ホーム > ダイエット情報局 > FODMAPの基礎知識|代表食品と1食の上限目安

FODMAPの基礎知識|代表食品と“1食の上限目安”早見表

FODMAP(フォドマップ)は発酵性のオリゴ糖(フルクタン/ガラクトオリゴ糖)・二糖類(乳糖)・単糖類(余剰果糖)・ポリオールの総称です。小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい短鎖糖質で、IBSの膨満・腹痛・下痢/便秘を誘発しやすい人がいます[1]。

すぐ分かる早見表(代表カテゴリーと“1食の上限目安”)

低FODMAPかどうかは「食材×量×個人差」です。 下表の「1食の上限目安(研究値)」は、一度に摂っても症状が起きにくい量の目安です。国際レビュー(Varney 2017)と穀類の実測研究(Schmidt 2021)に基づいて整理しています。野菜・果物等はオリゴ糖<0.2 g/食、穀類・豆は<0.3 g/食といったカテゴリー別の幅がある点にご注意ください[1,10]。

【FODMAP代表と1食の上限目安(研究値|参考)】

区分高FODMAPの主因低/代替の考え方“1食の上限目安”(研究ベース)
オリゴ糖(フルクタン/ガラクトオリゴ糖)小麦・ライ麦・豆類など米/米粉、根菜・果菜の一部、木綿豆腐など<0.2–0.3 g/食(果菜等0.2/穀・豆0.3)
二糖類(乳糖)牛乳・一部ヨーグルト乳糖不使用乳、硬質チーズの一部<1.0 g/食
単糖類(余剰果糖)果糖>ブドウ糖の果物・蜂蜜余剰果糖の少ない果物を少量<0.15 g/食(単独FODMAPなら<0.4 g/食)
ポリオール(糖アルコール)ソルビトール/マンニトール多い果物・甘味料砂糖/メープルを適量合計<0.4 g/食(単独なら各<0.2 g)

注:製品差・熟度・調理でFODMAP量は変動します。まずは少量からにしてください。表は診断や治療の代替ではありません[1,10]。

関連記事


FODMAPとは?——初心者向けに

  • 頭字語Fermentable Oligosaccharides(フルクタン/ガラクトオリゴ糖)、Disaccharides(乳糖)、Monosaccharides(余剰果糖)、And Polyols(糖アルコール)を指します[1]。
  • なぜ症状が出るのか(2つの機序)
    浸透圧効果:吸収されにくい糖が小腸内の水を引き込み、水様便やお腹のゴロゴロの一因になります[2]。
    発酵ガス:未吸収のFODMAPが大腸で水素/メタンを産生し、膨満や痛みにつながります[3]。
  • 誤解の訂正:FODMAPは「悪い栄養素」ではありません。多くはプレバイオティクスでもあり、症状の出やすい人が“量と頻度”を調整する対象です[1]。

日本の食卓で多い“高FODMAPの由来”と置き換え

  • 穀類(フルクタン):小麦・ライ麦は米/米粉に置き換えるのが基本です。長時間発酵等で低減する例もありますが、商品差が大きいです[10,11]。
  • 豆類(ガラクトオリゴ糖):大豆・レンズ豆・ヒヨコ豆は、水切り・凝固等の加工でガラクトオリゴ糖が相対的に下がる製品(例:木綿豆腐)もあります[1]。
  • 乳製品(乳糖):牛乳・通常ヨーグルトは、乳糖不使用乳や硬質チーズ(一部)を選ぶと取り入れやすいです[1]。
  • 果物・甘味(余剰果糖/ポリオール):りんご・梨・蜂蜜・ソルビトール/マンニトール含有食品は、少量分割がコツです[1,10]。

“量”がカギ——1食の上限目安の使い方(研究ベース)

  • オリゴ糖(フルクタン/ガラクトオリゴ糖)<0.2–0.3 g/食野菜・果物等は0.2穀類・豆は0.3)が目安です[1,10]。
  • 乳糖<1.0 g/食が目安です[1]。
  • 余剰果糖<0.15 g/食他FODMAPが無い場合は<0.4 g/食)が目安です[1,10]。
  • ポリオール合計<0.4 g/食単独なら各<0.2 g)が目安です[1]。

これらの基準は臨床研究で妥当性が検証され、後続の食品実測・製品評価でも参照基準として使われています[10,11]。実践では「上限目安の範囲内」に収める意識がポイントです。

調理・発酵でどう変わるのか——パンと大豆製品のポイント

  • パン長時間発酵(サワードウ)や酵素処理でフルクタンが低減し得る一方で、マンニトールが増えるなどの相殺もあります。白小麦パンで上限目安に収まる例全粒・ライ麦で超過する例など多様です。新製品は少量から試すのが安全です[10,11]。
  • バイオプロセシング:酵母・乳酸菌・酵素を使うFODMAP低減技術のレビューもあり、70–90%低減の報告があります。ただし製品差が大きいため、一律には判断できません[9]。
  • 大豆加工水切り/凝固などで可溶性のガラクトオリゴ糖が減る方向の傾向があります。ただし銘柄差が大きいため、量を区切って再導入することをおすすめします[1]。

IBSとの関係

  • 低FODMAPは一部の人で症状(膨満・腹痛・便通)をやわらげることがあります[6,7]。
  • やり方は3ステップ除去(4–6週以内)→再導入→個別化です[4]。
  • 長く厳しく続けないのが基本です。腸内のビフィズス菌が一時的に減ることがあるためです[8]。

