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ダイエット食品や糖質オフ飲料に多く含まれる人工甘味料。カロリーゼロや糖質ゼロを謳う商品を手に取る方も多いのではないでしょうか。しかし、近年「人工甘味料は体に悪い」という情報も耳にするようになり、不安を感じている方もいるかもしれません。

実際、WHO(世界保健機関)は2023年5月に、人工甘味料の長期的な使用が健康に悪影響を与える可能性を示唆する声明を発表しました [1]。

とはいえ、人工甘味料は砂糖と比べてカロリーが低く、虫歯になりにくいなど、メリットも確かに存在します。

では、人工甘味料とどのように付き合っていけば良いのでしょうか?

この記事では、人工甘味料のメリット・デメリット、最新の研究結果、そして健康的な付き合い方について詳しく解説します。正しく理解し、賢く活用することで、人工甘味料は健康的な食生活をサポートしてくれるツールになり得ます。

人工甘味料とは?

人工甘味料は、砂糖の代替品として使用される甘味料で、多くの場合、化学的に合成されたものです。天然由来の甘味料でも、高度に精製されたものは人工甘味料に分類されることがあります。アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、サッカリン、ステビアなど、様々な種類があります。

人工甘味料のメリット

  • カロリー摂取量の抑制:人工甘味料は、砂糖と比べてカロリーが非常に低いため、ダイエットに役立ちます。例えば、アスパルテームは砂糖の約200倍の甘さがありますが、カロリーはほとんどありません。
  • 虫歯予防:人工甘味料は、虫歯の原因となる口腔内の細菌に分解されません。そのため、ガムや歯磨き粉などに利用されることがあります。
  • 血糖値コントロール:血糖値に影響を与えないため、糖尿病患者さんでも安心して摂取できます。ただし、人工甘味料の種類によっては、血糖値への影響が異なる場合があるため、注意が必要です。
  • 価格の安さ:人工甘味料は砂糖よりも安価なため、多くの食品や飲料に利用され、消費者は安価においしいものを楽しむことができます。
  • 手に入りやすさ:人工甘味料は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、様々な場所で手軽に購入できます。

人工甘味料のデメリット:最新の研究から

WHOの発表 [1] を筆頭に、人工甘味料の過剰摂取による健康への悪影響が懸念されています。

  • 2型糖尿病のリスク増加:人工甘味料の長期的な使用は、2型糖尿病のリスク増加に関連付けられている可能性があります [1, 7, 8]。
  • 心血管疾患のリスク増加:人工甘味料の長期的な使用は、心血管疾患のリスク増加に関連付けられている可能性があります [1, 4, 5]。
  • 死亡リスクの増加:人工甘味料の長期的な使用は、成人の死亡リスク増加に関連付けられている可能性があります [1]。
  • がんのリスク増加:いくつかの観察研究で、人工甘味料の摂取と特定の種類のがん(肝細胞がん、乳がん、肥満関連がん)のリスク増加との関連性が示唆されています [2, 3]。しかし、これらの研究では、他の要因の影響を完全に排除できないため、人工甘味料が直接がんを引き起こすとは断言できません。
  • 肥満のリスク増加:人工甘味料が腸内フローラのバランスを崩し、代謝に悪影響を与える可能性は指摘されています [6]。しかし、肥満への影響についてはまだ議論の余地があります。動物実験 [7] では、人工甘味料が体重増加に影響を与える可能性が示唆されていますが、ヒトへの影響は不明です。
  • 神経系への影響:一部の研究では、人工甘味料が神経系に影響を与える可能性が示唆されています [10, 12]。特に、アスパルテームは、神経伝達物質であるグルタミン酸の類似体であり、高濃度で摂取すると神経細胞に悪影響を与える可能性が懸念されています。
  • 妊娠中の摂取:妊娠中に人工甘味料を摂取することの安全性については、まだ十分な研究が行われていません。一部の研究では、妊娠中のアセスルファムKの摂取が、子供の神経発達に悪影響を与える可能性が示唆されています [11]。

人工甘味料と腸内フローラ

腸内フローラは、腸内に生息する様々な細菌の集まりで、消化吸収、免疫機能、精神状態など、健康に重要な役割を果たしています。人工甘味料は、この腸内フローラのバランスを崩し、グルコース不耐症や代謝異常などの悪影響を与える可能性があります [6]。

人工甘味料との上手な付き合い方

人工甘味料は、完全に排除するのが難しいほど、私たちの食生活に浸透しています。また、カロリー制限や虫歯予防などのメリットもあります。重要なのは、メリットとデメリット、そして最新の研究結果を理解し、賢く付き合っていくことです。

