オリゴ糖の基礎知識と効果、失敗しない選び方|プレバイオティクス入門

要点

  • プレバイオティクスとは「宿主の微生物に選択的に使われ、健康利益をもたらす基質」のことです(ISAPPの定義)[1]。
  • まずは単独で2週間試しますブリストル便形状スケール(1〜7の便の硬さ指標)排便回数を日次で記録し、合わなければ撤退して問題ありません。多くの臨床は3〜4週間評価ですが、家庭運用では2週間で負担や副作用を見極めます[5][7][8][10][11]。
  • 制度の目安量(消費者庁・特保の規格基準)と、臨床・製品設計に基づく実務レンジ分けて提示します。FODMAP(発酵性糖質の総称で、ガスや張りの原因になりやすい群)への感受性や過敏性腸症候群(IBS)では、少量開始が安全です[2][12]。

プレバイオティクスとは?

  • 定義「宿主微生物に選択的に利用され、健康利益をもたらす基質」と定義されています[1]。
  • 本記事の対象:食経験が広く、市販でも見かけるオリゴ糖を中心に比較します(ガラクトオリゴ糖/フラクトオリゴ糖/キシロオリゴ糖/ラクツロース/イソマルトオリゴ糖/ラフィノース)。
  • 関連用語の最初の補足
    • BSSブリストル便形状スケール(1〜7の便の硬さ指標)です[11]。
    • FODMAP発酵性糖質の総称で、ガスや張りの原因になりやすい群のことです[12]。

根拠:ISAPPコンセンサスです[1]。

まずは安全に使うコツ(2週間プロトコル)

  1. 単独で開始します(混ぜずに1種類ずつにします)。
  2. 少量から既定量へ段階的に増量します(各品目の「制度の目安量」と「実務レンジ」は後述します)。
  3. 記録します:毎日、排便回数BSS(1〜7)をメモします。
  4. 2週間で判定します
  • 便が硬すぎる場合は少し増量します。軟すぎる・腹痛・強い張りが出る場合は減量または中止します。
  • 合わなければ撤退して構いません(別の種類に切り替えます)。
  1. 持病・服薬がある方妊娠中重い腹痛や血便がある場合は受診してください

根拠:主要な臨床試験は3〜4週間評価が多く(例:ガラクトオリゴ糖は3週間、キシロオリゴ糖は4週間、フラクトオリゴ糖は7日〜数週間)、家庭運用では2週間で副作用や生活負担を早期に確認し、継続可否を判断するのが現実的です[5][7][8][9][10]。

オリゴ糖の種類と違い(比較・使い分けの早見ガイド)

見方

  • 制度の目安量=日本の特定保健用食品(規格基準型)の別表に基づく、制度上の枠です。
  • 実務レンジ臨床試験や製品設計で妥当とされる範囲で、個人差が大きいです。
    * FODMAP配慮少量開始が基本です[2]。

ガラクトオリゴ糖

根拠:[2][5][8]

フラクトオリゴ糖

  • ねらいの例排便回数の増加/便をやわらかくする一方で、膨満はやや増えやすい傾向があります。
  • 制度の目安量3〜8 g/日です[2]。
  • 実務レンジ複数RCTの統合排便回数の増加・便性改善が示され、軽度のガス・張りが出やすいため、少量開始で調整します[9]。
  • 飲み方のコツ2〜3 g/日から始め、週単位で増減します。
  • 詳説フラクトオリゴ糖は花粉症に効く? 効果の根拠・安全性・摂取量と選び方

根拠:[2][9]

キシロオリゴ糖

  • ねらいの例ビフィズス菌の増加1〜3 g/日)、便秘症状の改善3〜10 g/日×4週の試験あり)です。
  • 制度の目安量1〜3 g/日です[2]。
  • 実務レンジ1〜3 g/日で腸内細菌の指標が動きやすく、3〜10 g/日×4週排便回数やBSSの改善を報告した試験があります(個人差が大きいです)[10]。
  • 飲み方のコツ1 g/日から開始し、様子を見て2–3 gに調整します。
  • 詳説キシロオリゴ糖は便秘に効く? 効果・安全性・飲み方

根拠:[2][10]

ラクツロース(英: lactulose)

