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リノール酸(オメガ6)の摂りすぎは体に悪い?メリット・デメリットと上手に付き合う方法

この記事は2025年11月時点の最新情報(日本人の食事摂取基準2025年版など)に基づいています。

この記事でわかること

  • リノール酸は体に必要な「必須脂肪酸」であること
  • リノール酸の健康上のメリットと、「摂りすぎ」で懸念されるデメリット
  • 「リノール酸が炎症やアトピーを悪化させる」説の現在の科学的評価
  • n-6系脂肪酸の摂取目安量(小さじ・大さじ換算)と1日の配分モデル
  • リノール酸が多い食品・少ない油のランキングと、今日から実践できる「油の選び方」

まず結論から:リノール酸との上手な付き合い方

  • 結論1:リノール酸(オメガ6)は体で作れない必須栄養素。問題は過剰と、オメガ3不足によるバランスの乱れ。
  • 結論2:成人女性(30~64歳)の目安量(AI)は1日9g、男性(30~49歳)11g、50~64歳11g。[1, 2] 小さじ約2~2.5杯強相当(隠れ油を含む)。
  • 結論3:加熱はオリーブオイル・なたね油を主体に、オメガ3(えごま油・あまに油)は非加熱で「かける」。リノール酸が多い大豆油・コーン油などの使用頻度を下げる。

前提:リノール酸は必須脂肪酸。不足は皮膚症状などを招く可能性がある。[1] この記事は過剰摂取リスクと、特にオメガ3とのバランスに焦点を当てます。

リノール酸とは?誤解されやすい「オメガ6」の正体

リノール酸はオメガ6系脂肪酸(n-6系)に分類される必須脂肪酸。細胞膜の構成や情報伝達物質の材料になるなど、生命維持に重要な役割を担います。[1]

なぜ「体に悪い」「摂りすぎ」と言われるのか?

  1. 炎症を引き起こす可能性(理論):リノール酸は体内でアラキドン酸(AA)に代謝され、一部が炎症や血液凝固に関与する物質の材料となる。[5]
  2. オメガ3とのバランス:現代食ではオメガ6過多・オメガ3不足になりやすく、バランスの乱れが指摘される。[1]

(コラム)不足するとどうなる?

極端な不足では皮膚の乾燥・フケ、(小児で)成長障害などが知られています。[1]

ここだけ押さえる・必須脂肪酸のため不足は禁物。・理論上は炎症促進の材料になり得るが、問題は量とバランス。・現代では「過剰」「偏り」が焦点。

リノール酸の「メリット」と「摂りすぎのデメリット」

メリット1:血中脂質(コレステロール)への影響

リノール酸を増やすと、LDLコレステロールが低下する可能性がある一方、HDLもわずかに低下する可能性が示唆されています。[8] オメガ6増加で総コレステロール低下を示すレビューもあります。[7]

メリット2:心血管疾患リスクとの関連

脂質指標は改善傾向がある一方、主要心血管イベントの減少効果はRCTでは明確でないという報告。[7] 一方、観察研究では摂取量が多いほど心疾患リスクが低い関連が報告されています(2014年)。[17] 日本のCIRCS研究でも血清リノール酸が高い群で冠動脈疾患リスクが低い傾向。[18]

ここだけ押さえる・脂質指標は改善が期待できるが、イベント抑制はRCTで不明瞭。観察研究では好ましい関連も。

懸念されるデメリット:「炎症」「アレルギー」との関係

ヒトRCTやメタ解析では、通常の食事範囲でリノール酸を増やしてもCRPやIL-6など炎症マーカーが上昇する一貫した証拠はないと報告。[3, 4]幼少期のn-6制限+n-3付加でも、5歳時点で喘息・アトピー発症予防効果は見られなかったとの報告。[6]n-6を減らす介入だけではアラキドン酸が減らなかったという近年のRCTもあります。[5]

ここだけ押さえる・LDL低下などのメリット。・心血管イベント抑制は結論保留。・炎症やアトピーの単純な悪化因果はヒト研究で確認されていない。

あなたは摂りすぎ?リノール酸の摂取目安とセルフチェック

厚生労働省の「n-6系脂肪酸」目安量(AI)

日本人の食事摂取基準(2025年版)ではn-6系脂肪酸のAIが設定されています。[1] 日本人のn-6摂取の約98%はリノール酸と報告されており[2]、この記事では便宜上「リノール酸の目安」として参照します。

<n-6系脂肪酸の摂取目安量(AI)>(g/日)

性別年齢目安量
男性18~2912
30~4911
50~6411
女性18~299
30~649

生活換算(小さじ・大さじ)

換算早見表

計量油の目安(g)メモ
小さじ1杯約4g計算しやすいよう4gで統一
大さじ1杯約12g小さじ3杯分

注意:これは隠れ油も含む合計量。・女性(30~64歳)9g/日=小さじ約2杯強・男性(30~64歳)11g/日=小さじ約2.5杯強

1日の配分モデル(例)