  • 摂取量を減らす:WHOは、人工甘味料を砂糖の代替として長期的に使用することは推奨していません [1]。可能な限り摂取量を減らし、人工甘味料に頼りすぎないようにしましょう。
  • 砂糖とのバランス:砂糖の摂取量を減らすために、人工甘味料を利用するのは良い方法ですが、人工甘味料だけに頼るのではなく、自然な甘味を含む食品もバランス良く摂取しましょう。
  • 食品表示を確認する:食品や飲料に含まれる人工甘味料の種類と量を確認しましょう。
  • 子供や妊婦への影響:子供や妊婦は、人工甘味料の影響を受けやすい可能性があります。摂取量には特に注意が必要であり、可能な限り摂取を控えるようにしましょう。
  • 最新の情報に目を向ける:人工甘味料に関する研究は日々進歩しています。信頼できる情報源(WHO、国立の研究機関、学術誌など)から最新の情報を入手し、必要があれば摂取量や種類を見直しましょう。

人工甘味料は、使い方次第で健康的な食生活をサポートしてくれるツールとなります。メリットとデメリット、そして健康的な摂取量を理解し、上手に活用しましょう。

参考文献

[1] World Health Organization (WHO). Artificial sweeteners do not help with weight control and may cause long-term harm. [Press release]. 15 May 2023. Accessed October 7, 2024. https://www.who.int/news/item/15-05-2023-who-advises-not-to-use-non-sugar-sweeteners-for-weight-control-in-newly-released-guideline   

[2] Debras C, Chazelas E, Srour B, et al. Artificial Sweeteners and Cancer Risk: Results From the NutriNet-Santé Population-Based Cohort Study. PLoS Med. 2022 Mar;19(3):e1003950. doi: 10.1371/journal.pmed.1003950.   

[3] McCullough ML, Hodge RA, Campbell PT, et al. Sugar- and Artificially-Sweetened Beverages and Cancer Mortality in a Large U.S. Prospective Cohort. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2022 Oct;31(10):1907-1918. doi: 10.1158/1055-9965.EPI-22-0184.   

[4] Debras C, Chazelas E, Sellem L, et al. Artificial Sweeteners and Risk of Cardiovascular Diseases: Results From the Prospective NutriNet-Santé Cohort. BMJ. 2022 Sep 14;378:e071204. doi: 10.1136/bmj-2022-071204.   

[5] Ruiz-Ojeda FJ, Plaza-Díaz J, Sáez-Lara MJ, Gil A. Effects of Sweeteners on the Gut Microbiota: A Review of Human and Animal Studies. Nutrients. 2019 Mar 20;11(3):677. doi: 10.3390/nu11030677.

[6] Suez J, Korem T, Zeevi D, et al. Artificial Sweeteners Induce Glucose Intolerance by Altering the Gut Microbiota.Nature. 2014 Oct 9;514(7521):181-186. doi: 10.1038/nature13793.   

[7] Bian X, Chi L, Gao B, et al. The Artificial Sweetener Acesulfame Potassium Affects the Gut Microbiome and Body Weight Gain in CD-1 Mice. PLoS One. 2017 Jun 14;12(6):e0178426. doi: 10.1371/journal.pone.0178426.   

[8] Fagherazzi G, Gusto G, Affret A, et al. Chronic Consumption of Artificial Sweetener in Packets or Tablets and Type 2 Diabetes Risk: Evidence From the E3N-European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition Study. Ann Nutr Metab. 2017;70(1):51-58. doi: 10.1159/000455908.   

[9] Drouin-Chartier JP, Zheng Y, Li Y, et al. Changes in Consumption of Sugary Beverages and Artificially Sweetened Beverages and Subsequent Risk of Type 2 Diabetes: Results From Three Large Prospective U.S. Cohorts. Diabetes Care. 2016 Aug;39(8):1372-1379. doi: 10.2337/dc15-2853.   

[10] Olney JW, Farber NB. Glutamate Receptor Dysfunction and Excitotoxicity in Autism. J Child Neurol. 2002 Nov;17(11):798-804. doi: 10.1177/08830738020170110801.

[11] Gruenwald GC, Gunnerud UJ, Botton J, et al. Artificial Sweeteners and Human Health: A Systematic Review and Comprehensive Overview of the Epidemiological Evidence. Crit Rev Toxicol. 2023 Apr;53(4):321-405. doi: 10.1080/10408444.2023.2177854.

[12] Lindseth GN, Coolahan SE, Petros TV, Lindseth PD. Neurobehavioral Effects of Aspartame Consumption. Res Nurs Health. 1990 Jun;13(3):185-189. doi: 10.1002/nur.4770130308.

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