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「腸活って健康に良さそうだけど、プロバイオティクス? プレバイオティクス? カタカナ用語が多くて、何が違うのかよくわからない…」
「とりあえず毎日ヨーグルトを食べているけど、これで本当に合ってるのかな?」

そんな疑問をお持ちではありませんか?

腸活への関心が高まる一方で、その用語の複雑さに戸惑う方も少なくありません。しかし、ご安心ください。いくつかの基本的なキーワードの違いさえ理解すれば、あなたの腸活はもっと効果的で、楽しいものになります。

この記事は、腸活の基本となる3つの要素、「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」の違いをスッキリ整理するための「地図」です。この記事を読み終える頃には、点在していた知識が繋がり、明日からの食生活をレベルアップさせる具体的なヒントが得られるはずです。

この記事は2025年8月時点の最新情報に基づいています。

この記事でわかること

  • プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスの正確な意味と役割の違い
  • 「発酵食品=プロバイオティクス」ではない、という重要な注意点
  • 腸活の効果を最大化する「シンバイオティクス」の簡単な実践方法
  • 自分に合った腸活を見つけるための、無理なく続けられる現実的なステップ

第1章 プロバイオティクス:腸に届ける「助っ人菌」

まず、最もよく知られている「プロバイオティクス」から見ていきましょう。

  • キーワード:「外から加える」
  • 役割:体に良い働きをする生きた微生物を、食品などから直接摂取すること。

プロバイオティクスは、国際的な専門家組織により「十分な量を摂取した場合に、私たちの健康に良い影響を与えてくれる生きた微生物」と定義されています[1, 3]。

腸内には多種多様な細菌が住んでいますが、そのバランスが乱れると、体調にも影響が出ることがあります。プロバイオティクスは、外からやってきて腸内の良い菌(善玉菌)を応援し、悪い菌(悪玉菌)が増えすぎないように手助けしてくれる、いわば腸内の「助っ人菌」です。

【プロバイオティクスを多く含む食品の例】

  • ヨーグルト
  • 納豆
  • キムチ
  • チーズ(非加熱のもの)
  • ぬか漬けなどの漬物

【重要】発酵食品とプロバイオティクスの違い

味噌や醤油、一部の漬物やパンなど、発酵の過程で微生物が働く食品はたくさんありますが、「発酵食品=すべてがプロバイオティクス」ではありません。プロバイオティクスと表示するためには、以下の厳密な条件を満たす必要があります[3, 9]。

  1. 摂取時点で十分量の生菌を含むこと(表示されている菌数(CFU)を満たす)
  2. 菌株(属・種・株)が特定されていること(例:Bifidobacterium longum BB536)
  3. 保存方法・摂取量が明示されていること
  4. ヒトでの健康利益が示されていること

よく使われる「腸まで届く」は便宜的な表現で、国際的な定義の本質は「生きた微生物が十分量で投与され、ヒトで健康利益を示す」ことです。製品を選ぶ際は、これらの情報が記載されているかを確認し、加熱によって菌が死んでしまわないか注意することが大切です。

【製品選びのチェックポイント】

“プロバイオティクス”と表示されていても、その効果は科学的な裏付けが伴って初めて期待できます。製品に以下の情報が明記されているかを確認しましょう。

  • 属・種・菌株名
  • 1回量当たりの生菌数(CFU)
  • 保存方法
  • 摂取目安

この章のポイント

  • プロバイオティクスは、体に良い「生きた助っ人菌」を外から加えるアプローチです。
  • 「発酵食品」がすべて「プロバイオティクス」とは限りません。
  • 製品を選ぶ際は「菌株名」や「菌数(CFU)」などの表示を確認することが、賢い選択の第一歩です。

第2章 プレバイオティクス:腸にもとからいる菌の「エサ」

次に、プロバイオティクスと名前は似ていますが、役割が全く異なる「プレバイオティクス」です。

  • キーワード:「育てる」
  • 役割:腸内にすでいる善玉菌の栄養源(エサ)となり、その数を増やしたり元気にしたりすること。

プレバイオティクスは「腸内にいる微生物に利用されることで、私たちの健康に良い影響をもたらす物質」と定義されています[5]。

プレバイオティクスとして科学的に確立度が高い代表例は、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、抵抗性でんぷんなどです[6, 7]。これらの成分を含む食材を意識的に摂ることが、腸内環境の土台作りにつながります。

【プレバイオティクスを多く含む食品の例】[7, 10]

  • 野菜類: ごぼう、玉ねぎ、にんにく、アスパラガス
  • 穀物類: 大麦(もち麦など)、オートミール
  • 豆類: 大豆、きな粉
  • 果物類: バナナ(特に青めのものに多い「抵抗性でんぷん」もエサになります)

