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超加工食品(UPF)は「すべて悪」ではない?科学が示すリスクと賢い選び方
忙しい毎日で「完全自炊」は現実的じゃない。大切なのは“加工そのもの”を敵にすることではなく、中身(栄養)と「食べやすさ」が生む食べ過ぎに目を向けること。加工の“度合い(NOVA)”は、何に注意すべきかを見極める便利な“目安”にすぎません。[1] [2]
結論(最初に)
「加工」そのものには、保存性を高め、安全性を守り、栄養を強化し、フードロスを減らすといった多くの良い面があります。問題になりやすいのは、高カロリー、高糖分、高脂質、高塩分、低食物繊維といった「中身」と、やわらかく食べやすい設計が招く無意識の「食べ過ぎ」です。[3] [4] [11]
多くの研究で、「超加工食品(UPF)」が多い食生活は、死亡リスクや様々な病気と関連していると報告されています。[5] [6] [7] [8] また、信頼できる研究からは、たとえ栄養バランスを揃えたとしても、「加工度の低い食事」のほうが「UPF中心の食事」よりも減量効果が高いことが示されました。[4] [16]
ですから実践では、「中身」で選び、「食べ過ぎ」を防ぐ工夫が大切です。NOVA分類は“赤信号”というより、「注意しよう」と教えてくれる付箋(ふせん)のようなものと捉え、商品の裏にある栄養成分表示(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量)を見て、より良いものに置き換えていくことをお勧めします。[13]
「加工食品」とは?NOVA分類を“目安”として使う
加工とは何か
食品は、収穫・洗浄・加熱・冷凍・発酵・味付けなど、様々な工程を経て私たちの食卓に並びます。この「加工」そのものは悪いものではなく、安全性を高め、日持ちを良くし、持ち運びやすくし、時には栄養を補うといったメリットをもたらします。[1] [3]
NOVA分類という「目安」
ここで“目安”として使われるのが「NOVA」という4分類です。[1]この分類は、加工の「目的」と「度合い」によって食品をグループ分けする考え方です。
グループ1:素材そのまま(未加工~最小限加工食品)
「自然のまま」か、切る・冷凍・乾燥など「素材の形が残る」最小限の処理をしたもの。
- 具体例:生の野菜、果物、米、豆、魚、肉、卵、プレーンヨーグルト、冷凍野菜、ナッツ類など。
グループ2:調理の材料(調理用素材)
グループ1から抽出し、精製した「調味料や油」。
- 具体例:植物油、バター、砂糖、塩、酢など。
グループ3:素材+材料(加工食品)
グループ1(素材)にグループ2(材料)を加えて、「調理・保存」したもの。
- 具体例:チーズ、野菜の缶詰、ジャム、家庭で作るパン、塩鮭など。
グループ4:工業的な製品(超加工食品)
素材の原型をとどめず、多くの材料や添加物を使い、「工業的に製造」されたもの。
- 特徴:そのまま食べられる(RTE)ものが多く、美味しく食べやすいように設計されています。
- 具体例:スナック菓子、菓子パン、カップ麺、清涼飲料、ソーセージ、ナゲットなど。[1]
この分類の「使い方」
ただし、このNOVA分類は絶対的なものではなく、どこに当てはまるか曖昧な食品もあります。
あくまで「何に注意すべきか」を教えてくれる“目安”として使い、最終的には「栄養の中身」と「食べる量・頻度」で判断することが大切です。[2] [11]
加工の「良い面」もきちんと理解する
安全性や栄養面でのメリット
加工には、私たちが食品を安全に、いつでも手に入れられるようにしてくれるメリットがあります。加熱、冷凍、乾燥、発酵といった技術は、保存性や安全性を高めてくれます。野菜の種類や条件によっては、冷凍や下茹で(ブランチング)がビタミンの損失を抑えられるという研究報告もあります。[17] [18]
また、不足しがちな栄養素を強化した食品(例:シリアル、栄養強化米など)は、健康目標の達成を助けてくれます。[12]
忙しい日々の味方として
共働きや子育て世帯など、忙しい日々を送る人々にとって、「時短」や「持ち運びやすさ」は健康的な食生活を続けるために重要な要素です。これらのメリットを活かしつつ、中身(栄養)と量を上手に調整するのが現実的な付き合い方と言えるでしょう。
超加工食品(UPF)の健康リスク:研究が示す「関連」
多くの研究が示す「関連」
多くの研究が、UPFの摂取量が多いことと、健康問題との「関連」を指摘しています。
例えば、スペインの研究では、UPFを1日に4食以上食べる人は、ほとんど食べない人と比べて総死亡リスクが1.62倍だったと報告されました。[6] また、フランスの研究では、食事に占めるUPFの割合が10%増えるごとに、心血管疾患のリスクが1.12倍になるという結果でした。[5] ヨーロッパ7カ国の研究でも、UPFの摂取量が多いほど、がんや心臓病、糖尿病などを複数併発するリスクが高まる傾向が示されています。[7] 2024年の大規模なレビュー(多くの研究をまとめた研究)でも、UPFの摂取は多くの健康問題と「有害な方向」で関連していると整理されました。[8]
ただし「原因」とは言えない(観察研究の限界)
ここで重要なのは、これらの研究の多くが「観察研究」であるという点です。これは「UPFを食べた“から”病気になった」という原因と結果(因果)を直接証明するものではなく、「UPFを多く食べる生活習慣の人に、病気が多かった」という関連(相関)を示したものです。
とはいえ、これだけ多くの研究で一貫した傾向が示されているため、「中身(栄養)の偏り」や「食べやすさによる過剰摂取」が健康に良くない影響を与えるという見方を強めるものとなっています。[5] [6] [7] [8]
“中身”と“食べやすさ”がなぜ問題か?