性別/年齢目安量家庭での配分例隠れ油への対応
女性30–64歳9g朝ドレッシング小さじ1/夜炒め油小さじ1加工品・外食分を見込み、家庭での使用は合計小さじ2(約8g)以内に調整
男性30–64歳11g昼炒め油小さじ1/夜炒め油小さじ1+仕上げ小さじ0.5スナック・惣菜頻度に応じて家庭での使用を小さじ2.5強(約11g)に調整

「オメガ6:オメガ3」比について

2025年版ではn-6:n-3比の目標値は設定されていません。[1] 比率に固執するより、n-6の過剰回避とn-3の確保を。

チェックリスト(過多の兆し)

  • 揚げ物が週3回以上
  • 炒め物を多用
  • ドレッシング・マヨをたっぷり
  • スナック菓子やカップ麺が多い
  • 外食(揚げ物中心)が多い
  • 家庭の油がサラダ油・大豆油・コーン油中心
  • 青魚を週1回未満

リノール酸が多い食品・少ない油(数値と目的で使い分け)

1. 含有量ランキング(100gあたりの目安)

リノール酸量(g/100g)油の種類
約63グレープシードオイル [21]
約60ひまわり油(ハイリノール)[11]
約51コーン油 [10]
約50大豆油 [9]
約41ごま油 [20]
約32米油 [19]
約19なたね油(キャノーラ)[13]
約15あまに油 [15]
約12えごま油 [14]
約7オリーブオイル [12]

出典と計測条件:主に日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の個票に基づく(可食部100gあたり)。[9–15, 19–21] 品種や製法で差があります。えごま・あまにはn-6よりn-3(α-リノレン酸)が主体のため、目的別に評価。

2. 目的別おすすめ油

目的推奨する油理由・使い方
オメガ3を増やす(生食)えごま油[14]・あまに油[15]α-リノレン酸が主体。加熱は避け、1回小さじ1を「かける」使い方で。
日常の加熱調理オリーブオイル[12]・なたね油[13]・ハイオレイック系リノール酸が相対的に少なく、熱に比較的強い。量は小さじ1~2を目安に管理。
揚げ物油種より頻度管理が最優先(週1回目安)。外食では大豆油・コーン油・ハイリノール系が使われがち[9–11]。

3. ごま油・米油・グレープシードの使いどころ

役割1食の目安注意点
ごま油[20]仕上げの香り付け小さじ1/2風味が強いので少量で満足。炒め油として多用しない。
米油[19]万能・高温向き小さじ1~2リノール酸はオリーブ・なたねより多め。使いすぎに注意。
グレープシード[21]使用控えめリノール酸が非常に多い。日常使いは避け、他油に置換を推奨。

4. 外食・加工食品の隠れ油と代替案

よくある食品油のポイント代替・工夫
スナック菓子原材料「植物油脂」。揚げ油にn-6多めの油が多い個包装で量管理。素焼きナッツ・干し芋・海苔などへ置換
カップ麺調味油や麺の揚げ油調味油を半量。ノンフライ麺+野菜追加
市販ドレッシング「食用植物油脂」が筆頭に来やすいレモン+塩+オリーブ油で自作/ノンオイルを選択
外食の揚げ物油種・交換頻度不明シェア・回数管理。焼き魚や蒸し料理に振り替え

今日からできる!実践ステップ

ステップ1:1週間ミニプラン

  • 青魚(またはさば缶)を週2〜3回
  • えごま油/あまに油を週3〜4回(各回小さじ1)
  • 揚げ物は週1回まで
  • スナック菓子・カップ麺の頻度を半分に

ステップ2:調理法とn-3の工夫

  • 蒸す・茹でる・ノンオイル焼き・電子レンジ加熱を活用
  • さば・いわし・さんま・あじを週2〜3回。缶詰活用も有効[16]

ステップ3:外食での一言フレーズ

シーン一言置き換え
サラダドレッシングは別添えでオリーブ油+塩+レモンに変更
主菜揚げ物→焼き/蒸しにできますか?焼き魚・刺身・蒸し鶏・ローストビーフ
パスタオイル(バター)控えめでクリーム/オイル系→トマト系を選択

今日のアクション・炒め油をオリーブまたはなたねに変更。・えごま油(またはあまに油)とさば缶を常備。

リノール酸に関するよくある誤解(FAQ)

油は一切摂らない方がいい?

推奨されません。リノール酸は必須脂肪酸で、脂質はビタミン吸収やホルモン合成にも重要。種類とバランスの管理が基本。

オメガ3サプリで相殺できる?

バランス改善には一助ですが万能ではありません。まず食事全体を見直し、n-6過多の是正と青魚の摂取を優先。

「ハイオレイック」「リノール酸フリー」は安全?

オメガ6を減らす選択肢の一つ。ただしオメガ3は含まれにくいので別途確保を。

子ども・妊娠中の油選びは?

