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ビタミンB群とは? 疲労、肌荒れ、ダイエットとの関係を科学的根拠から徹底解説

「最近疲れやすい」「肌荒れや口内炎が気になる」「ダイエット中だからビタミンB群を摂るべき?」このような悩みを持つ方が、まず注目するのが「ビタミンB群」かもしれません。

ビタミンB群は、私たちが活動するためのエネルギーを作り出すプロセスに不可欠な栄養素です。しかし、その役割や「ダイエットとの関係」については、誤解されている側面もあります。

この記事は、2025年11月時点の最新情報(日本人の食事摂取基準2025年版など)に基づき、ビタミンB群の科学的な役割と、あなたの悩みとの関係性を分かりやすく解説します。[11][12]

この記事でわかること

  • ビタミンB群が「補酵素チーム」と呼ばれる理由
  • 「疲れやすい」と感じる時、ビタミンB群(特にB1)がどう関係するか
  • 「肌荒れ・口内炎」とビタミンB群(B2, B6, ナイアシン)のつながり
  • ビタミンB群と「ダイエット」に関する誤解と正しい知識
  • B群8種類(B1, B2, B6, B12など)の主な役割と不足サイン
  • 安全な摂取法と過剰摂取のリスク(耐容上限量)

ビタミンB群は「チーム」で働くエネルギー代謝のサポーター

ビタミンB群は、特定の物質を指すのではなく、8種類の水溶性ビタミン(B1, B2, B6, B12, ナイアシン, パントテン酸, 葉酸, ビオチン)の総称です。[1]

これらが「群(グループ)」と呼ばれる最大の理由は、体内で互いに関連し合い、チームとして働くためです。

中核的な役割は「補酵素」

ビタミンB群の最も重要な共通の役割は「補酵素」として働くことです。[2][3][4][5][7]

「酵素」は、体内で起こる化学反応(例:食べたものをエネルギーに変える)を進めるための”作業員”だとすると、「補酵素」は作業員が使う”道具”や”サポート役”に例えられます。

私たちが食事から摂った糖質や脂質、タンパク質をエネルギー(ATP)に変える複雑な代謝プロセスにおいて、ビタミンB群は「補酵素」として様々な場所で活躍し、エネルギー産生がスムーズに進むよう助けています。[2][3][4][7]

この章のポイント

  • ビタミンB群は、B1、B2、B6、B12など8種類の水溶性ビタミンの総称です。
  • 主な役割は「補酵素」として、エネルギー代謝などの化学反応を助けることです。
  • 8種類が互いに関連し合い「チーム」として働くため「B群」と呼ばれます。

【悩み別】ビタミンB群と「疲れ」「肌荒れ」の関係

ビタミンB群が不足すると、エネルギー産生や体の維持機能が滞り、様々な不調として現れる可能性があります。

1. 疲労感・疲れやすさ

特にビタミンB1(チアミン)は、食事から摂った糖質をエネルギーに変える際の重要なステップで補酵素として働きます。[2]

もしB1が不足すると、糖質をうまくエネルギーに変換できず、エネルギー産生が低下します。これが「疲れやすい」「だるい」といった易疲労感の一因となる可能性が指摘されています。[2]重度の不足は、神経症状(ウェルニッケ脳症など)を引き起こすことも知られています。[2][14]

2. 肌荒れ・口内炎

皮膚や粘膜は、体の中でも特に新陳代謝(ターンオーバー)が活発な場所です。

  • ビタミンB2(リボフラビン)
  • ビタミンB6(ピリドキシン)
  • ナイアシン(ビタミンB3)

これらは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きがあります。[3][4][5]

そのため、これらのビタミンが不足すると、新しい細胞への生まれ変わりがスムーズにいかなくなり、口角炎、口内炎、脂漏性皮膚炎(鼻の周りなどがカサカサ・ベタベタする)といった症状が現れやすくなります。[3][5]

歴史的に、ナイアシンの極端な欠乏は「ペラグラ」と呼ばれ、日光が当たる部分の皮膚炎などを特徴とします。[4]