無意識の「食べ過ぎ」を招く仕組み
UPFが健康に影響を与える「仕組み」として、最も注目されているのが、無意識に食べ過ぎてしまうことです。信頼性の高い研究(ランダム化比較試験)で、参加者に「UPF中心の食事」と「加工の少ない食事」をそれぞれ2週間ずつ、好きなだけ食べてもらった実験があります。
栄養バランスは揃えていたにもかかわらず、「UPF中心の食事」の期間は、1日あたり約500kcalも多くカロリーを摂取し、体重が約0.9kg増加しました。これは、UPFの「やわらかさ」や「食べやすさ」が咀嚼(そしゃく)回数や食べるスピードに影響し、満腹感を得る前に食べ過ぎてしまうことが原因ではないかと考えられています。[4] 最近の研究では、UPFは咀嚼の頻度が下がり、結果としてエネルギー摂取が増加する可能性も示されています。[19] [20]
その他の要因(味の設計や添加物など)
また、脂質・糖分・塩分を絶妙に組み合わせた、「もっと食べたい」と感じさせる“やみつき”になる味の設計(ハイパーパラタブル食品)が、食欲を過剰に刺激する可能性も指摘されています。[11]
その他、特定の添加物(例:一部の乳化剤)が短期的に腸内環境や代謝に影響を与えたという研究報告[9]や、UPFを多く食べる人ほど包装由来の特定の化学物質の尿中濃度が高かったという米国の調査報告[10]もありますが、これらはまだ限定的な知見であり、さらなる研究が必要です。
「原因」に迫る研究(介入研究)が示すこと
「食べ過ぎ」を引き起こすという証拠(2019年)
先に紹介した2019年の研究[4]は、UPFが「カロリーの過剰摂取」と「体重増加」を“直接”引き起こしうることを、世界で初めて人による試験で示しました。
栄養を揃えても「加工度の低さ」が重要(2025年)
さらに最近(2025年)の研究では、「健康的な食事ガイドライン」に沿って栄養バランスを揃えた上で、「加工度の低い食事」と「UPF中心の食事」を比べる実験が行われました。その結果、「加工度の低い食事」のほうが、「UPF中心の食事」よりも体重減少の効果が有意に大きかったのです(8週間の体重変化:加工度の低い食事 −2.06% vs UPF中心の食事 −1.05%)。[16]
これらの研究は、病気や死亡といった最終的な結果(アウトカム)を見たものではありません。しかし、その手前の段階である「カロリー摂取」や「体重」において、加工度の低い食事のほうが有利である可能性を強く示しています。[4] [16]
きょうからできる「上手な付き合い方」
では、私たちは加工食品とどう付き合っていけばよいのでしょうか。NOVA分類で「グループ4かも?」と迷ったら、「中身(栄養)」と「量」で判断する、という3つの具体的な方法をご紹介します。
1. 「栄養成分表示」の5項目で判断する
「無添加」や「オーガニック」という言葉も大切ですが、まずは「数字」を見ましょう。日本の食品表示では、以下の5項目(または4項目)の表示が基本です。[13]
【栄養成分チェック・ミニガイド】
- まず見る(最優先):「熱量(カロリー)」と「食塩相当量」
- 食べ過ぎや塩分の過剰摂取に直結します。
- 次に見る(できれば):「たんぱく質」と「炭水化物(-糖質・-食物繊維)」
- たんぱく質は足りているか? 食物繊維は含まれているか?(※食物繊維は任意表示)
- 最後に確認:「脂質」
- 脂質が極端に多くないか?(特に飽和脂肪酸)
時間がない時は、まず「食塩相当量」と「熱量」だけでもチェックする習慣をつけましょう。
2. 「置き換え」を意識する(早見表)
“UPFゼロ”を目指すのは現実的ではありません。似たような食品カテゴリの中で、より「中身」の良いものに置き換えるのが実践的です。
| カテゴリ | 避けたい選択(UPF寄り) | 賢い選択(より良い栄養) |
|---|---|---|
| 朝食・パン | 菓子パン、甘いシリアル | 全粒粉パン、おにぎり、プレーンヨーグルト、オートミール |
| 昼食・麺類 | カップ麺、味付きの冷凍パスタ | 冷凍うどん+冷凍野菜+卵、そば、具材の多いサンドイッチ |