基本は大人と同じ方針。n-6過多を避けつつ、n-3(特にDHA/EPA)を意識的に。

トランス脂肪酸とリノール酸の違いは?

全く別物。リノール酸は必須脂肪酸、トランス脂肪酸は加工過程で生じやすく摂取は極力控えるべき。

小さじ・大さじ換算(小さじ=4g)は正確?

目安です(比重で多少変動)。大さじ1=約12gとして日々の量感に活用を。

「ハイオレイック」と「エクストラバージン」の違いは?

前者は成分(オレイン酸が多い品種)、後者は製法・品質(オリーブオイルの最上位規格)です。

えごま油・あまに油の保存は?

冷蔵・遮光・早期消費(1~2か月以内)。酸化に弱い性質のため。

油の酸化の見分け方は?

匂いの変化、色の濃化、粘度の上昇。高温常温放置や使い回しは避ける。

グレープシードはリノール酸が多い?

多い部類(約63g/100g)。[21] 日常使いは控え、他油に置換を。

ごま油・米油はどう考える?

中程度。ごま油は香り用に少量、米油は使いすぎに注意。[19, 20]

オメガ3は油と青魚どちらで?

両方。油はα-リノレン酸中心、青魚はEPA/DHAを直接摂取できる。

まとめ:リノール酸は「悪者」ではなくバランスが鍵

  1. 必須脂肪酸であり、極端な回避は逆効果。
  2. LDL低下などのメリットはあるが、イベント抑制はRCTで確定せず。炎症・アトピーの単純因果は確認されていない。
  3. 問題は過剰とバランス。加工食品・外食の隠れ油に留意し、n-3確保を。
  4. 含有量(数値)と用途(目的)で油を使い分ける。

免責事項:本記事は情報提供であり、医療的助言ではありません。治療・診断・予防を目的とするものではありません。持病や妊娠・授乳中などの方は、必ず医療専門職に相談してください。

参考文献

[1] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版) 報告書. 2024.URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001316585.pdf

[2] 農林水産省. 脂質による健康影響(食事摂取基準2025年版の整理資料). 2025年1月9日更新.URL: https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/food_balance/2025dri_lipids.html

[3] Johnson GH, Fritsche K. Effect of dietary linoleic acid on markers of inflammation in healthy persons: a systematic review of randomized controlled trials. J Acad Nutr Diet. 2012;112(7):1029–1041.e15. https://doi.org/10.1016/j.jand.2012.03.029

[4] Su H, Liu R, Chang M, Huang J, Wang X. Dietary linoleic acid intake and blood inflammatory markers: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Food Funct. 2017;8(9):3091–3103.URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28752873/

[5] Courville AB, Majchrzak-Hong S, Yang S, et al. Dietary linoleic acid lowering alone does not lower arachidonic acid or endocannabinoids among women with overweight and obesity: a randomized, controlled trial. Lipids. 2023;58(6):271–284. https://doi.org/10.1002/lipd.12382

[6] Almqvist C, Garden F, Xuan W, et al; CAPS Team. Omega-3 and omega-6 fatty acid exposure from early life does not affect atopy and asthma at age 5 years. J Allergy Clin Immunol. 2007;119(6):1438–1444. https://doi.org/10.1016/j.jaci.2007.01.046

[7] Hooper L, Al-Khudairy L, Abdelhamid AS, et al. Omega-6 fats for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev. 2018;11:CD011094. https://doi.org/10.1002/14651858.CD011094.pub4

[8] Wang Q, Zhang H, Jin Q, Wang X. Effects of dietary linoleic acid on blood lipid profiles: a systematic review and meta-analysis of 40 randomized controlled trials. Foods. 2023;12(11):2129.URL: https://www.mdpi.com/2304-8158/12/11/2129

[9] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/だいず油/精製油(食品番号: 14005).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14005_6

[10] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/とうもろこし油/精製油(食品番号: 14007).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14007_7

[11] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/ひまわり油/ハイリノール(食品番号: 14011).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14011_6

[12] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/オリーブ油(食品番号: 14001).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14001_6

[13] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/なたね油/精製油(食品番号: 14008).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14008_6

[14] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/えごま油(食品番号: 14024).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14024_6

[15] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/あまに油(食品番号: 14023).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14023_6

[16] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 魚介類/さば類/まさば/水煮/缶詰(食品番号: 10164).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10164_7

[17] Farvid MS, Ding M, Pan A, et al. Dietary linoleic acid and risk of coronary heart disease: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. Circulation. 2014;130(18):1568–1578. https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.114.010236

[18] Chei CL, Yamagishi K, Kitamura A, et al; CIRCS Investigators. Serum fatty acid and risk of coronary artery disease: Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). Circ J. 2018;82(12):3013–3020. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-18-0240

[19] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/こめ油/精製油(食品番号: 14003).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14003_6

[20] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/ごま油/精製油(食品番号: 14002).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14002_6

[21] 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年: 油脂類/ぶどう油(食品番号: 14028).URL: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14028_6

末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。