その他、海藻類やきのこ類も、有用な水溶性・不溶性食物繊維の供給源としてとても有望です。

この章のポイント

  • プレバイオティクスは、腸にもとからいる善玉菌の「エサ」となる成分です。
  • 食物繊維やオリゴ糖が豊富な野菜、果物、全粒穀物から摂取できます。
  • 腸内環境の「土台作り」を担う、腸活の重要なキープレイヤーです。

第3章 シンバイオティクス:菌とエサの「相乗が期待できる組み合わせ」

最後に、「シンバイオティクス」です。これは前の二つを組み合わせた、より戦略的な考え方です。

  • キーワード:「加えて、育てる」
  • 役割:「プロバイオティクス(菌)」と「プレバイオティクス(エサ)」を一緒に摂ること。

シンバイオティクスは、「生きた微生物」と「その微生物に利用される栄養源」を組み合わせたもので、有益な効果が期待できる状態を指します[8]。

例えるなら、「エサを持参でやってくる、やる気満々の新しい住民」
外から来た助っ人菌(プロバイオティクス)が、自分のエサ(プレバイオティクス)を一緒に持ってくるため、腸内で生き残り、定着しやすくなる可能性があります。

ただし、この効果には「相補的(complementary)」(それぞれが独立して働く)なものと「相乗的(synergistic)」(組み合わせることで効果が増す)なものがあり、後者の効果を科学的に示すには更なる研究が必要です。実際の効果は、食品の組み合わせや量、そして個人の体質によって変わることを心に留めておきましょう。

【シンバイオティクスの実践例】

  • ヨーグルト(プロ)に、きな粉(プレ)やバナナ(プレ)をトッピングする
  • 納豆(プロ)に、めかぶ(プレ)やオクラ(プレ)を混ぜる
  • 味噌汁(※)に、わかめ(プレ)やごぼう(プレ)を具材として加える
    • ※味噌は発酵食品ですが、多くの発酵食品と同様に、調理の加熱工程で生きた菌は失活することが多いため、厳密な意味での「プロバイオティクス」の供給源とは言えない場合があります。

この章のポイント

  • シンバイオティクスは、「菌(プロ)」と「エサ(プレ)」を一緒に摂る、効率的なアプローチです。
  • 相乗効果が期待できますが、その効果には個人差があることを理解しておくことが大切です。
  • 「ヨーグルト+きな粉」など、いつもの食事に一工夫するだけで簡単に実践できます。

まとめ:3つの関係が一目でわかる比較表

用語目的・役割キーワード食品・成分の例
プロバイオティクス良い菌を外から直接補給する加えるヨーグルト、納豆、キムチ(菌株・菌数表示のあるもの)
プレバイオティクスもとからいる良い菌を育てる育てる食物繊維、オリゴ糖(野菜、果物、大麦)
シンバイオティクス菌とエサを一緒に摂る加えて、育てるヨーグルト+きな粉、納豆+めかぶ

知っておきたいこと:効果の現れ方には個人差があります

これらのアプローチは多くの研究でその可能性が示されていますが、効果の現れ方には大きな個人差があります。例えば、過敏性腸症候群(IBS)に対する有効性を示唆する報告もありますが、菌の種類や量によって結果は様々です。

大切なのは、完璧を目指すのではなく、「まずは2〜4週間試してみて、ご自身の体調の変化を観察する」という姿勢です。体に合わないと感じたら、無理に続ける必要はありません。

よくあるご質問(FAQ)

Q
結局、どれを一番頑張ればいいの?

A

まずは、様々な種類の野菜や果物、全粒穀物などを食事に取り入れ、腸の土台を作る「プレバイオティクス(エサ)」を意識することから始めるのがおすすめです。その上で、ご自身の体調に合う「プロバイオティクス(菌)」食品を見つけ、両者を組み合わせる「シンバイオティクス」を心がけると、より効果が期待できます。

Q
「ポストバイオティクス」や「短鎖脂肪酸」って何が違うの?

A

非常に良い質問です。これらは混同されがちですが、定義が異なります。

  • ポストバイオティクス:国際的な専門家組織(ISAPP)により「不活化(inanimate)された微生物やその構成成分を含み、私たちの健康に良い影響を与える調製物」と定義されています[2]。生きた菌ではない点が特徴です。
  • 短鎖脂肪酸(SCFA):腸内細菌がプレバイオティクス(食物繊維など)を発酵して生み出す「代謝産物」の代表例です[12]。大腸のエネルギー源になるなど、健康維持に重要な役割を果たします。
    ポストバイオティクスと短鎖脂肪酸は、厳密には区別される、と覚えておきましょう。

Q
ヨーグルトはどれでもいいの?