| 間食・おやつ | スナック菓子、クッキー、清涼飲料 | ナッツ類、果物、高カカオチョコ、無糖の炭酸水やお茶 |
| 夕食・おかず | ナゲット、加工肉(一部)、揚げ物総菜 | 蒸し鶏、焼き魚、冷凍野菜、素材系の缶詰(サバ缶など) |
3. 「頻度と量」を決める
どんな食品でも、「食べ過ぎ」が最大のリスクです。“UPFをゼロにしよう”と頑張りすぎると長続きしません。「食べる頻度」や「1回に食べる量」の上限を自分で決めることが現実的です。
その分、満足感の高い「加工度の低い食事(グループ1~3)」に予算や手間を回しましょう。冷凍・缶詰・レトルトでも、食塩や糖分が少ないものや、野菜や豆などの「素材系」を選べば、賢く活用することができます。[17] [18]
よくある質問(FAQ)
それらは品質の一側面を示しているにすぎません。「無添加」をうたっていても、高カロリー、高糖分、高脂質、高塩分であれば、「食べやすさによる過剰摂取」のリスクは変わりません。ラベル裏の「栄養成分(数字)」で判断する習慣をつけましょう。[13]
日本で使われる添加物は、国の機関(食品安全委員会)が安全性を評価していることをまずご理解ください。[15] その上で、どの食品にも言えることですが、「量」と「そればかり食べないこと(置き換え)」が基本です。個別の添加物の影響を過度に心配するよりも、食事全体の「栄養の中身」と「食べる頻度」を管理するほうが、健康への影響はずっと大きいと考えられます。[9]
一概に「悪い」とは言えません。素材系の冷凍野菜(カットほうれん草など)や、味付けされていない豆類のレトルトなどは、自炊の強い味方になります。例えば、野菜のブランチング(下茹で)は、その過程で水溶性ビタミンの一部が失われる一方、酵素の働きを止めることで冷凍保存中の栄養劣化を防ぐという重要な目的があります。条件次第では、生の野菜を調理するよりビタミンが保たれているケースもあり得ます。[17] [18]
まとめ
本記事でお伝えしたかったことは、悪いのは「加工」そのものではなく、その「中身(栄養の偏り)」と「食べやすさが招く過剰摂取」である、ということです。NOVA分類は便利な「注意喚起の目安」として活用し、最終的な判断は、食品ラベルの「栄養成分(数字)」と「食べる量・頻度」で決めていきましょう。
信頼できる研究では、「食べやすさ」が「食べ過ぎ」や「体重増加」につながる可能性が強く示されています。「栄養成分を見る」「置き換える」「頻度と量を決める」。この3つを実践するだけで、加工食品と賢く付き合っていくことは十分に可能です。
参考文献
[1] Monteiro CA, Cannon G, Levy RB, Moubarac JC, Louzada MLC, Rauber F, et al. Ultra-processed foods: what they are and how to identify them. Public Health Nutrition. 2019;22(5):936–941. https://doi.org/10.1017/S1368980018003762.
[2] Gibney MJ. Ultra-processed foods: definitions and policy issues. Current Developments in Nutrition. 2019;3(2):nzy077. https://doi.org/10.1093/cdn/nzy077.
[3] Martini D, Godos J, Bonaccio M, Vitaglione P, Grosso G. Ultra-Processed Foods and Nutritional Dietary Profile: A Meta-Analysis of Nationally Representative Samples. Nutrients. 2021;13(10):3390. https://doi.org/10.3390/nu13103390.