この章のポイント

  • ビタミンB1の不足は、糖質からのエネルギー産生を滞らせ、疲労感につながる可能性があります。
  • ビタミンB2、B6、ナイアシンは皮膚や粘膜の健康維持を助けるため、不足すると口内炎や肌荒れが起こりやすくなることが報告されています。

ビタミンB群と「ダイエット」の正しい関係【誤解注意】

「ビタミンB群は脂肪を燃焼させるから、飲むだけで痩せる」— これはよくある誤解です。

B群に「脂肪を直接燃やす」作用はない

2025年11月現在、健康な人がビタミンB群のサプリメントを摂取するだけで体重が減少することを示した、高品質で一貫した科学的根拠(ランダム化比較試験やメタ解析)は確認されていません。

ビタミンB群は、あくまで「補酵素」です。

B群の役割は「エネルギー産生を助ける」こと

B群(特にB1, B2, ナイアシン, パントテン酸など)の役割は、摂取した糖質や脂質をエネルギーとして利用するプロセスを「助ける」ことです。これは、日本の消費者庁による栄養機能表示でも認められています。[10]

車に例えるなら、B群は「ガソリン(食事)」を「エンジンの動力(エネルギー)」に変えるための”潤滑油”のような存在です。

潤滑油(B群)が不足すれば、エンジン(代謝)の効率は落ちるかもしれませんが、潤滑油をたくさん入れたからといって、ガソリン(体脂肪)が勝手に減っていくわけではありません。[2][3][4]

ダイエットの基本は、あくまで摂取エネルギー(食事)と消費エネルギー(運動)のバランスです。ビタミンB群は、そのバランスの中で、食事から摂った栄養を効率よくエネルギーに変えるために必要なサポーター役と理解することが重要です。

この章のポイント

  • ビタミンB群を「飲むだけで痩せる」という科学的根拠は確立されていません。
  • B群の役割は、脂肪を直接燃焼させることではなく、糖質や脂質から「エネルギー産生を助ける」ことです。[10]
  • ダイエットの基本は食事と運動であり、B群はその効率を支えるサポート役です。

ビタミンB群8種類のはたらき一覧

ビタミンB群には8種類の仲間がいます。それぞれが異なる役割を持ちながら、チームとして働いています。

種類 (名称)主な役割(キャッチコピー)不足時のサイン(例)
B1 (チアミン)糖質をエネルギーへ [2]易疲労感、重度で神経症状 [2][14]
B2 (リボフラビン)脂質代謝の相棒 [3]口角炎、脂漏性皮膚炎 [3]
B6 (ピリドキシン)タンパク質代謝のサポーター [5]皮膚炎、口内炎、貧血など [5]
B12 (コバラミン)赤血球と神経の守護役 [6][10]巨赤芽球性貧血、末梢神経症状 [6]
ナイアシン (B3)エネルギー産生の万能選手 [4]ペラグラ(皮膚炎、下痢など) [4]
パントテン酸 (B5)CoAとして代謝全体をサポート [7](通常の食事では稀)皮膚炎など [7]
葉酸 (B9)DNA合成・細胞分裂の立役者 [9]巨赤芽球性貧血、胎児の神経管閉鎖障害リスク [9][15]
ビオチン (B7)糖や脂肪酸の合成を補助 [8](通常の食事では稀)皮膚炎、脱毛など [8]

※各ビタミンの詳細な役割や摂取目安量については、上記のリンク先記事で詳しく解説しています。

この章のポイント

  • ビタミンB群は8種類あり、それぞれ得意分野(糖質代謝、脂質代謝、タンパク質代謝など)があります。
  • 特に葉酸は、胎児の正常な発育に不可欠な栄養素として知られています。[9][15]

ビタミンB群の「上手な摂り方」と「安全性」

ビタミンB群は体に必要な栄養素ですが、どのように摂取するのが良いのでしょうか。

1. 基本は多様な「食事」から

ビタミンB群は、特定の食品に偏在するのではなく、様々な食品に含まれています。B群は「チーム」で働くため、単体の食品に偏るのではなく、多様な食品をバランスよく食べることが最も重要です。[13]