  • ねらいの例腸内通過の促進です(EUでは食品の単回10 g条件で表示可能です)。
  • 制度(日本):日本では医薬品としても用いられますが、食品用途健康強調表示EU規則432/2012の枠組みが参考になります(単回10 g)[3][4]。
  • 血糖への影響10–20 gの単回摂取で血糖・インスリンが上昇しない報告があり、2型糖尿病でも有意な上昇なしとする報告があります。糖尿病治療中の方は医師に相談してください[6]。
  • 飲み方のコツ少量から10 g単回までを上限に調整し、下痢や腹痛が出たら中止します。
  • 詳説ラクツロースと便秘|今日から使えるやさしいガイド

根拠:[3][4][6]

イソマルトオリゴ糖

  • ねらいの例腸内で発酵しますが、一部は消化されるため、血糖は“やや上がる可能性”があります(製品差があります)。
  • 制度の目安量10 g/日が規格基準型の目安として引用されます[2]。
  • 実務レンジ単回摂取の血糖反応デキストロースに近いとの報告もあり(試験負荷が高い条件あり)、少量開始製品表示の糖質内訳の確認が無難です[13][14]。
  • 飲み方のコツ少量から始めます。血糖管理中の方は医療者に相談してください
  • 詳説イソマルトオリゴ糖は危険? 血糖値・安全性・選び方を一次資料で解説

根拠:[2][13][14]

ラフィノース(大豆オリゴ糖)

  • ねらいの例ビフィズス菌の増加便通サポートです(個人差があります)。FODMAP配慮で少量開始が安全です。
  • 制度の目安量2〜6 g/日相当の枠が制度側資料に見られます(製品設計により差があります)[2]。
  • 実務レンジ1–2 g/日から開始し、記録を見て増減します。
  • 詳説大豆オリゴ糖(ラフィノース・スタキオース)の効果・安全性

よくある質問

すべての人に効きますか?

個人差が大きいので、2週間で手応えがない/副作用が強い場合は撤退して問題ありません。別の種類に切り替えて比較すると効率的です[5][7][9][10]。

併用してもいいですか?

基本は単独検証です。相性が良いもの同士を小さく併用します。強い張りや下痢が出たらすぐ中止してください[9][12]。

何を指標にすればよいですか?

排便回数とBSS(1〜7の便の硬さ指標)を毎日メモしてください。痛みや張り、日常生活のしやすさも一言記録してください[11]。

免責

  • 本記事は一般情報であり、診断・治療の代替ではありません
  • 持病・服薬・妊娠中の方、強い腹痛・血便がある方は、必ず医療機関を受診してください

参考文献

  1. Gibson GR, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2017;14(8):491–502. https://doi.org/10.1038/nrgastro.2017.75
  2. 消費者庁「特定保健用食品(規格基準型)別添・別表(オリゴ糖等)」PDF(2022-08-31)
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/notice/assets/food_labeling_cms201_220831_04.pdf
  3. Commission Regulation (EU) No 432/2012(EU保健強調表示:ラクツロース=単回10 g)
    https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2012:136:0001:0040:EN:PDF
  4. EFSA NDA Panel. EFSA Journal. 2010;8(10):1806. https://doi.org/10.2903/j.efsa.2010.1806
  5. Schoemaker MH, et al. Nutrients. 2022;14(2):309. https://doi.org/10.3390/nu14020309
  6. Pieber TR, et al. World J Diabetes. 2021;12(6):893–907. https://doi.org/10.4239/wjd.v12.i6.893
  7. Lee J-H, et al. Food & Function. 2024;15:6374–6382. https://doi.org/10.1039/D4FO00999A
  8. Teuri U, Korpela R. Ann Nutr Metab. 1998;42(6):319–327. https://doi.org/10.1159/000012751
  9. Zhen H, et al. Foods. 2024;13(24):3993. https://doi.org/10.3390/foods13243993
  10. Yi W, Wang Q, Xue Y, et al. Xylo-oligosaccharides improve functional constipation by targeted enrichment of Bifidobacterium. Food Sci Nutr. 2024;12(2):1119–1132. https://doi.org/10.1002/fsn3.3827
  11. Lewis SJ, Heaton KW. Scand J Gastroenterol. 1997;32(9):920–924. https://doi.org/10.3109/00365529709011203
  12. Gibson PR, Shepherd SJ. J Gastroenterol Hepatol. 2010;25(2):252–258. https://doi.org/10.1111/j.1440-1746.2010.06337.x
  13. Gourineni V, et al. Nutrients. 2018;10(3):301. https://doi.org/10.3390/nu10030301
  14. Grubic TJ, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2019;16:42. https://doi.org/10.1186/s12970-019-0301-z
末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。