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【ダイエット】なぜリバウンドするのか?そのメカニズムと対策を徹底解説

「ダイエットに成功した!」と思ったら、あっという間にリバウンドしてしまった…そんな経験はありませんか?

実は、リバウンドにはきちんとした科学的な理由があるのです。

今回は、ダイエットのリバウンドが起こるメカニズムについて、できるだけわかりやすく解説していきます。

【結論】リバウンドの原因と対策(まとめ)

  • リバウンドの主な原因:
    体重減少(特に急激な減少)に対し、体が「飢餓状態」と判断し、強力な防御反応を起こすためです。具体的には、①基礎代謝が低下して「省エネモード」になり(代謝適応)、②食欲を高めるホルモン(グレリン)が増加し、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減少します。
  • リバウンドを防ぐ対策:
    この生理反応を最小限に抑えることが重要です。具体的には、①筋肉を維持するためタンパク質(1.2〜1.6g/kg/日)を十分に摂取し、②筋トレと日常の活動量(NEAT)を維持して消費カロリーを保ち、③減量後の維持計画を徹底することが鍵となります。

ホメオスタシス(恒常性)と体重

私たちの体には、ホメオスタシス(恒常性維持機能)という機能が備わっています。これは、体温や血糖値など、体の状態を一定の範囲内に保とうとする機能のことです。

体重もまた、このホメオスタシスの影響を強く受けます。急激な体重減少(特に飢餓や極端な食事制限によるもの)が起こると、体はそれを「生命の危機」だと判断し、エネルギーを節約し、体重を元の状態に戻そうとする強力な生理的反応(防御反応)を引き起こします。

これが、リバウンドが起こる大きな原因の一つです。これは、体重が単純な“設定値(セットポイント)”に固定されているというより、環境や行動の変化に対して生理状態が適応しようとする結果と考えられています (Speakman et al., 2011 [7])。


リバウンドの鍵を握る「エネルギーギャップ」とは?

ダイエット後の体は、「エネルギーギャップ」と呼ばれる状態に陥りやすくなります (Hill et al., 2009 [14])。

エネルギーギャップとは、簡単に言うと、「減量によって“省エネ”になった体」と「実際のエネルギー摂取量」の間に生じるズレのことです。

ダイエットに成功して体重が減ると、体はエネルギー消費を抑える「省エネモード」に入ります。それにもかかわらず、食欲はむしろ増進してしまうため、減量前と同じように食べているつもりでも、エネルギーが過剰(摂取カロリー > 消費カロリー)になりやすい状態を指します。


なぜ“省エネ”と“食欲増進”が起きるのか?

エネルギーギャップが生じる主な原因は、「ホルモンバランスの変化」と「体の省エネ化(代謝適応)」の2つです。

1. 食欲関連ホルモンの変化

食欲は意志の力だけでなく、ホルモンによっても強力にコントロールされています。

つまり、ダイエット後は「食欲のブレーキ」が効きにくくなり、「食欲のアクセル」が強く踏まれる状態になります。この食欲亢進とホルモンの変化は、体重減少後、少なくとも1年間は持続することが科学的に示されています (Sumithran et al., 2011 [1]) 。

2. 体の省エネ化(代謝適応)

ダイエットによって体重が減ると、体はエネルギー消費を抑えようと適応します。これは、少ないエネルギーでも生きていけるように体が“燃費の良い状態”になるためです。(エネルギー消費全般については「【いまさら聞けない】ダイエットとエネルギー消費量:科学的に痩せるための基礎知識」も参照ください。)

具体的には、以下のような変化が起こります。

  • 基礎代謝(RMR)の低下: 生命維持に必要なエネルギー消費量が、体重減少から予測される以上に低下します。これを代謝適応と呼びます。(※基礎代謝に関するよくある誤解については、近日公開の記事で詳しく解説します。)ある研究では、大幅な減量(リアリティ番組参加者)の後、基礎代謝が予測値より1日あたり約500 kcalも低下し、その適応は6年後も持続していたことが報告されています (Fothergill et al., 2016 [3])。ただし、これは極端な介入を行った小規模な研究であり、この低下幅がすべての人に当てはまるわけではありません。より一般的な減量研究においても、筋肉量を維持しても基礎代謝の低下(代謝適応)が起こることが示されています (Johannsen et al., 2012 [18]; Trexler et al., 2014 [19])。
  • 活動量の変動: 無意識のうちに行う動作(立つ、歩く、姿勢を保つなど)によるエネルギー消費(NEAT: 非運動性熱産生)は、体重減少に伴い低下しうる一方で、非常に大きな個体差があることも知られています(これは過食条件での研究ですが、NEATの個人差の大きさを示しています (Levine et al., 1999 [5]))。NEATについて詳しくは「NEAT(非運動性熱産生)とは?日常の動きが持つ驚くべき力」で解説しています。
  • 熱産生の低下: 食事の消化・吸収に使われるエネルギー(食事誘発性熱産生)や、体温を維持するための熱産生効率が低下します。これは自律神経系(交感神経)の活動低下や甲状腺ホルモンの変動などが関与していると考えられています (Rosenbaum & Leibel, 2010 [4]; Trexler et al., 2014 [19])。

リバウンドはいつ・どれくらいで起きやすい?

