ホーム > ダイエット情報局 > ビタミンB2(リボフラビン)完全ガイド:脂質代謝の“潤滑油”を使いこなす

ビタミンB2(リボフラビン)完全ガイド:脂質代謝の“潤滑油”を使いこなす

そもそもビタミンB2って何者?— 体のエネルギー工場を支える「潤滑油」

【この章の要点】

  • ビタミンB2は体内で FMN・FAD に変わり、多数の酸化還元酵素の補酵素としてエネルギー代謝を支える。
  • 特に**脂質代謝(β酸化など)**で重要なため「潤滑油」に例えられる。
  • 不足すると口内炎・口角炎・舌炎/脂漏性皮膚炎/疲労感などが現れやすい。

ビタミンB2(リボフラビン)は水溶性ビタミンの一種。自体が主役で働くのではなく、体内で FMN(フラビンモノヌクレオチド) と FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド) に変換され、多数の脱水素酵素・酸化還元酵素の働きを支えます[2,10]。とくに 脂肪酸のβ酸化や電子伝達系に深く関与するため、「代謝の潤滑油」と呼ばれます[2,10]。

不足するとどうなる?

代謝の潤滑油が切れると、細胞の更新が盛んな部位にサインが出やすくなります。

  • 口内炎・口角炎・舌炎
  • 脂漏性皮膚炎などの肌荒れ
  • 疲労感・倦怠感
  • 乳幼児・小児では成長障害

※ これらは B2に特異的ではありません。持続・反復する場合は他の原因も考慮します[1–4]。

B2が不足しやすい人

  • 小食・偏食の傾向が強い
  • 妊娠・授乳(需要増)
  • アルコール多飲
  • 厳格なヴィーガン(乳・卵・肉を避ける場合)
  • 吸収不全(炎症性腸疾患など)/一部薬剤の影響が示唆されることもあるが、臨床的に重要な薬物相互作用は知られていないと整理されています[3,4]。

ビタミンB2はダイエットに効く?— メカニズムと“現実”

【この章の要点】

  • B2は脂質代謝を助けるが、体脂肪そのものを直接燃やすわけではない。
  • 体重の変化は基本的に摂取エネルギー vs 消費エネルギーの差で決まる。
  • B2の強みは食事改善+運動を伴うときに最大化される。

「B2を飲めば痩せる」は拡大解釈

B2はエネルギー産生を円滑化しますが、体脂肪を積極的に分解・燃焼させる直接作用は確認されていません。B2補充で体重・体脂肪が有意に減少したことを示す大規模RCTの蓄積は不十分です[2,4]。ゆえに、B2だけに減量効果を期待するのは非現実的。食事・活動量の最適化が前提です。

運動と組み合わせるのが成功の鍵

  • WHO(2020)中強度150–300分/週 または 高強度75–150分/週筋力強化を週2日以上[8]
  • 厚労省(2023):**歩行等を1日60分(約8,000歩)**を目安に、筋力トレーニングを週2–3日[7]

美容面での働きと、その限界

【この章の要点】

  • B2は皮膚・粘膜のターンオーバーに必須。
  • 欠乏が原因の肌荒れには効果が期待できる。
  • 健常者が美肌目的で上乗せして得られる効果を示す質の高い研究は限定的

細胞代謝を支えるB2は、皮膚・粘膜の健全性維持に不可欠[3,4]。ただし、ホルモン・ストレス・生活習慣など多因子の影響を受けるため、B2の追加摂取のみで顕著な美容効果を期待するのは過度です。

今日から実践!ビタミンB2の賢い摂り方

【この章の要点】

  • B2は レバー、卵、納豆、乳製品、アーモンド に多い。
  • 1日の推奨量(RDA)を意識し、足し算で組む。
  • 光分解水への流出に注意(熱には比較的安定)。

1日の摂取目標量と主要食品

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、RDAは年齢・性別で細分化。例として 成人男性(30–49歳)1.7 mg/日、成人女性(18–64歳)1.2 mg/日。妊娠・授乳では +0.3 mg/日(妊婦)/+0.6 mg/日(授乳婦)の付加が推奨されます[1]。

主な供給源(代表値) ※文科省「日本食品標準成分表2020(八訂)」より概算[6]/調理・製品差あり

  • 動物性豚・牛レバー、うなぎ、卵(ゆで50 g ≈ 0.16 mg/個)サバ(焼き100 g ≈ 0.37 mg)、牛乳(100 g ≈ 0.15 mg)/ヨーグルト(100 g ≈ 0.14 mg)、チーズ(プロセス100 g ≈ 0.38 mg)
  • 植物性アーモンド(10 g ≈ 0.09–0.11 mg)納豆(100 g ≈ 0.36 mg → 45 g ≈ 0.16 mg)、まいたけ、ほうれん草(100 g ≈ 0.20 mg)

調理・保存のコツ(光・水・熱)

  • 水溶性 → ゆで汁に流出:煮込みやスープなど煮汁ごと食べる
  • 光に弱い → 光分解:牛乳・ヨーグルトは遮光容器を選び、冷蔵庫でも光の当たりにくい位置へ。実験では、蛍光灯下10時間で全乳約30%・脱脂乳約59%のB2減少が報告されています[9]。
  • 熱には比較的安定:長時間加熱よりも光・水対策が優先。

