PriGym | 【池袋】パーソナルジム
【総消費カロリーの全内訳】ダイエットとエネルギー消費の科学:基礎代謝・食事・NEAT、痩せる仕組みのすべて
ダイエットや体重管理を考える上で、食事(摂取カロリー)と運動(消費カロリー)の関係を理解することは基本中の基本です。しかし、体が1日に消費するエネルギー量は、単に運動だけで決まるわけではありません。この記事では、エネルギー消費の内訳と、食事がそれにどのように影響するのかを科学的な視点から解説します。
あなたの体のエネルギー収支:基本原則
体重管理の最も基本的な原理は「エネルギーバランス」です。体に取り入れるエネルギー(食事や飲み物からのカロリー)と、体が消費するエネルギー(総エネルギー消費量)のバランスによって、体重は増減します。
- 摂取カロリー > 消費カロリー → 体重増加
- 摂取カロリー < 消費カロリー → 体重減少
- 摂取カロリー = 消費カロリー → 体重維持
このバランスにおける「消費カロリー」側が「1日の総エネルギー消費量(TDEE: Total Daily Energy Expenditure)」です。TDEEは、体が24時間で燃焼する総カロリー量を指します。
日々の消費カロリーの内訳:エネルギー消費の構成要素
【表記についての注記:なぜ「消費された」と書くのか】
教科書や公的文書では、代謝量(エネルギー消費量)を「消費されるエネルギー」と表記することが一般的です。
これは、専門的な用語の定義としては正しい表現です。しかし、一般の読者にとっては「既に消費する事が決められたエネルギー量」である、という誤解を招く一因になっていると筆者は考えています。
そこでこの記事では、代謝量があくまで「(体が)実際に使った」エネルギー量実測値(多くの場合その推定値)であることを明確にするため、あえて「消費された」という表現を採用しています。(詳しくは[その常識、見直しませんか?「基礎代謝=最低摂取カロリー」という誤解と正しい知識]もご覧ください。)
TDEEは、主に以下の3〜4つの要素から成り立っています。
基礎代謝量(BMR)または安静時代謝量(RMR)
体が完全に安静な状態で生命機能を維持するために消費されたエネルギーです(呼吸、血液循環、細胞生成など)。TDEEの最も大きな割合(約60~70%)を占めます (1)。厳密なBMRよりも測定が容易なRMR(安静時代謝量)が一般的に用いられます。
食事誘発性熱産生(TEF: Thermic Effect of Food)
食物を消化、吸収、代謝する過程で 消費された エネルギーです。混合食(通常の食事)の場合、TDEEの約5~15%を占めます (2)。この割合は栄養素によって異なり、目安としては たんぱく質が摂取エネルギーの約20–30%、炭水化物が約5–10%、脂質が約0–3%(なお、アルコールも約10–15%)と、たんぱく質が最も高くなります (1, 2)。
活動による熱産生(EAT + NEAT)
運動や日常活動によるエネルギー消費で、TDEEの約15~30%を占めます。ただし、これは一般的な生活者の目安であり、仕事や運動習慣による個人差が非常に大きい要素です(例:アスリートなど高活動の人はさらに高くなります)(1)。なお、活動量が極端に高い場合、体が他の消費を抑制するように適応し、総エネルギー消費量(TDEE)が活動量に比例しては増えなくなる可能性(「総エネルギー消費量の制約」仮説)も近年指摘されています (6)。ただし、この「制約(代償)」は主に高活動域で見られる現象であり、低〜中程度の活動レベルでは、活動量の増加がTDEEの増加に繋がりやすい(加算モデルが成り立つ)と考えられています。これはさらに2つに分類されます。
- 運動性活動熱産生(EAT: Exercise Activity Thermogenesis)
ランニングや筋トレなど、意図的・計画的な運動によって 消費された エネルギーです。 - 非運動性熱産生(NEAT: Non-Exercise Activity Thermogenesis)
睡眠時や食事時、計画的な運動(EAT)を除く、すべての日常的な身体活動(歩行、家事、姿勢維持、そわそわするなど)によって 消費された エネルギーです。(詳しくは NEATに関するこちらの記事 もご覧ください。)
| 項目 | 代表的な目安 | 注記 |
|---|---|---|
| BMR/RMR | TDEEの約60–70% (1) | 生活者ではRMR表記が一般的 |
| TEF | TDEEの約5–15% (2) | たんぱく質のTEFが相対的に高い (1, 2) |
| EAT+NEAT | TDEEの約15–30% (1) | 一般的な目安。活動量で大きく変動。 |
これらの要素を理解することで、エネルギー消費が単に「計画的な運動」だけではないことがわかります。
食事はエネルギー消費量にどう影響するか?