[4] Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, Cai H, Cassimatis T, Chen KY, et al. Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake. Cell Metabolism. 2019;30(1):67–77.e3. https://doi.org/10.1016/j.cmet.2019.05.008. (※訂正あり)
[5] Srour B, Fezeu LK, Kesse-Guyot E, et al. Ultra-processed food intake and risk of cardiovascular disease: prospective cohort study (NutriNet-Santé). BMJ. 2019;365:l1451. https://doi.org/10.1136/bmj.l1451.
[6] Rico-Campà A, Martínez-González MA, Alvarez-Alvarez I, et al. Association between consumption of ultra-processed foods and all cause mortality: SUN prospective cohort study. BMJ. 2019;365:l1949. https://doi.org/10.1136/bmj.l1949.
[7] Cordova R, Viallon V, Fontvieille E, et al. Consumption of ultra-processed foods and risk of multimorbidity of cancer and cardiometabolic diseases: a multinational cohort study. The Lancet Regional Health – Europe. 2023;35:100771. https://doi.org/10.1016/j.lanepe.2023.100771.
[8] Lane MM, Gamage E, Du S, et al. Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses. BMJ. 2024;384:e077310. https://doi.org/10.1136/bmj-2023-077310.
[9] Chassaing B, Van de Wiele T, De Bodt J, et al. Randomized controlled-feeding study of dietary emulsifier carboxymethylcellulose reveals detrimental impacts on the gut microbiota and metabolome. Gastroenterology. 2022;162(3). https://doi.org/10.1053/j.gastro.2021.11.006.
[10] Martínez Steele E, Khandpur N, da Costa Louzada ML, Monteiro CA. Association between dietary contribution of ultra-processed foods and urinary concentrations of phthalates and bisphenol in a nationally representative sample of the US population aged 6 years and older. PLOS ONE. 2020;15(7):e0236738. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0236738.
[11] Fazzino TL, Rohde K, Sullivan DK. Hyper-Palatable Foods: Development of a Quantitative Definition and Application to the US Food System Database. Obesity. 2019;27(11):1761–1768. https://doi.org/10.1002/oby.22639.
[12] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント(スライド集). 2025. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf(2025-11-09アクセス).
[13] 消費者庁. 早わかり食品表示ガイド(令和7年4月版・事業者向け). 2025. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pamphlets/assets/food_labeling_cms201_250512_02.pdf(2025-11-09アクセス).
[14] U.S. Food and Drug Administration. Front-of-Package (FOP) Nutrition Labeling. 2025. https://www.fda.gov/food/nutrition-food-labeling-and-critical-foods/front-package-nutrition-labeling(2025-11-09アクセス).
[15] Food Safety Commission of Japan(食品安全委員会). 食品添加物の食品健康影響評価に関する基本的考え方(ガイドライン). 2021. https://www.fsc.go.jp/(該当ページ内資料, 2025-11-09アクセス).
[16] Dicken SJ, Jassil FC, Brown A, et al. Ultraprocessed or minimally processed diets following healthy dietary guidelines on weight and cardiometabolic health: a randomized, crossover trial. Nature Medicine. 2025;31:3297–3308. https://doi.org/10.1038/s41591-025-03842-0.
[17] Lee S, Yoon J, Lee JY, Jo H, Kim G, Lee SG, et al. Different cooking methods and the content of vitamins and true retention in selected vegetables. Food Science and Biotechnology. 2018;27(2):333–342. https://doi.org/10.1007/s10068-017-0281-1.
[18] Tosun BN, Yücecan S. Influence of commercial freezing and storage on vitamin C content of some vegetables. International Journal of Food Science & Technology. 2008;43(2):316–321. https://doi.org/10.1111/j.1365-2621.2006.01436.x.
[19] Hamano S, Louie JCY, et al. Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency: A randomized, open-label, crossover study. Diabetes, Obesity and Metabolism. 2024;26(11):5431–5443. https://doi.org/10.1111/dom.15922.
[20] Louie JCY. Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency: A randomized, open-label, crossover study. Diabetes, Obesity and Metabolism. 2025;27(3):1618. https://doi.org/10.1111/dom.16044.
注:本記事の要点は、2025年11月9日(日本時間)時点の一次資料・公的資料に基づく。観察研究は残余交絡・測定誤差、介入研究は期間(短期)・外的妥当性などの限界がある。重要な結論には発表年を併記した。