A

製品によって含まれる菌の種類や数が異なります。パッケージに記載されている菌株名(例:L. rhamnosus GG, B. lactis など)や菌数(CFU)を確認し、まずは同じ製品を2〜4週間続けてみるのがおすすめです。その後、変化がなければ別の製品を試してみるのも良いでしょう。その際は、1製品ごとに2〜4週間の観察期間を設け、ご自身の便通やお腹の張り、ガスの量といった同じ指標で体調の変化を記録すると、比較しやすくなります。

Q
どれくらいで変化を感じられますか?

A

個人差が非常に大きいですが、お通じやお腹の張りなどの変化は、早い方で1〜4週間程度で感じられることがあります。変化が乏しい場合は、食べる食品の種類や量、生活習慣全体を見直してみると良いかもしれません。

結論:できることから始め、あなたの腸を育てよう

ここまで、腸活の3つの基本要素について解説してきました。

  • プロバイオティクス:良い菌を「加える」
  • プレバイオティクス:もとからいる菌を「育てる」
  • シンバイオティクス:菌とエサを「一緒に摂る」

腸活の成功の鍵は、「良い菌を摂る」だけでなく、「自前の菌を育てる」という視点を持ち、この二つを賢く組み合わせることです。まずは今日の夕食で、納豆にめかぶを足してみる。そんな簡単な一歩から、あなたの腸内環境を育て、未来の健康へと繋げていきましょう。

今日からできる!腸活アクションプラン例

【1週間のシンバイオティクス・ミニ計画】

  • 月曜の朝:ヨーグルト(プロ)+きな粉(プレ)+青めのバナナ(プレ)
  • 火曜の昼:いつものごはんに、もち麦(プレ)を混ぜて炊く
  • 水曜の夜:納豆(プロ)に、めかぶ(プレ)とオクラ(プレ)をトッピング
  • 木曜の朝:オートミール(プレ)を牛乳や豆乳で煮て、お好みでフルーツを
  • 金曜の夜:具だくさんの味噌汁。具はわかめ(プレ)とごぼう(プレ)で(※発酵調味料の活用)
  • 土曜の朝:ぬか漬け(プロ/非加熱)を食卓に一品追加
  • 日曜の夜:玉ねぎ(プレ)やにんにく(プレ)を使った野菜スープ

【買い物リストのヒント】

  • :ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌
  • エサ:もち麦、オートミール、玉ねぎ、ごぼう、きのこ類、海藻類、きな粉、バナナ

安全性について特に注意が必要な方

重篤な病気をお持ちの方、免疫抑制剤を使用中の方、中心静脈カテーテルを留置中の方などは、プロバイオティクス製品の摂取がご自身の状態に影響を与える可能性があります。また、IBSなどでFODMAP(特定のオリゴ糖など)に敏感な方は、プレバイオティクス食品によって症状が悪化することがあります。該当する方は、自己判断で始めず、必ず事前に主治医にご相談ください。

免責事項

この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方は、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。

参考文献リスト

[1] Food and Agriculture Organization of the United Nations and World Health Organization. Report of a Joint FAO/WHO Expert Consultation on Evaluation of Health and Nutritional Properties of Probiotics in Food including Powder Milk with Live Lactic Acid Bacteria. 2001.
[2] Salminen S, Collado MC, Endo A, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of postbiotics. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18(9):649-667.
[3] Hill C, Guarner F, Reid G, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2014;11(8):506-514.
[4] 厚生労働省. 令和元年度「腸内細菌叢(腸内フローラ)と健康に関する研究会」報告書. 2020.
[5] Gibson GR, Hutkins R, Sanders ME, et al. Expert consensus document: The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2017;14(8):491-502.
[6] Davani-Davari D, Negahdaripour M, Karimzadeh I, et al. Prebiotics: Definition, Types, Sources, Mechanisms, and Clinical Applications. Foods. 2019;8(3):92.
[7] 厚生労働省. e-ヘルスネット. プレバイオティクス.
[8] Swanson KS, Gibson GR, Hutkins R, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of synbiotics. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2020;17(11):687-701.
[9] Marco ML, Sanders ME, Gänzle M, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on fermented foods. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18(3):196-208.
[10] 厚生労働省. e-ヘルスネット. 食物繊維.
[11] Hosono A. Fermented milks: a new face for an old food. A review. Int J Dairy Technol. 2008;51(1):1-12.
[12] Dalile B, Van Oudenhove L, Vervliet B, Verbeke K. The role of short-chain fatty acids in microbiota-gut-brain communication. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2019;16(8):461-478.
[13] 消費者庁. 特定保健用食品について.

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