食事(ダイエット)は、エネルギー消費量(TDEE)に直接的および間接的に影響を与えます。
直接的な影響:食事誘発性熱産生(TEF)
前述の通り、食べ物を処理する過程でエネルギーが消費されます。これがTEFです。特にタンパク質は、炭水化物や脂質よりもTEFを高める効果が大きいため (2)、同じカロリーを摂取しても、タンパク質が多い食事の方が、食事によるエネルギー消費量はわずかに多くなる可能性があります。ただし、これは相対的な差であり、食事構成の変更だけでTDEE全体が大幅に変わるわけではなく、総エネルギー消費量への影響は小〜中等度と考えるべきです。
間接的な影響:エネルギーバランスと適応的熱産生
食事による影響でより複雑なのは、エネルギーバランスの変化を通じた間接的な影響です。体には、摂取カロリーの変化に応じてエネルギー消費量を調整する「適応的熱産生」というメカニズムがあります。
- エネルギー余剰(過食)の場合: 意図的に通常より多くのカロリーを摂取すると、体が余分なエネルギーを熱として放散させようとし、TDEEが増加する傾向があります。この増加分の一部は、NEAT(非運動性熱産生)の上昇によって説明されることがあります。実際、過食実験において、このNEATの反応の個人差が、体脂肪の蓄積やすさを強く説明する(具体的には、NEATの増加量が大きい人ほど、体脂肪の蓄積が少ないという強い負の相関が示された)という著名な研究があります (3)。
- エネルギー不足(カロリー制限)の場合: 逆に、摂取カロリーを制限(減量)すると、体はエネルギーを節約しようとしてTDEEを低下させることがあります。これは基礎代謝量の低下や、無意識の活動(NEAT)の減少などによって起こり得ます (5)。これが、ダイエット中に体重減少が停滞する(プラトー)原因の一つと考えられています。このTDEEの低下(適応的熱産生)は、減量幅や期間、測定方法によっても変動しますが、群平均で約100~300 kcal/日程度の低下が報告されることが多く (4)、この適応が(特に大幅な減量後)長期間持続する可能性も示唆されています (7)。
したがって、食事の内容(主要栄養素の比率など)はTEFを通じてTDEEに直接影響しますが、食事による総摂取カロリーの変化は、エネルギーバランスの状態を変えることで、適応的熱産生(NEATの変化を含む)という形でTDEEに間接的な影響を与えるのです。
まとめ:食事とエネルギー消費の相互作用
食事とエネルギー消費の関係は、単に「摂取カロリー vs 運動による消費カロリー」という単純なものではありません。
- 食事自体がエネルギー消費(TEF)を引き起こします。
- 食事によるエネルギーバランスの変化(過剰または不足)は、体のエネルギー消費量(特に基礎代謝やNEATを含む適応的熱産生)を変化させる可能性があります。
- この適応反応には個人差があり、体重の増減しやすさに関わっています。
体重管理においては、摂取カロリーを意識することはもちろん重要ですが、同時に、体がどのようにエネルギーを消費しているのか、そして食事がその消費にどのように影響を与えるのかを理解することが、より効果的なアプローチにつながるでしょう。
主な参考文献
- National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine; Health and Medicine Division; Food and Nutrition Board; Committee on the Dietary Reference Intakes for Energy. Factors Affecting Energy Expenditure and Requirements. In: Dietary Reference Intakes for Energy. Washington (DC): National Academies Press; 2023. https://doi.org/10.17226/26818.
- Westerterp KR. Diet induced thermogenesis. Nutrition & Metabolism. 2004;1:5. https://doi.org/10.1186/1743-7075-1-5.
- Levine JA, Eberhardt NL, Jensen MD. Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science. 1999;283(5399):212–214. https://doi.org/10.1126/science.283.5399.212.
- Müller MJ, Bosy-Westphal A. Adaptive thermogenesis with weight loss in humans. Obesity (Silver Spring). 2013;21(2):218–228. https://doi.org/10.1002/oby.20027.
- Leibel RL, Rosenbaum M, Hirsch J. Changes in energy expenditure resulting from altered body weight. New England Journal of Medicine. 1995;332(10):621–628. https://doi.org/10.1056/NEJM199503093321001.
- Pontzer H, Durazo-Arvizu R, Dugas LR, Plange-Rhule J, Bovet P, Forrester TE, et al. Constrained total energy expenditure and metabolic adaptation to physical activity in adult humans. Current Biology. 2016;26(3):410–417. https://doi.org/10.1016/j.cub.2015.12.046.
- Fothergill E, Guo J, Howard L, Kerns JC, Knuth ND, Brychta R, et al. Persistent metabolic adaptation 6 years after “The Biggest Loser” competition. Obesity (Silver Spring). 2016;24(8):1612–1619. https://doi.org/10.1002/oby.21538.

