4]
読み解きのコツ
治療量（26 g/日）なら効果が明確。一方、日常の食品利用では「1回10 g」が根拠付きの現実的な目安。個人差があるため、下の「はじめ方」に沿って2〜4週間で判断しましょう。[3,4]
はじめ方（食品として）
1. 少量スタート
まずは5 g/日。
2. 目安まで上げる
問題なければ10 gを一度に（EUの根拠内）。[3,4]
3. 2〜4週間を観察
排便回数と便のかたさ（便の状態）をメモ。
4. つらければ減量/中止
ガス・腹痛・下痢が強い場合は減量、治まらなければ中止。[2]
テキスト表：量と想定される体感の目安
| 段階 | 量の目安 | 体感の例 | 注意ポイント |
|---|---|---|---|
| スタート | 5 g/日 | 軽いガスや張りが出ることあり | 体調に合わせて継続可 |
| 目安 | 10 g/回 | 便がやわらかく・回数が整いやすい | 水分も十分に |
| 上げすぎ | >10 g/回や高頻度 | 下痢・腹痛のリスク上昇 | 不快時は減量/中止 |
カロリー表示（日本）
ラクツロースのような難消化性糖質は 2 kcal/1 gで扱います。[5]
安全性と使い方のコツ（用量と症状別の対処）
ポイント：ラクツロースは食品と医薬品の両方で使われます。目的（便通維持 vs 便秘治療）と用量が異なるため、以下は食品として使う際の目安です。
食品の範囲
1回10 gで機能表示が許可。この範囲は多くの人で扱いやすいと考えられます。[3,4]
医薬品の範囲
治療目的の高用量では、下痢→脱水・体液のミネラルバランスの乱れ（電解質異常）に注意が必要と公式ラベルに明記。大量を自己判断で続けないでください。[6]
よくある不快症状
量が多いほどガス・張り・腹痛・ゆるい便が出やすい。試験でも39 g/日で下痢が増加しています。[2,6]
テキスト表：症状が出たときの“次の一手”
| 症状 | まずやること | 収まらない時 |
|---|---|---|
| ガス/張り | 翌日量を半分に | それでも続く→中止 |
| ゆるい便 | 1–2日休止→5 gから再開 | 水様便が続く・血便→中止して受診 |
| 問題なし | 10 g/回で2–4週間観察 | 維持量を見つける |
安心のコツ
- はじめは少量→体調を見ながら10 g一回まで。
- 水分をしっかり。
- 腎臓・心臓の病気がある、利尿薬を使用中などの方は事前に医療者へ。
血糖・カロリーが気になる人へ
吸収性
小腸でほとんど吸収されず。健康成人の単回10–20 gで血糖・インスリン上昇は認められない報告があります。[7]
2型糖尿病
少量〜中等量で有意な上昇なしの試験あり（製品に微量に含まれ得る乳糖・ガラクトースは個別配慮）。[8]
熱量
2 kcal/gとして表示されます。[5]
使うのをやめて受診すべきサイン（チェック）
- 水のような下痢が続く／血が混じる
- 強い腹痛・発熱
- 高齢で脱水しやすい／腎機能に不安
→ 中止して医療機関へ。医薬品として使う場合は量の調整が前提です。自己判断の高用量は避けましょう。[6]
他の選択肢との違い（ざっくり比較）
| 項目 | ラクツロース | 難消化性デキストリン | マグネシウム系（酸化/硫酸/重質） |
|---|---|---|---|
| 主目的 | 便の水分を増やす＋腸内発酵 | 食後血糖/脂肪吸収抑制など | 浸透圧で水分を引き込む（下剤） |
| 根拠の目安 | EUヘルスクレーム：10 g/回[3,4] | 保健機能食品等の機能表示例 | 医薬品として多数のエビデンス |
| 体感 | ガス/張りが出ること | 便通より代謝系訴求が多い | 便を柔らかくしやすいが下痢注意 |
| 注意点 | 高用量で下痢・電解質異常（医薬品量）[6] | 取りすぎで下痢 | 腎機能・電解質管理が重要 |
まとめ（要点整理）
- 何か：食品にも医薬品にも使われる人工オリゴ糖。[1]
- 効き目：治療量（26 g/日）で明確。食品では「1回10 g」が根拠付きの目安。[2–4]
- 安全：少量から。合わなければ下げる/やめる。高用量の自己判断は避ける。[6]
よくある質問（FAQ）
2〜4週間を目安に回数と便のかたさで評価しましょう。個人差があります。
1回 10 gがEUで根拠付き。最初は5 gから。
減量または中止。水様便が続く・血便・発熱は受診。
単回10–20 gで血糖・インスリン上昇は報告されていませんが、個別に主治医へ相談を。[7,8]
可。まずは同量で2–4週間の記録を。
目的（治療）と用量が異なります。医薬品量は副作用管理と調整が前提。[6]
ありません。 日本人の食事摂取基準（2025年版）は栄養素が対象で、ラクツロースのような機能性オリゴ糖は対象外です。実務的には本記事の目安（食品では1回10 g）で評価してください。[9]
参考文献
[1] Vičič V, Pandel Mikuš R, Ferjančič B. Review of history and mechanisms of action of lactulose (4-O-β-D-galactopyranosyl-β-D-fructofuranose): present and future applications in food. Journal of Food Science and Technology. 2024;61(11):2036–2045. https://doi.org/10.1007/s13197-024-05997-z
[2] Kasugai K, Iwai H, Kuboyama N, Yoshikawa A, Fukudo S. Efficacy and safety of a crystalline lactulose preparation (SK-1202) in Japanese patients with chronic constipation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, dose-finding study. Journal of Gastroenterology. 2019;54(6):530–540. https://doi.org/10.1007/s00535-018-01545-7
[3] EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific opinion on the substantiation of health claims related to lactulose and decreasing potentially pathogenic gastro-intestinal microorganisms and reduction in intestinal transit time. EFSA Journal. 2010;8(10):1806. https://doi.org/10.2903/j.efsa.2010.1806
[4] Commission Regulation (EU) No 432/2012 of 16 May 2012 establishing a list of permitted health claims made on foods, other than those referring to the reduction of disease risk and to children’s development and health. Official Journal of the European Union. 2012;L136:1–40. Available from: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32012R0432
[5] 消費者庁. 難消化性糖質及び食物繊維のエネルギー換算係数の見直し等に関する調査・検証事業 報告書. 2020年4月. Available from: https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2019/pdf/food_labeling_cms206_200424_02-2.pdf
[6] DailyMed. LACTULOSE solution, USP — Labeling. Updated 2024-12-05. Available from: https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=7016bd71-c667-46fc-8c56-5023682e8bbe
[7] Steudle J, Schön C, Wargenau M, Pauly L, Schwejda-Güttes S, Gaigg B, et al. Blood glucose response after oral intake of lactulose in healthy volunteers: a randomized, controlled, cross-over study. World Journal of Gastrointestinal Pharmacology and Therapeutics. 2018;9(3):22–30. https://doi.org/10.4292/wjgpt.v9.i3.22
[8] Pieber TR, Svehlikova E, Mursic I, Esterl T, Wargenau M, Sartorius T, et al. Blood glucose response after oral lactulose intake in type 2 diabetic individuals. World Journal of Diabetes. 2021;12(6):893–907. https://doi.org/10.4239/wjd.v12.i6.893
[9] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準（2025年版）策定検討会報告書. 2024年10月. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