リバウンドのリスクは、減量直後の3ヶ月間は特に注意が必要です。この時期は、体がまだ「省エネモード」のままであり、食欲増進ホルモンの影響も強いためです。

さらに、多くの研究で、ダイエットプログラム終了後6ヶ月から12ヶ月にかけて体重再増加が起こりやすいことが示唆されています (Hall & Kahan, 2018 [10])。長期的な維持計画がなければ、高リスクな状態は1年以上続くと考えるべきです。


リバウンドを防ぐには?

この強力な生理的反応に抗い、リバウンドを防ぐためには、エネルギーギャップを意識した対策が重要です。

以下の表は、リバウンドの主な原因と、その対策をまとめたものです。

原因となる生理反応主なサイン(体感)具体的な対策(即時/継続)
代謝適応 (基礎代謝の低下)以前より体が冷える、疲れやすい、だるい即: 活動量(歩数)をログ化する
継: 筋肉量を維持する筋トレ(週2〜3回)
ホルモン変化 (レプチン↓ グレリン↑)強い空腹感、食べても満足しにくい即: 高タンパク質の朝食(卵、魚、ヨーグルト)
継: 7〜8時間の質の良い睡眠を確保する
NEAT低下 (無意識の活動量減)座っている時間が増えた、歩数が減った即: 1日の歩数目標(例: 8,000〜1万歩)を設定
継: 意図的に立つ時間(立位)を1日60分増やす (NEATを高める工夫)

減量のペースはリバウンドに関係あるか?

「ゆっくり(週0.5kg程度)減量する方がリバウンドしにくい」と一般に言われますが、科学的には必ずしもそうとは言えません。

確かにゆっくりした減量は、体への負担が少なく安全です。しかし、ある研究(Purcell et al., 2014 [11])では、速いペースで減量した群と、遅いペースで減量した群とで、長期的なリバウンド率に有意な差はみられませんでした。

リバウンドの最大の要因は「減量ペース」よりも、「減量後に適切な維持計画(食事管理、運動、モニタリング)を実行できるか」に左右されます。

タンパク質をしっかり摂る

タンパク質は筋肉の材料となり、基礎代謝の維持に役立ちます。また、満腹感を得やすく食欲を抑える効果も期待できます。

  • 目安量: 減量中や維持期には、体重1kgあたり1.2〜1.6g/日程度(※腎機能に問題がない場合) (Leidy et al., 2015 [8])。
  • 分け方: 1食あたり0.25〜0.4g/kg(例:体重60kgなら1食15〜24g)に分けて摂ると効率的です (Phillips et al., 2016 [9])。
  • 補足: 1.6 g/kg/日という目安(Morton et al., 2018 [13])は、主にエネルギーが満たされている状態での研究に基づいています。一方、厳しいエネルギー制限下で高頻度の運動を行う場合は、筋肉の減少を抑えるためにさらに高いタンパク質(例:2.4 g/kg/日)が有利であったとする研究(Longland et al., 2016 [16])や、除脂肪体重あたり2.3–3.1 g/kg/日を推奨するレビュー(Helms et al., 2014 [17])もあります。

減量後の「維持カロリー」の落とし穴(例:60kg→55kg)

減量後の体は省エネモードになっているため、単純な計算式で維持カロリーを算出するとリバウンドのリスクが高まります。

  • 簡易計算式(目安): 現在の体重(kg) × 30〜33 kcal
  • 計算例 (60kgから55kgに減量した場合):
    • 55kg × 30 = 1650 kcal
    • 55kg × 33 = 1815 kcal

注意: この1650〜1815 kcalという数値は、あくまで一般的な目安です。代謝適応(基礎代謝の低下)が起きているため、実際の維持カロリーはこれより低い可能性が十分にあります。

より正確な推定には、NIH Body Weight Planner (NIDDK [15]) のような動的モデル(Hall et al., 2011 [12])を使用するか、体重が安定する(週の変動が±0.5kg以内)ポイントを実際に記録しながら探る必要があります。