ポイント

  • 研究の質が高い試験でも、「効く人・効かない人」がいます。万能ではないですが選択肢の一つです[6,7]。
  • 医師や管理栄養士の指導下で進めると、安全に進めやすいです。
  • 公的ガイドライン(AGA 2022、ACG 2021)も「試してよい食事法」として紹介していますが、強い推奨ではありません[4,5]。
  • 日本の公的基準(食事摂取基準)はFODMAPの具体的な運用までは定めていません[13]。

おすすめの進め方(簡単プロトコル)

  1. 4–6週だけ厳しめに減らします(必要以上に長くしません)。
  2. 症状が落ち着いたら、食品を1種類ずつ少量から再導入して許容量を見つけます
  3. 最終的に、必要最小限だけ制限する日常食に落とし込みます。

結論:低FODMAPは根治療法ではなく対症療法です。無理なく、短期→再導入→個別化で付き合うのがコツです[4,5,8]。

よくある質問(Q&A)

「高FODMAP=体に悪い」のですか?

善悪ではなく“人×量”の問題です。多くはプレバイオティクスでもあるため、1食の上限目安を手がかりに少量から試すのが現実的です[1]。

バナナは熟度で変わりますか?

熟度でFODMAPが変わり得るとの報告はありますが、定量は製品や研究でばらつきます。まずは青めを少量からにするのが無難です(量の管理を最優先にしてください)[1]。

サワードウなら安心ですか?

低減例はありますが一律ではありません。発酵条件や原料で差が大きいため、少量から評価してください[10,11]。

木綿豆腐は“大豆より食べやすい”のですか?

水切り/凝固でガラクトオリゴ糖が下がる方向の傾向があり、取り入れやすい製品もあります。ただし製品差に注意し、再導入で許容量を確認してください[1]。

低FODMAPはいつまで続けますか?

除去4–6週→再導入→個別化が原則です。長期の全面除去は非推奨で、腸内細菌への配慮が必要です[4,8]。

【参考文献リスト】

  1. Varney J, Barrett JS, Scarlata K, Catsos P, Gibson PR, Muir JG. FODMAPs: food composition, defining cutoff values and international application. Journal of Gastroenterology and Hepatology. 2017;32(Suppl 1):53–61. https://doi.org/10.1111/jgh.13698
  2. Marciani L, Cox EF, Hoad CL, Pritchard S, Totman JJ, Foley S, et al. Postprandial changes in small bowel water content in healthy subjects and patients with irritable bowel syndrome: assessment with MRI. Gastroenterology. 2010;138(2):469–477.e1. https://doi.org/10.1053/j.gastro.2009.10.055
  3. Ong DK, Mitchell SB, Barrett JS, Shepherd SJ, Irving PM, Biesiekierski JR, et al. Manipulation of dietary short-chain carbohydrates alters the pattern of gas production and genesis of symptoms in irritable bowel syndrome. Journal of Gastroenterology and Hepatology. 2010;25(8):1366–1373. https://doi.org/10.1111/j.1440-1746.2010.06370.x
  4. Chey WD, Hashash JG, Manning L, Chang L. AGA Clinical Practice Update on the role of diet in irritable bowel syndrome: Expert review. Gastroenterology. 2022;162(6):1737–1745.e5. https://doi.org/10.1053/j.gastro.2021.12.248
  5. Lacy BE, Pimentel M, Brenner DM, Chey WD, Keefer LA, Long MD, et al. ACG Clinical Guideline: Management of irritable bowel syndrome. The American Journal of Gastroenterology. 2021;116(1):17–44. https://doi.org/10.14309/ajg.0000000000001036
  6. Halmos EP, Power VA, Shepherd SJ, Gibson PR, Muir JG. A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome: a randomized controlled trial. Gastroenterology. 2014;146(1):67–75.e5. https://doi.org/10.1053/j.gastro.2013.09.046
  7. Böhn L, Störsrud S, Liljebo T, Collin L, Lindfors P, Törnblom H, et al. Diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome as well as traditional dietary advice: randomized controlled trial. Gastroenterology. 2015;149(6):1399–1407.e2. https://doi.org/10.1053/j.gastro.2015.07.054
  8. So D, Loughman A, Staudacher HM. Effects of a low FODMAP diet on the colonic microbiome in irritable bowel syndrome: a systematic review with meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition. 2022;116(4):943–952. https://doi.org/10.1093/ajcn/nqac176
  9. Nyyssölä A, Ellilä S, Nordlund E, Poutanen K. Reduction of FODMAP content by bioprocessing. Trends in Food Science & Technology. 2020;99:257–272. https://doi.org/10.1016/j.tifs.2020.03.004
  10. Schmidt M, Sciurba E. Determination of FODMAP contents of common wheat and rye breads and the effects of processing on the final contents. European Food Research and Technology. 2021;247:395–410. https://doi.org/10.1007/s00217-020-03633-6
  11. Pitsch J, Sandner G, Huemer J, Huemer M, Huemer S, Weghuber J. FODMAP fingerprinting of bakery products and sourdoughs: quantitative assessment and content reduction through fermentation. Foods. 2021;10(4):894. https://doi.org/10.3390/foods10040894
  12. Fukudo S, Okumura T, Inamori M, Okuyama Y, Kanazawa M, Kamiya T, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for irritable bowel syndrome 2020. Journal of Gastroenterology. 2021;56(3):193–217. https://doi.org/10.1007/s00535-020-01746-z ※2023年に訂正(Correction)あり。
  13. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)報告書. 2024年10月. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。