食事モデル(数値は概算/八訂代表値で再集計)

A. 成人女性向け(目標 ≈ 1.2 mg/日)

  • :プレーンヨーグルト 200 g (≈ 0.28 mg) + アーモンド 10 g (≈ 0.09–0.11 mg)
  • :納豆巻(納豆 45 g換算 ≈ 0.16 mg)+ ゆで卵 1個(≈ 0.16 mg
  • :牛乳 200 mL(≈ 0.30 mg
  • :ほうれん草おひたし 80 g(≈ 0.16 mg
  • プロセスチーズ 20 g(≈ 0.08–0.09 mg

⇒ 合計 ≈ 1.23–1.26 mg(RDA 1.2 mg/日を充足)

B. 成人男性向け(目標 ≈ 1.7 mg/日)

  • :飲むヨーグルト 200 mL(≈ 0.30 mg)+ ゆで卵 1個(≈ 0.16 mg
  • :納豆 45 g(≈ 0.16 mg)+ サバ塩焼 100 g(≈ 0.37 mg
  • :牛乳 200 mL(≈ 0.30 mg)+ アーモンド 10 g(≈ 0.09–0.11 mg)
  • :ほうれん草おひたし 80 g(≈ 0.16 mg)+ プロセスチーズ 40 g(≈ 0.15–0.16 mg

⇒ 合計 ≈ 1.69–1.72 mg(RDA 1.7 mg/日をほぼ充足〜充足)

C. 妊娠中・授乳婦(付加量を満たす工夫)

  • Aの女性プラン(≈ 1.23–1.26 mg)に 鶏レバー 25 g(≈ 0.45 mg) を追加
    → **妊婦 RDA相当(1.2 + 0.3 = 1.5 mg/日)**を容易に満たす。授乳婦(+0.6 mg)なら プロセスチーズ 40 g(≈ 0.15–0.16 mg) 等をさらに加えて調整。

外食が多い人の“足し算リスト”:納豆/ゆで卵/ヨーグルト/牛乳/プロセスチーズ/アーモンド を一品プラス。

サプリメントの選び方・使い方

  • 基本は食事から。不足が埋めにくいときの補助と捉える。
  • 選ぶなら ビタミンB群(コンプレックス) で、各成分がRDA前後の製品が合理的。
  • 吸収に上限があるため、食後に分けて少量ずつが無理なく続く。
  • 安全性:B2は余剰が尿で排泄され、耐容上限量(UL)は設定なし。一般的な摂取で重篤な有害事象は稀。ただし服薬中は医療者と相談[1,4]。

FAQ

サプリ後に尿が鮮やかな黄色に。大丈夫?

問題ありません。使われずに余ったリボフラビンの色が出ているだけです。

自分が不足しているかセルフチェックできる?

しつこい口内炎・口角炎はサインの一つ。ただし特異的ではありません。2週間以上続く/繰り返す/発熱・体重減少など随伴症状がある場合は医療機関へ。

まとめ:賢い“足し算”で、内側から調子を上げる

  • B2は脂質代謝の潤滑油となる補酵素の前駆体。ただしB2だけで痩せるわけではない
  • 健康的なダイエットはバランスの良い食事+運動が王道。
  • 卵・納豆・アーモンド・乳製品など、身近な食品を一品足すことから。
  • 完璧を求めず、できることから。 その小さな積み重ねが将来のあなたをつくります。

【免責事項】

本記事は情報提供を目的とし、医療判断を代替するものではありません。持病のある方、妊娠中の方、服薬中の方は、サプリメントの使用や食事療法を始める前に医師・管理栄養士へご相談ください。

【参考文献】

[1] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書・関連資料. 2025. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html

[2] Said HM, Ross AC. Riboflavin. In: Ross AC, Caballero B, Cousins RJ, Tucker KL, Ziegler TR, eds. Modern Nutrition in Health and Disease. 11th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer Health/Lippincott Williams & Wilkins; 2014:325–330.

[3] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN). 「健康食品」の安全性・有効性情報:ビタミンB2(リボフラビン). 2021-07-15更新. https://hfnet.nibn.go.jp/vitamin/detail175/

[4] National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Riboflavin: Fact Sheet for Health Professionals. 2022-05-11更新. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Riboflavin-HealthProfessional/

[5] EFSA NDA Panel (Turck D, et al.). Scientific Opinion on Dietary Reference Values for riboflavin. EFSA Journal. 2017;15(8):4919. https://doi.org/10.2903/j.efsa.2017.4919

[6] 文部科学省. 日本食品標準成分表2020年版(八訂)データベース. https://fooddb.mext.go.jp/

[7] 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要). 2023. https://www.mhlw.go.jp/content/001204942.pdf

[8] World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128

[9] Lee KH, Jung MY, Kim SY. Effects of Ascorbic Acid on the Light-Induced Riboflavin Degradation and Color Changes in Milks. J Agric Food Chem. 1998;46(2):407–410. https://doi.org/10.1021/jf9707086

[10] Balasubramaniam S, Duley JA, Christodoulou J. Riboflavin and coenzyme Q10 in mitochondrial electron transfer chain disorders. J Transl Genet Genom. 2020;4:139–156. https://doi.org/10.20517/jtgg.2020.34

末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。