以下はB群をまとめて摂取しやすい代表的な食品群ですが、各ビタミンで特に豊富な食品は異なります。

各ビタミンを効率よく摂取できる食品の詳細は、それぞれのリンク先記事をご覧ください。

2. サプリメント利用時の注意点

ビタミンB群は水溶性のため、過剰に摂取しても多くは尿中に排泄され、体内に蓄積しにくい性質があります。[1]

しかし、「水溶性だからいくら摂っても安全」というわけではありません。

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、通常の食事以外からの摂取(サプリメントなど)に対し、一部のB群に耐容上限量(UL)が設定されています。[11][12]

  • ビタミンB6: 長期間の過剰摂取により、感覚性の末梢神経障害(手足のしびれなど)が報告されています。[5][11]
  • ナイアシン: 過剰摂取により、一時的な皮膚潮紅や、肝機能への影響が報告されています。[4][11]
  • 葉酸: 過剰摂取により、B12欠乏による神経症状の発見を遅らせる(マスキングする)可能性などが指摘されています。[9][11]

サプリメントを利用する場合は、必ず製品に記載されている目安量を守り、自己判断で過剰に摂取しないよう注意が必要です。

この章のポイント

  • ビタミンB群は、レバー、豚肉、魚、豆類など多様な食品からバランスよく摂取することが基本です。
  • 水溶性ですが、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸には耐容上限量が設定されています。
  • サプリメントでの過剰摂取は健康被害のリスクがあるため、目安量を守ることが重要です。

まとめ

ビタミンB群は、私たちが食べたものをエネルギーに変えるために不可欠な「補酵素チーム」です。

疲労感や肌荒れは、B群の不足が一因となる可能性がありますが、「飲むだけで痩せる」といった効果は科学的に確認されていません。

まずは、B群を豊富に含む多様な食品をバランスよく食べることを心がけましょう。サプリメントを利用する際は、耐容上限量が設定されている成分(B6、ナイアシン、葉酸)もあるため、過剰摂取に注意し、安全な利用を心がけてください。


【免責事項】この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。持病のある方、妊娠中の方、その他健康に不安のある方は、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。


参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット. ビタミン(総論). 2019年6月12日更新. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-027.html
  2. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Thiamin: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: October 5, 2022. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Thiamin-HealthProfessional/
  3. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Riboflavin: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: August 24, 2023. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Riboflavin-HealthProfessional/
  4. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Niacin: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: October 6, 2022. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Niacin-HealthProfessional/
  5. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Vitamin B6: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: December 15, 2022. https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminB6-HealthProfessional/
  6. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Vitamin B12: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: April 4, 2023. https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminB12-HealthProfessional/
  7. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Pantothenic Acid: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: December 7, 2021. https://ods.od.nih.gov/factsheets/PantothenicAcid-HealthProfessional/
  8. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Biotin: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: December 9, 2021. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Biotin-HealthProfessional/
  9. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Folate: Fact Sheet for Health Professionals. Updated: November 30, 2022. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Folate-HealthProfessional/
  10. 消費者庁. 栄養機能食品における栄養成分の機能の文言について. 2025年10月7日. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms206_20251007_14.pdf
  11. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書(全文). 公表: 2024年10月11日/最終更新: 2025年3月25日. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
  12. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント(スライド集). 2025年2月5日. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf
  13. 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)データベース. https://fooddb.mext.go.jp/
  14. 厚生労働省 e-ヘルスネット. ウェルニッケ・コルサコフ症候群. 2021年6月10日更新. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/alcohol/ya-052.html
  15. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果. 2021年6月1日更新. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-002.html
末岡 啓吾

末岡 啓吾

パーソナルトレーニングジム「PriGym」代表トレーナー。
博士(理学)・NSCA認定トレーナー・パワーリフティング元日本記録保持者。
科学と実践の両軸で、一人ひとりの成長を支えます。