食欲が暴走する日の即時対処チェックリスト

ホルモンの影響でどうしても食欲が強い日は、意志の力だけで戦うのは非効率です。以下のリストで対処しましょう。

  • 高タンパク質の朝食を摂る (例: ギリシャヨーグルト、卵、鶏むね)
  • 低エネルギー密度の食品を選ぶ (例: 野菜スープ、きのこ類、海藻、こんにゃく)
  • 水分を先に摂る (食事の前に水かお茶を飲む)
  • 睡眠時間を見直す (7時間未満なら仮眠か早めの就寝)
  • ストレス源から離れる (5分間の散歩)

ストレスと睡眠を管理する

ストレスは食欲を増進させるホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促し、過食の原因となります。趣味やリラックスできる時間を作り、ストレス管理を心がけましょう(コルチゾールと体重管理の関係は「コルチゾールと体重管理の科学:ストレスホルモンとの関連を探る」で詳しく解説)。

また、睡眠不足は、食欲を抑えるレプチンを減少させ、食欲を高めるグレリンを増加させることが報告されています (Spiegel et al., 2004 [6])。十分な睡眠時間を確保し、ホルモンバランスを整えましょう(睡眠とダイエットの関係は「【睡眠とダイエットの科学】なぜ痩せにくい?最新エビデンスに基づく睡眠改善アプローチ」をご参照ください)。

運動(特に筋トレ)を習慣化する

運動はエネルギー消費量を増やすだけでなく、代謝適応によって低下した基礎代謝をサポートし、筋肉量を維持・向上させる効果が期待できます。ダイエット中だけでなく、ダイエット後も運動を習慣化することがリバウンド防止の鍵となります。


まとめ

今回は、ダイエットのリバウンドが起こるメカニズム、特に「エネルギーギャップ」について解説しました。

リバウンドは「意志が弱いから」起こるのではなく、体重減少に対する体の強力な生理的防御反応(代謝適応とホルモン変化)によって引き起こされます。

このメカニズムを理解し、体に負担をかけない持続可能な生活習慣(食事・運動・睡眠・ストレス管理)を続けることが、ダイエット成功と長期的な体重維持のために最も大切です。

この記事が、ダイエットを成功させるための一助となれば幸いです。


リバウンドに関するよくある質問(FAQ)

リバウンドはどのくらいの期間で起こりやすい?

減量直後の3ヶ月(12週間)は、ホルモンバランスや代謝が元に戻ろうとする力が強いため、特に注意が必要です。しかし、多くの研究ではプログラム終了後6ヶ月から12ヶ月の期間に体重再増加が起こりやすく、高リスクな状態は1年以上続くと考えられます (Hall & Kahan, 2018 [10])。

どの程度の摂取量に戻せばいい?

「現在の体重(kg) × 30–33 kcal」という簡易式は、あくまで大まかな出発点に過ぎません。代謝適応により実際の必要量はこれより低いことが多いため、過信は禁物です。より正確にはNIH Body Weight Planner (NIDDK [15]; Hall et al., 2011 [12]) などの動的計算ツールを使うか、体重計と食事記録を使いながら安定する摂取量を地道に探る必要があります。

筋トレと有酸素はどちらがリバウンド防止に有効?

どちらも重要ですが、役割が異なります。基礎代謝の維持・向上の観点では筋トレが土台となります。有酸素運動は、NEAT(日常活動)と合わせて消費カロリーを補完する役割を果たします。両方をバランスよく組み合わせることが理想です。

強い食欲が出た日、何を食べればいい?

高タンパク質で低エネルギー密度(かさ増し)の食品が推奨されます。具体的には、鶏むね肉、白身魚、豆腐、納豆、ギリシャヨーグルト、野菜スープ、きのこ類、海藻類などです。これらは満腹感を与えやすく、カロリーオーバーを防ぎます。

停滞期とリバウンドの違いは?

停滞期は減量中に体重が落ちにくくなる時期(生理的適応)を指し、リバウンドは減量後に体重が増加に転じることを指します。停滞期は適応のサインであり、リバウンドはエネルギーバランスがプラスに転じた結果です。

主な参考文献

[1] Sumithran P, Prendergast LA, Delbridge E, Purcell K, Shulkes A, Kriketos A, et al. Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss. The New England Journal of Medicine. 2011;365(17):1597–1604. https://doi.org/10.1056/NEJMoa1105816.

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[3] Fothergill E, Guo J, Howard L, Kerns JC, Knuth ND, Brychta R, et al. Persistent metabolic adaptation 6 years after “The Biggest Loser” competition. Obesity (Silver Spring). 2016;24(8):1612–1619. https://doi.org/10.1002/oby.21538.

[4] Rosenbaum M, Leibel RL. Adaptive thermogenesis in humans. International Journal of Obesity. 2010;34(S1):S47–S55. https://doi.org/10.1038/ijo.2010.184.

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末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。